【読書感想】『教育虐待』~現代日本の大いなる病の諸相を鋭く描写した好著~

教育虐待──子供を壊す「教育熱心」な親たち | 種類,単行本 | ハヤカワ・オンライン (hayakawa-online.co.jp)


 いい大学に入って、いい会社に入って、そして高い給料を貰って、幸せな人生を送って欲しい。自分のこどもに対して、そう願う親は多いだろう。

 では“いい大学”に入るためにはどうすれば良いだろうか?そのためには、いい高校に入らないといけない。だがそのためには、その前にいい中学校に入って・・・・・・。

 受験勉強が他のすべてより優先される、そんな価値観に染まってしまった家庭の悲劇的実体が、本書では容赦なく描かれる。

 こどもの幸せな人生を願って、受験勉強を頑張らせてきたはずなのに、それがかえってこどもを追い詰めて、人生をめちゃくちゃにしてしまう。なんとも皮肉な話だ。

 自分自身がそうでなくても、意外と身の回りに存在するかもしれない“教育虐待”。そんな社会の病巣に意識を向けさせてくれる、読むべき一冊だ。

 余談だが、もし本書に続編があるとしたら、教育現場における「教育虐待」にも焦点を当てて、もっと掘り下げて欲しいと個人的に思う。

 というのも筆者自身、地方の進学校の出身で、今にして振り返れば、大学進学に関する数々の異常事が、学校内に蔓延していたとひしひしと感じるからだ。

 筆者の学校が特におかしかったという可能性もあるが、偏差値至上主義で、学校側が生徒の意思に反した進路を強制する。そのようないびつな状況も立派な「教育虐待」と呼ぶべきだろうし、今後取り上げられるべきテーマではないだろうか。

 ちなみに、地方進学校の進路指導のいびつさを描いたコンテンツとして、下記のような動画およびチャンネルがあるので、参考までに紹介しておきたい。

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国立2次試験の出願でエグいこと言う長崎の自称進学校#shorts - YouTube

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