万願寺唐辛子とじゃこの炒め煮と、白いロボット
「ねぇねぇ、唐辛子って、英語でチリペッパー(Cilli pepper)っていうらしいよ」
いつもの居酒屋で、「万願寺唐辛子とじゃこの炒め煮」をつまみに日本酒を飲みながら、私は隣席の常連さんに言った。
万願寺唐辛子は、京野菜のひとつで、京都・舞鶴市の万願寺地区で栽培されている。在来種の「伏見とうがらし」とピーマンの一種をかけ合わせたものだそうで、唐辛子、という名前だが、普通の唐辛子よりも肉厚で、辛いものはほとんどない。
「へぇ~。チリペッパーっていうと、すごく辛そうだね」
「そうなんだよねぇ。辛くないけど、万願寺唐辛子は、Mnganji Cilli pepper ってことになるのかな?」
マンガンジ チリ ペッパーなんて、なんだか強そうな名前だなと、私は発音しながら思った。
「じゃあさ、じゃこは?」
「じゃこって、ちりめんじゃこでしょ?それって、そもそもなんの魚?」
「ちりめんじゃこは、イワシの稚魚を乾燥させたものだよ」
「ってことはさ…。イワシは英語でサーディン(sardine)なのよね。オイル・サーディンの、サーディン」
「ああ、なるほどね。じゃ、ちりめんじゃこは?」
「イワシの稚魚を乾燥させたものだから、ドライド ヤング サーディンズ(dried young sardines)じゃない?」
「日本語ならひとつの言葉で済むのに、英語になると単語が3つになるのか~。なんだか、大ごとだなぁ」
「あ、そうそう。炒め煮っていう単語は知らないんだけど、野菜炒めのことはステアフライド ベジタブルズっていうんだって」
つまり、「万願寺唐辛子とじゃこの炒め煮」は
ステアフライド(stir-fryed)マンガンジ チリ ペッパー アンド ドライド ヤング サーディンズ ということになる。
「しかも、醤油で味付けしてます、シーズンド ウィズ ソイソース って説明しなきゃね」
常連さんと私は「確かに!」とお互いに顔を見合わせた。
「でもさ、万願寺唐辛子の味は、チリペッパーっていうよりもピーマンみたいだよね?」
「うん。じゃ、ピーマンは英語でなんていうの?」
「ええっと…。ちょっと待って」
私は早速、手元のスマホでググった。このところ、和食のおつまみを食べる度に、食材の名前をググっている。
「ピーマンはペッパー(Pepper)だって」
「ペッパー?!それって、あの携帯会社のロボットの名前じゃないの?」
「ってことは、あのロボットは、ピーマンくん!!」
「なんか、かわいそう!ペッパーくん!」
「ピーマンって、アタマ悪そうじゃん!」
常連さんと私は、あのロボットの顔と声を思い浮かべて、ゲラゲラ笑った。とにかくこれで、「ピーマンは、英語でペッパー」ということはゼッタイに忘れないだろう。
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