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読み終えました

先日noteでサイン本をいただいたことを報告しました。

そしてやっとその作品を読み終えました。

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こちらが借りてきた単行本の表紙です。2008年に発表後単行本化、2012年に文庫化されています。

データベースにもあるように犯罪者と死刑制度に真正面から向き合い、生きる者と死にゆく者をつなぐ最後の希望を描いています。長編小説とAmazonなどの説明には書かれていますが、分量から中編小説だと思いました。

施設で育った経験を持つ刑務官の主人公は「死」を目の前にする2人の男と関わりを持ちます。一人は高校時代からの友人で真下宗久。もう一人は20歳の死刑囚山井隆二。真下は両親の虐待から両親を殺したいという思いを持ち続けながらも自殺。山井は性欲を抑えきれず、夫婦2人を殺し、刑の執行を待っています。

主人公の直属の上司である主任の言葉が刑務官の苦悩を浮き彫りにしています。

「死刑を望む声は多いし、それもわかるし、だからいい。でも俺は死刑を執行するなら、確実さと、公正さが必要だと思うんだよ。俺達刑務官があんなに必死でやる死刑という人殺しの理由がこんなに不確かなのはたまらない。一番いけないのは曖昧さだよ。地裁、高裁、最高裁と死刑判決がころころ変わると本当にたまらない」p43

また、施設時代の主人公の大きな影響を与えた「あの人」の言葉も印象的で、今本を読む私も考えさせられています。

「自殺と犯罪は、世界に負けることだから」p111
「自分の好みや狭い了見で作品を簡単に判断するな」とあの人は僕によく言った。「自分の判断でものがたりをくくるのではなく、自分の了見を物語を使って広げる努力をした方がいい。そうでないとお前の枠が広がらない」p117

クライマックスで勾留者である山井が、主人公宛ての手紙に、本作品の著者がこめた想いが書かれています。そう、私には読み取れました。

中村さんの作品は取り上げられる問題が難しく、私が本当に理解できているのかと、不安になることも多いです。けれど、こういう難しい問題こそ本当はフイクションの世界だけで終わることなく、論争を重ねていくべき問題なのだと私は思います。

今回貴重な作品をいただいた、中村文則さん、朝日新聞出版さまに重ねてお礼申し上げます。

なぜ控訴しない?―施設で育った過去を持つ「僕」は、刑務官として、夫婦を刺殺した二十歳の未決死刑囚・山井を担当していた。一週間後に迫った控訴期限を前にしても、山井はまだ語られていない何かを隠している―。芥川賞作家が、重大犯罪と死刑制度に真摯に向き合い、生きる者と死にゆく者をつなぐ最後の希望を描き出す。(「BOOK」データベースより)

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