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芸術は、いったい何の役に立つのさ?②

 十和田市はとても素敵なところだったが、八戸市民にとって、通勤場所として、ちと遠い。片道大体1時間。24時間から、毎日、自動的に2時間が引かれていくのは、精神的にも肉体的にも、キツイ。おかげで、絵画教室や、ストレッチ教室など、通うことを全く諦めた。
 ひたすら、出勤と退下にクルマを飛ばす、1日2時間。
 信号とトロイ車がいなかったら、片道30分で到着する自信はある。
 そうして飛ばし屋のあやのんが誕生した。

 そんなわけで、3年は我慢だろうなと思って働いていた。仕事は全く、修業なのです。遠い以外は全くいい職場なのだ。
 3年経ち、自宅のある八戸市に転勤が決まった時、とても嬉しかった。
 そして、離任式では、あの時、回収した質問への答えを言わなければなるまいと思っていた。

 そして、私のした話は、その騒然とした美術の時間の話。
 その後、その答えを探したこと。
 そして、自分が考えたこと。

 芸術は目に見えないことを目に見えるようにできる教科ではないかということ。絵には自分の気持ちが表れるし、想像や考えたことを絵にすることもできる。人間のココロという、目に見えないことを、可視化できる教科であるということを話した( ^ω^)・・・気がする笑。(5年ぐらい前の記憶で、昔のことはよく覚えているのに、最近の記憶は怪しいです笑)

 突然、答えをださなくてはいけなくて、そんな話をした気がするが、聞いている生徒にどれだけ伝わったかはわからない。
 やはりまだ、そんなやんちゃな少年を説き伏せるだけの強さはなかったかもしれない。
 自分たちの授業の話をされた機械エネルギー科の少年たちが、なんだかニコニコして、先生は俺らとの思い出を語ってる!みたいな喜んでいる空気だけが伝わってきた。

 そして、2023年の、自分の退任式がやってきたのだが、やはり、この話をしなければならないだろうと思った。

 それで、自分が話したことは、やはり、その授業中の騒然とした時間のこと。自分がその答えを探し求めて、美術の哲学を考え始めたこと。
 鴻池さんの、「なんの役にも立ちません」というきっぱりした答えと、その理由。多少、難しい話だけど、この進学校の生徒は、ふだん現代文で評論とかいろいろな文章を読んでいることに期待を込めて、話してみた。
 
 目に見えないことを可視化することが芸術。

 と話すために、一番最近の体験を話した。
 先日の卒業式のために、美術部員と有志で黒板アートを描いていたら、それを見た教員が、私に話しかけてくれた。

保護者控え室に描かれた2023年の黒板アートの一つは、ワンピースの名シーンで。
普段は恥ずかしくて言えないようなセリフを漫画の力を借りて親に言うのです。


「あやのん先生、今まで、卒業式って言う気が全くしなかったのですが、黒板アートを観たら、ああ、卒業式なんだ!という気になりました」

何でも一生懸命に取り組む彼女の大学生活の始まり、想像できる。楽しそうだ💛

 卒業式予行で、今まで、コロナ禍で、
「校歌静聴」という黙ってCD聴いている時間だったのが、今年は、卒業生が歌うことになった。マスクをするかしないかも卒業生の自由。
 3年生の歌う校歌や式歌を聴いた時に、ああ、そう、これこれ!音楽がなかったら、卒業式、始まらない!と、強く思った。ここ数年の音楽の教師の無念さといったら、どんなものだったのだろうか。

 思わず、音楽の先生に、
「先生、音楽と、美術、芸術っていう教科が、学校に無かったら、卒業式は始まらないっすね!笑」と話しかけに言った。

 ほんと、音楽と美術が無かったら、卒業式は始まらなかったのではないかと、痛感したのである。

答辞で忙しい生徒会長がデザイン!なんと保護者への子供達からのメッセージ入り!
教師じゃ思いつかない素敵なアイデアです。

 卒業式をお祝いするっていう気持ちを、こんなに目に見える形で表現できる、これが芸術の役割。

卒業生たちの旅立ちは、寂しくもあるけど、明るい未来に、踏み出す姿は嬉しい!

 目に見えないもの(ココロ)を可視化できるのが芸術である。

 そんな話をした。今回も、どれだけの生徒に伝わったかは全くわからないのだが、いつもの美術室お掃除メンバーズのクラスの男の子が、2人で図書室を訪れて、

「先生、離任式、寝てようと思ったけど、先生の話は、とてもよかった。
 先生の話、聞けて良かったです!」

とわざわざ言ってくれた。しかも音楽選択者の2人であった笑。
(美術選択者には私のポリシーが伝わっていたと信じたい)

 よっしゃー!それだけで、十分だ。

 この問いは、実はここだけで終わらなくて、美術教師の有志が集まって、私の自由人を祝ってくれたのだけれど、主賓であることを嵩に着て、みなさんだったら、このやんちゃな少年になんというかを全員に言ってもらった。

 酒の席じゃなかったらメモ魔の私はいちいちメモを取りたいぐらい、皆が真剣に答えてくれた。そして、自分の考えを、キチンと述べる自分より若い美術教師の顔を見て、みんな素敵だなあと思ったのである。
 残念ながら皆の答えは記憶にないけれど(←ないんかい!1人ツッコミ)、それぞれがいい答えで、その人がどんな姿勢で子供の前に立っているのか、普段の人となりが見えるようで、皆の美術に対する哲学を聴けた。

 この問いを私はきっとまた時々思い出すだろう。

 そしてもっと、深い答えを言う自分になっていることをこれから、さらに、目指していこうと思う。

「おめ、なにいっちゅうのよ。
 芸術とか何の役にも立づわげ、ねべな
 おもしぇはんでやってるだげだね!」

こてこての津軽弁で答えるのが今日の答え。


なんと!黒板アートを漫画で表現する?しかもテキストは秋田ひろむさんの詩。