『詩人の朝』
確かに確かだ
ボクの本棚には真っ白い食パンが並んでいる
切り揃えられているそれを一冊抜き取ってみたまえ
どうにも香ばしい薫りが鼻腔をくすぐるだろう
引き出しに敷き詰めた珈琲豆から
弾きたて珈琲を優雅に奏で、芳醇に味わう朝
詩人の暮らしというのはどこかしら
かかとが浮いてるものさ
猫と自転車はセットだが
今は二人とも家出している
ニヤニヤしてしまうのを我慢しながら
チーズとバター味の喧嘩をして
ボクに『“猫と自転車に家出された空間“』を
プレゼントしてくれた
彼らの粋な計らい
甘んじて味わう丸太小屋に詩人が一匹のほほんと
今朝は空に沈んだ街から銀色の雨漏り
おかげで部屋の中はすっかり透明に満たされてる
普段深海でしか遊ばないはずの魚たちまで
深呼吸しにやってきて、優雅に回遊し
プクプクと儚い泡沫を描いては
夢の底へと舞い戻っていく
やれやれ
ペキペキッと音がするほど完璧な朝じゃないか
「これで詩さえ書けたらなあ」
おもわず漏れた溜め息が綿雨みたいな雲になり
羽根が落ちるようにゆっくりとノートに染みて
小さな空を宿した言の葉だけが浮かんでくる
それを今、君が眺めているのだろう
水もしたたる真っ白い豆腐がひどく焦った様子で煙草屋の角を曲がっていくのが見えた。醤油か猫にでも追いかけられているのだろう。今日はいい日になりそうだ。 ありがとうございます。貴方のサポートでなけなしの脳が新たな世界を紡いでくれることでしょう。恩に着ます。より刺激的な日々を貴方に。