music 『Playground Love』& movie 『The Virgin Suicides』
『Playground Love』 AIR
ソフィア・コッポラ監督映画『The Virgin Suicides』のテーマソング。この映画に似合う曲はこれ以上ない。
分子の振動すらも感じずに溶けることもできない日曜日、蛇苺の季節。5人姉妹は自殺する。
10代の女の子は目の前に移ろいゆく現実をどこかよくわからない遠い場所から眺め、ふとした瞬間にいなくなってしまう。その危うさが大人びていて艶かしい。溢れ出る生命と相反する死の甘ったるい空気を肌に纏っていて、その憂いを帯びた目は純粋な少年を惹きこんでしまう。
この映画に出てくる女の子たちは、私と違って恋愛にすら見切りをつけている。とはいえ、「自立している」なんていうよりは、立たずに寝転がっている感じで、だから「立つ」為のものなんてーそれは男の子も含めてー、必要ないと言わんばかりだ。ただただ暇つぶしに手の上で突っついて遊んでいるだけ。彼女たちに確固たるものは何もなく、雰囲気だけを残り香にいつの間にかこの世界から消えてしまう。
どうして気怠さはこんなにも妖艶なんだろう。どうして頽廃はこんなにも甘いのだろう。
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全身全霊を君に委ねて、音もしないどこか遠い森の奥で倒れる。落葉にまみれて土に還りたい。ぼんやりとした目で君と溶け合って腐っていきたい。微生物に侵されながら「ロマンチックだね」って君の耳に囁いて、口元に笑みを浮かべたい。
と高校生の私は思っていた。若さが滲み出るうちに腐葉土になってしまえば、分子レベルで君と交ざり合える。
『Playground Love』は、そんな気持ちのまま、君の視界の中で永遠にあどけなく不敵な女の子でいられる曲だ。
ばばみお
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