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ベルギー発、極上のエンタメ!

「太陽が昇ると死ぬ」

これが、ドラマのベースになっている。登場人物はひたすらに太陽から逃れるため、決死の逃避行を繰り広げ、国、人種、宗教、職業、性別、状況、などのあらゆる観念の極限を問われる。

ネタバレをするつもりはない。

このドラマの最大の肝は、「全員が本気の命懸け」というところにある。

切羽詰まった人間の言動や行動が意外な展開を作る。普段なら問題も起こらないような些細な出来事が事件に発展し誰かを死に至らしめる。

常々、ドラマによっては、時にはマヌケの存在が主人公よりも重要である!と激しく提唱しているが、このドラマにも見事なまでにマヌケたちが秀逸なヘマを犯してくれている。
やはり、良質な物語の裏にはいぶし銀のマヌケが存在するという定義に、一片の揺らぎもないのである。

しかも、この物語のマヌケは、グレードがひとつ上がる。これにはやはり、「ガチ」(命懸け)というハイテンション確変MAXが大きく関係する。

誰にだって冷静さを欠いた極限状態の中では、あらゆる判断が鈍り、行動は制限され、瞬時に全員の命の安全など考えてはいられない。
やはり我が身が大事だし、誰かを労るなんてできないのかもしれない。
恐らくは、平時であれば正しい選択や判断ができ人物も少なからずいたはずだ。
だが、普段は間違いなく常識者であった人物も、状況が一変するといとも簡単にマヌケ領域に堕ちてしまうのである。

ここが見所だ!!!

誰かがだれかの命を救ったかと思った次の瞬間に、誰かがだれかを死に追いやっている。
それを責めた人間ですら、次の瞬間に、責められる対象になり得る状況だ。
考えただけでもワクワクが止まらない。

これは間違いなく原作、脚本の勝利だ!

もし冷静だったら起こらなかった死。
極限状態だからこそ救えた命。
冷静だからこそ死なせてしまった命。
極限状態だからしかたなく諦めた死。
陰謀、策略、浅知恵、エゴ、が交錯する。
たった一つの判断ミスが命を落とす。
全員がシロウトの爆弾処理班のような状況で、信じるのは己の判断だけだ。
正義感や綺麗ごとなんぞはいとも簡単にゴミになる。誰かを諦める罪悪感で成長を遂げていく。人は、本気の選択の連続で、飛躍的に成長するのかもしれない。

この物語の命のやりとりには、ポーカーのような駆け引きは一切通じない。
まさに、全身全霊なる魂の肌感覚が問われている。観ている我々は、いつしか登場人物の誰かに感情移入させているだろう。

わたしも途中からモロッコ人の飲食店経営者にすっかり骨抜きにされ、しまいにゃ声をだしてエールを送っていたほどだ。

だれがミスを犯してしまうのか?
私ならどう選択しただろうか?
私がこの現場に居合わせたなら、いったい誰の役どころだっただろうか?
みんなと、協調できていただろうか?
私は生き残れるのだろうか?

本気の人間はいい。

シーズン1は全6話で、無論まだ完結はしない。
シーズン2が楽しみでならない。
このドラマを追うのは今しかない。

うかうかしていると、東の空から太陽が昇ってしまうのだ。









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