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03:境界を知る/他者理解

ADのいないこの世界で若手クリエイターに伝えたい10の事 』の中で前半、人が判断の前提とする認知をテーマにした3つ目のnoteです。

前回、“当たり前”を疑うと言う話をしましたが、“当たり前”がある事は悪いことではありません。そう思うと言う精神構造の中にメンタルモデルがあり、そのメンタルモデルは多くの場合、有効活用する事が出来るからです。

ただし、活用するにはそれがどのように作られ、どんな範囲に及んでいるのかを知らなければなりません。そのために、自分の(当たり前として意識すらしない部分の)思い込みを排除する努力から始め、可能な限りフラットに他者との関係で共有されていると思える範囲を現実的に探し出すのです。

今回は、自分の“当たり前”基準に依存する事なく、使う側の気持ちを汲み取れるように自分の経験と他者の経験との共通項とその境目を探る方法を考えてみようと思います。

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境界は何処にあるか?

例えば、今、あなたの前に新緑が広がっているとして、それを「緑が綺麗だね」と言う人は100人中何人いるでしょう?5人くらいかな??

今回は視力がある事を前提に書いてしまいますが、その視力の度合いによってはそもそもほとんど見えないという可能性もあります。さらに、色に関しては色覚特性により緑を感じ難い方がいらっしゃいます。(性別、人種によって差があるようです)。

因みに、その緑は日本の青信号と比べてどのくらい緑だと思いますか?
そう。年齢(育った時代の文化的背景)で割合は変わりますが、日本人は青を緑、緑を青と言う時があります。これは、日本という文化が藍色を多く用いる文化にあったため、他の文化圏の人よりも青い色に関する言葉も多く、見わける力も高いのだと何かで読みました(笑)。

話がズレますが、女性はそもそも男性より色を見分ける力が強い様ですね。根源が生物学的なものか心理学的なものか文化かははっきりとはしないかもしれませんが、それらも視神経に作用するという可能性は、人間の“共通認識”という幻想の危うさをここでも証明しています。
あの緑の〇〇にと言う会話は全く通じない、またはミスリードを生む可能性があるのです。

けれどそもそも“緑が綺麗”と言う言葉は日本語なので、翻訳出来なければ“言う”事も出来ないですね。さて世界で何人これを言えるか。

そして“綺麗”と感じるかどうかと言う根本的な問題があります。“綺麗”と感じる人がいれば“汚い”と感じる人もいる。赤の場合なら、元気と取るかポップと取るか、危険と取るか。アウトプットで注意を払われるシーンでは、この差分が意識される事が多いのではないでしょうか。

これらはあなたと他者の認識差分が出やすい事例のご紹介ではありますが、いくつかの特徴を意識的にとり入れています。それが普段から気をつけるといい境界の目安と私が考えるものになります。次からはそれを整理してみてみましょう。

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境界の特徴的なカテゴリ

以下では人にものを伝える時、特にデジタル領域で意識されやすい項目から並べています。

■ 身体的・生物学的特性
・視覚に関する差分:視力、色覚、その他視覚障害など
・聴覚に関する差分:把握できる音量の違い、把握できる波長の違いなど
・その他身体の有効稼動範囲の影響
・(主に料理の範囲になるが)味覚が影響する体験など
・性別:体力、筋力、思考傾向の違いなど
・身体から誘発される(脳内物質など)感情の変化
・アフォーダンスもこの辺りの影響か?
■ 年齢
・加齢によって引き起こされる身体的特性の変化とそれによって変化する体感による認識の変化
・世代間で共有された教育、流行、経済状況などによる知識、見解の違い
・経験によって引き起こされる心理的変化
・育った環境での流行、社会・経済動向、金銭感覚、インフラ、ツール、サービスによる認知差分
■ 歴史・文化的特性
・習慣の違い:言葉、文字、マナーなど
・経験の違い:特定コミュニティ限定の共通言語やキャリアによる知識の違いなど
・認識の違い:慶弔、祭事に関する物事への認識、国境、歴史認識など
・思考の違い:宗教、ダイバーシティなど
・趣味の違い:本人が好んで時間を費やす世界の雰囲気や「常識」
・身体性から始まる様々な特性を様式として構築したシグニファイアの側面など?
・社会的な出来事に起因する気分の変化

いかがですか?
いわゆるアクセシビリティやユニバーサルデザインの項目から、生まれた環境に依存するもの、育った社会背景、個人的な経験の有無に依存するものなどの人の思考を司る要素をカテゴライズしてみるとこの様な側面で見ていく事が出来るかと思います(もちろん、分類方法は様々あると思いますが。)。

これらはあくまで判断に差が出る可能性を持つ境界があると言う話であり、差別ではありません。(差別の材料に使ってもいけません。)ただ、実際にこの中のどれかが影響し違いが出ると言う認識が有ればその上でどう付き合うかを考える材料にはなります。

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境界を使うには?

例えばフラットなボタンを理解できるか、楽しいとターゲットが感じられるか、緊急時にそれを理解できるか。境界は多様に関わってきます。

これらの項目を考慮した時に守らなければならない範囲、狙った層に効く範囲、そしてその境界(どこまでなら通じるか)をうまく見極める様にしましょう。

境界の範囲内ならそれは説明なしに活用可能で、効率的な提案が可能になりますし、その境界を超えるとまず理解から促さねばならない難しい道のりとなります(自覚した上で選ぶならどちらでもいい)。

もし、あなたのお部屋をコーディネートすると言う話ならあなたの境界内から生まれるものをあなたの境界内で使うだけなので基準はあなたの好みで構いません。

あなたのユーザーさんが近い環境で育った同年代の仲間なら境界も少ないのであまり考えなくてもいい。

でも、あなたの境界と異なる境界を多く持ったユーザーさんと向き合う場合は?

今、あなたが見るべき境界はどこですか?
ユーザーさんの持つ境界から考えて見て下さい。

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参照

今回の内容を本気で深めようとすると大量の幅広い知識が必要になってしまいますが、それも中々大変なので、文化的なものは扱うサービスに応じて身につけるとして、どちらかと言うと普遍性が高く、やらやらは別として知っておくべきアクセシビリティの項目は一先ず以下のサイトから常にチェックしたいですね。(私もいつまで経っても覚えられないので何かを構築するたびにチェックする様に心がけています。)

株式会社インフォアクシア - Webアクセシビリティのコンサルティング

また、WCAG 2.1 解説の日本語訳も公開されましたね。(まだ見てないけど!)

ウェブアクセシビリティ基盤委員会(WAIC)

蛇足ですが、アクセシビリティに関してはサービスデザインにおける運用も踏まえたCIの点からの私の考察noteもありますのでよかったら。

ロゴこそアクセシビリティを|ayakoMoritomo / Retty|note

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 次回のお知らせ

次回からはここまでで獲得した(はずの)フラットな視野で如何にして具体的な形を作り上げていくかについて考えていきたいと思います。

このnoteは下記でインデックスしています。
ADのいないこの世界で若手クリエイターに伝えたい10の事
少なくともあと、7本書くので良かったらお付き合い下さい。


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