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さとる
2023年7月16日 13:55
←1話目へ戻る早川勤が亡くなった。65歳。まだ寿命というには早過ぎる年齢だった。彼の友人である磯山進は葬儀に出席した後、ひどく荒れた様子だった。原因は彼自身の内側にあった。友人の死に際して、「ざあまぁみろ」と思ってしまったからだった。理由は、恐らくはっきりしている。磯山進は高校時代、沢北秋が好きだった。本当に初々しい気持ちで、彼女のことを愛していた。しかし、友人である早川勤に彼
2023年7月15日 13:47
←1話目へ戻る早川勤は無事病院を退院した後、一層庭作りに精を出した。構想を練り、基本計画を立て、プロの手を借りて設計を行った。中でも、簡易型の滝を作ることにはこだわった。きちんと水道を引き、水が流れていくように排水工事も行った。どんどんと華やかになっていく庭を見て、早川秋は感嘆の声を漏らした。「すごいわ。本当にすごい。庭の緑がこんなに映え映えしているなんて」庭が見える和室に
2023年7月14日 18:00
←1話目へ戻るハヤカワアキラは仕事終わりの夜の時間帯を、夜景を見下ろせる自分の部屋で過ごしていた。ふと、スマホのけたたましい呼び出し音が鳴った。画面を見ると「早川秋」と書かれている。早川明は眉をひそめ、一体何の用だと訝る。「もしもし」「明?お父さんが大変なの。今日、庭で突然倒れて。近々様子を見に帰って来られない?」早川明は早川勤、早川秋の息子だった。とはいえ、22歳で大
2023年7月13日 14:12
←1話目へ戻る女子高生のマツオカチスズは、近所の市立図書館で椅子に座りながら、今日見つけたばかりの純文学を読んでいた。自分の場所から見える位置に、熱心に本を探しているおじさんがいる。松岡千鈴はそう思い、ふと、そのおじさんの手元に目をやった。「日本の庭園について」そんなタイトルの本ばかりが、5冊ほど重ねられていた。造園に興味があるのかな。そう思い、更に興味をそそられ、おじさんをなんと
2023年7月12日 18:14
←1話目に戻る早川勤は、中学時代の同級生であるイソヤマススムの家を訪れた。「おう、勤」「やあ、久しぶりだね」磯山進の家は、早川家の近所にある。しかし、高くて見晴らしが良いので、景観は大分違う。「どうしたんだ、またこんなところまで」「いやいや、そう遠くないだろ。やぁね、今度庭づくりを始めようと思ってさ」「あぁ、園芸かい。まぁ中に入りなよ」磯山進は、早川勤を中に招き入れ
2023年7月11日 13:20
時は今から48年前。岡山・博多間に山陽新幹線が開通し、大阪にはローソンの1号店が設立された。そんな、1975年の日本。2人の高校生が、1つの書道作品を見ながら話をしている。「君の作品、素晴らしいな。線が柔らかくて…、どこか、明るい感じがする」「本当?ありがとう。私、結構頑張って書いたのよ」白のワイシャツに黒いズボンを履いたハヤカワツトムは、作品の目録を手に持ちながら、作品を鋭い