「派遣社員になるのが恥ずかしい」と彼女は言った
これは以前、私が転職相談の面談をさせていただいた女性の言葉です。
私が面談の中で、「時短勤務での転職はそれなりにハードルが高いので、正社員だけでなく派遣社員なども、働き方を優先する一時期だけ選択肢として考えるのもありですよ」とお伝えした時に返ってきた言葉です。
本当に、困惑している、という表情をされていました。
私は時々、こうして仕事と家庭の両立に苦しむワーママさんの相談を受けます。
もしくは、出産前や育休中でも、これまでの働き方では両立は無理なので転職したい、という方もいらっしゃいます。
そういうときに、いつも思うのです。
なぜ、働き方を変える必要があるのはいつも女性側なのか?
「夫が全国転勤なので、全国に支店がある会社がいいです」
「保育園のお迎えに間に合うように、~時までしか働けません」
「いつまた夫の転勤があるかわからないので、フルリモートの仕事を探しています」
どうして、配慮し、変えなければならないのは、いつも女性側なのか?
もっと「全身全霊がスタンダード」ではない社会になればいい
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』を読んで以来、あちこちで著者の三宅香帆さんの対談を読んだり聴いたりしています。
最近、荒木博行さんのVoicy「荒木博行のbook cafe」で、荒木さんと三宅さんがこの本を題材に対談されていました。
荒木さんが対談の中で、
「半身のタイミングってあるんじゃないかと思う。
全身全霊で働く時期があるからこそ半身の意味が見えるのでは?」
と話を振っていて、それに対して三宅さんは、こう答えています。
「人生の一時期、全身全霊で働く時期があっていいと思う。
そうじゃないと仕事が身につかない職業もあると思うし。若いうちは特に。
一方で、それが社会のスタンダードになっていいのか?というのがある。
地球の全人類が半身でやるべきということではなくて、
どっちかっていうと社会が目指す方向性、イケてるっていう方向性の話。
今だと全身全霊が一番イケてて目指すべきビジネスマン像、ですよね。
じゃあ全身全霊で働けない人は正社員やめなきゃいけないんだっけ?とか
それが当たり前だと、子育てしてたらできないじゃん、みたいな。
本が読めない社会がスタンダードでいいのかなと。」
荒木さんも、
「なるほど、どこに理想をおくか、スタンダードとするか?という話なのね」
と納得されていましたが、私も三宅さんの主張にはとても共感しました。
まさに、全身全霊で働くことが是とされている社会だからこそ、冒頭で紹介したようなワーママさんの困惑の言葉が出てくるのかなと思います。
彼女は、自分で望んでそうしてきたと思っているかもしれないけれど、
社会がそうさせている、それを選ばせている、とも言えるのです。
もうひとつ、Voicyネタを。こちらはネガティブな意味で衝撃を受けました。
安達裕哉さんの「聴くBooks&Apps」は、いつも切れ味良くビジネスのヒントになる話が多いので、好きでよく聞いているのですが、『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』を題材にしたこの記事だけは、正直言ってあまり共感できませんでした。
放送の元ネタ記事も貼っておきます。
全体的に、「いや、三宅さんが伝えたいのはそこじゃないんだ」と、論点がズレていると感じてしまったのですが、一番気になったのは
「前職(コンサルティング会社)では、上司も同僚も経営者も皆忙しくても本を読んでいた」
という主張です。
もちろん、優秀で意欲の高い人たちが多く、忙しくても本を読んでいたことでしょう。
でもそれができたのは、代わりに家庭を円滑に保ち、生活を回してくれる人がいたからじゃないんですか?
と言いたい。知らんけど。
全身全霊で働く人がいるということは、そのそばでケアをしてくれる人、もしくは他の面倒な物事(子育て、近所づきあいなど)に対処してくれて、あなたが仕事に全集中できるようにしてくれる人がいたんじゃないですか?
そして、その人達の中には、本当は全身で仕事して1000万稼ぐはずだった人がいるんじゃないんですか?
それこそが、三宅さんが主張している「全身全霊がスタンダード」な社会の問題点で、だからこそ「半身で働こう」という主張なのだと思います。
↓本を読んだ感想は以前こちらの記事にまとめています。
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