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【くらしの東洋医学 鍼灸で元気に】アレルギーと鍼灸

千葉市内、千葉駅すぐ、女性と子ども専門鍼灸院『鍼灸 あやかざり』です。
いつも【くらしの東洋医学 鍼灸で元気に】の記事をお読みいただき、ありがとうございます。

今回は取り上げるテーマは『アレルギー』です。
いろいろ治療法を試しても、なかなか根本的に良くならないで悩んでいる。
そんな、アレルギー疾患に対しても、東洋医学の一つである、鍼灸治療は有効なのです。

本文では、アレルギーはなぜおこるのか?
そのメカニズム、アレルギー疾患に対する東洋医学的なアプローチとして、鍼灸治療での取り組み方法についてご紹介をします。
また、最後ほうでは、代表的なアレルギー疾患のひとつである、アトピー性皮膚炎に対する、鍼灸での実際の施術例もとりあげます。

では、どうぞ最後までお付き合いください。


1.アレルギーとは

最近、レストランやカフェでのオーダー時に「苦手な食材やアレルギーはございませんか?」と聞かれたり、食品・製品の成分にアレルギーを起こす可能性がある物質を含んでいることが必ず明記されるようになっています。
それだけ、『アレルギー』は、年齢問わず多くの人を悩ませる疾患となってきており、生活上でもアレルギー症状を引き起こさないようするために、様々な工夫がなされるようになってきているということですね。

その一方で、アレルギーの根本的な改善に至る治療方法はなかなか見つからず、年々、様々なアレルギー症状に悩まされる人が増え続けているのが現状です。
なんと、驚くべきことに、国民の2~3人に1人が、花粉症をはじめとし、何かしらのアレルギーがある、という統計調査の結果も出ているほどです。

アレルギーとは何か? 一言でいえば、身体の過敏反応のことを指します。
私たちの身体には、細菌・ウィルス・寄生虫などの感染性微生物や異物などから、身を守るための「免疫」という仕組みが、生まれながらにして備わっています。
その免疫が、通常は無害な物質に対しても異常に暴走してしまうことにより、様々な反応がひきおこされる、これをアレルギーといいます。

ここでアレルギーという言葉の由来をご紹介します。
アレルギーという言葉は、1906年、オーストリアの小児科医であったクレメンス・フライハー・フォン・ピルケによって提唱したもので、ドイツ語の「Allergie」に由来し、ギリシャ語で「変わった・奇妙な」を意味する「allos」と、「作用・反応」を意味する「ergon」を合わせ、ドイツ語風にした造語である、といわれています。

2.アレルギーのしくみ

アレルギーは、いったいどのようにしておこるのでしょうか?
そのメカニズムをみていきましょう。

①アレルゲンの侵入と抗体の産出
アレルギーを引き起こす様々な物質(=アレルゲン)が身体の中に入り込もうとすると、身体は抗体を産出します。
抗体は、病気の原因となる細菌やウィルスなどが体内に侵入してきた時に、異物として攻撃したり、体外に排除する役割を担うタンパク質のことです。

②アレルゲンの再侵入
産出された抗体は、皮膚や粘膜に多くある肥満細胞の表面に張りめぐされた状態で存在します。
再び、アレルゲンが身体に侵入してきて、この抗体と結合すると、アレルゲンを身体の外へ追い出そうとして、肥満細胞から化学物質(ヒスタミンなど)が一気に放出されます。

③アレルギー症状の発症
上記のヒスタミンなどの化学物質が知覚神経や血管に作用して起こるのがアレルギー症状であり、代表的なものには、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、肌のかゆみ、咳、痰、涙などがあります。

こうして、アレルギーの様々な症状がはじまるのです。

3.アレルギーの発症

ところで、急に花粉症を発症した、あるいは、急に食物アレルギーになってしまった、という人は周りにいたりしませんか?

例えば、ダイエットを目的に豆腐や納豆などの豆腐製品だけを食べ続けていたら、大豆アレルギーになってしまい、大豆を食べると身体がかゆくなり、蕁麻疹がおこるようになった、などがそれにあたります。

これに関しては、同じ種類の食べ物ばかりを摂取しつづけることで、体内の抗体が一定量に達してしまい、アレルギーの症状を発症するようになった、という説があります。
また、遺伝的な要素とも関係があり、生まれつき家族にアレルギー症状を抱える人が多い場合には、本人もアレルギーになりやすく、大人になってから発症をしたという説もあります。
さらに、食生活の乱れや睡眠不足、運動不足、ストレスなどが重なると身体の免疫バランスが崩れて、アレルギーを発症しやすくなった、という説もあります。

アレルギーに関しては、長年にわたり様々な研究が行われてきており、原因にはいろいろな説がありますが、いまひとつはっきりしないのが現状のようです。

4.アレルギー疾患

アレルギー疾患の代表的なものには、以下のようなものがあります。

・喘息
・アトピー性皮膚炎
・アレルギー性鼻炎
・アレルギー性結膜炎
・花粉症
・蕁麻疹
・食物アレルギー
・薬疹
・接触皮膚炎

また、「アレルギーマーチ」といって、アトピー素因(=アレルギーを起こしやすい体質、遺伝等による)のある人の場合には、成長とともにアレルギー疾患を次々と発症していく、というものがあります。

その典型的なものとしては、

1)乳幼児期
牛乳、卵などの食物摂取をきっかけに、皮膚症状(湿疹やアトビー性皮膚炎)や消化器症状(下痢、腹痛、便秘など)が出るようになります。
アレルギーの原因としては、食物抗原が多いようです。

2)生後6カ月頃から5~5歳
喘鳴と呼吸困難の症状が出るようになり、気管支喘息を発症しやすくなります。
乳幼児期のアトピー性皮膚炎の症状が改善して皮膚がきれいになった頃から気管支喘息が出るようになった、というケースも多くみられるようです。

3)学童期以降
気管支喘息は一部は7~8歳で治癒するが、大部分は学童期まで持ち越し、約70%が14~15歳までに治癒し、残りは成人型気管支喘息に移行します。
この間に、アレルギー性鼻炎が発症したり、じんま疹を経験したり、アトピー性皮膚炎が再燃することもあります。

5.西洋医学によるアプローチ

これまでに、新薬や新しい治療法が次々と開発されてきており、アレルギーの治療方法はどんどん進歩をしています。
治療に関しては、まずは原因となるアレルゲンの種類を特定することから、その治療は始まります。

5−1.アレルギーの検査

①血液検査
採血をして、血液中の抗体が反応するアレルゲンの種類とその抗体の量を調べます。
抗体の量が多いほど、そのアレルゲンに対してアレルギー反応を起こしやすい、といえます。
②皮膚テスト(パッチテスト)
原因として疑われるアレルゲン物質のエキスを皮膚に貼りつけたり、軽くひっかいてそこにしみ込ませて、その反応を見る検査です。
抗体があればその部分が虫刺されのように赤く腫れるので、原因となるアレルゲンを特定できます。
③誘発テスト
ろ紙に染み込ませた花粉のエキスを鼻の粘膜に直接触れさせたり、アレルゲンとして疑われる食物を少量摂取して、その反応をみます。
くしゃみ、鼻水、鼻づまり、咳、呼吸苦、発疹などのアレルギー症状があらわれる場合には、原因となるアレルゲンであると判定されます。

5−2.アレルギーの治療

①経口薬、点眼薬、点鼻薬、外用剤(塗り薬)
以前は、病院に行って処方を受けないと入手できなかった、アレルギー症状に対する様々な薬も、現在では、ドラッグストアなどで簡単に手に入れることができるようになってきています。

アレルギーの症状に対する薬は、アレルギー反応で発生するヒスタミンの働きを抑えたり、直接患部の炎症を抑えることで、その症状を抑えます。
薬がストロイド剤を含んでいるかどうか、薬の強弱、どんなタイプの症状に有効なのかなど、使用方法や効果に違いがありますので、薬剤師に相談して自分に合った薬をみつけましょう。
また、自己判断で市販薬を使い続けることは、かえって症状を悪化させる危険がありますので、まずは、病院で医師の診断を受けることも必要です。

②手術療法
おもに花粉症の場合ですが、レーザーで鼻の粘膜を焼き、アレルギー反応を抑えます。
また、鼻の内部の形が原因で鼻づまりがひどく生活に支障がある場合には、その部分を矯正する手術が行われることもあります。

③減感作療法・舌下免疫療法・経口減感作療法
アレルギーの発生に関連する物質を少しづつ注射で体内に入れて抵抗力をつけていき、アレルギー症状を出にくくする治療法です。
スギ花粉症に対しては、最近では舌下免疫療法(舌の下で溶かす飲み薬)も行われるようになりました。
治療は年単位で長期間かかりますが、スギ花粉症の完治も期待できます。
食物アレルギーの場合には、食べても大丈夫な量だけ、対象の食べ物を極少量ずつ食べさせて反応をみていきます。
それにより、抗原に対して体が反応しなくなり、耐性がついていくことが期待できます。

6.アレルギーと鍼灸

冒頭でも触れましたが、喘息、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹をはじめ、これまでにあげたような様々なアレルギー疾患に対しても、鍼灸は効果的とされています。

その効果は、世界保健機関(WHO)も認めています。
参考リンク:公益社団法人 全日本鍼灸マッサージ師会

西洋医学同様、東洋医学(漢方や鍼灸)においても、アレルギー疾患に対する治療の有効性を証明するために、日々研究がすすめられ、学会での論文発表も行われています。
これは、東洋医学が盛んな中国はもちろん、日本においても行われています。

鍼灸では、西洋医学のように、アレルゲンを特定してヒスタミンの働きを抑えたり、直接患部の炎症を抑えるために症状の出ているところに鍼灸の施術を行う、といったような治療は行いません。

鍼灸では「つらい症状が起こっている根本の原因」をみつけだし、それを正すことによって、アレルギー症状を取り除くとともに、再発を防いで、より良い身体づくりをします。

東洋医学的には、「体質、気候、食事、疲労、ストレスなど、何らかの原因で、体内の気・血・津液の循環が停滞したり、気・血・津液が不足して身体を十分に栄養することができないために、様々なアレルギー症状がひきおこされる」と考えて治療にあたります。

まず、鍼灸の施術に入る前には、時間をかけて問診を行い、「いつから」、「どのような条件で」、「どのような症状が出る、またはよくなるのか」というような情報を中心にお聞きします。
その上で、その人の身体全体の状態(脈、舌、顔色、身体の熱冷のかたより、身体の緊張、手足ツボの反応など)から、トータル的にみて、最も原因にふさわしいツボを選び鍼灸の施術を行います。
そのため、アレルギーの症状や原因が同じでも、その時々で使用するツボも変えることが必要となります。

なお、アトピー性皮膚炎に対する皮膚科の処方薬(ステロイド軟膏など)の使用については、鍼灸治療を行いながら、少しずつ皮膚科医と相談して量を減らしたり、薬のランクを下げていくのをおすすめします。

その理由としては、例えば、以下のようなケースが考えられます。

アトピー性皮膚炎の原因が精神的なストレスである場合、❝かゆみ❞が引き起こす精神的なイライラから皮膚の❝かゆみ❞がさらに悪化してしまい、治癒をおくらせてしまう。
あるいは、その原因が皮膚の潤い不足である場合、夜間の❝かゆみ❞で眠れないことで、睡眠により身体を滋養して皮膚の潤いを改善させる作用が低下しまい、皮膚の乾燥が悪化してさらに❝かゆみ❞が増すことから、治癒をおくらせてしまう。
つまり、❝かゆみ❞がアトピー性皮膚炎のさらなる悪化の原因となるという、負のスパイラルがおきないようにするために、まずは、処方薬(ステロイド軟膏)使用して❝かゆみ❞自体をコントロールしながら、根本原因に対して鍼灸治療を行っていくのです。

こうして、西洋医学と鍼灸治療を併用していくことで、自然と薬を手放すことができ、薬がなくても大丈夫な身体へと体質が変化していくのです。
ただし、このような方針をとるかどうかは、鍼灸の方式や鍼灸師ごとでそれぞれ異なりますので、最初に鍼灸院で相談する時に質問をしてみるとよいでしょう。

7.アトピー性皮膚炎 鍼灸の施術例

【患者】40代女性、身長16Xcm、体重5Xkg。
【初診】202X年10月X日
【主訴】アトピー性皮膚炎
【問診】
これまでに増悪緩解を何度もくりかえしている。
保育園に通う幼少期には既に発症をしていた。
幼少期には、肺炎での入院があったほか、蓄膿症で耳鼻科に通っていた。
当時は、四肢の関節内側の症状がひどく、ジュクジュクとすることもあった。
その後の成長において、アトピー性皮膚炎の症状・発症部位は変化してきており、現在は手の指先、や爪のまわりに常に出ているほか、悪化すると、顔面や頸のあたりまでひろがってしまうこともある。
患部の状態は皮膚表面がカサカサとしており、引っ掻くと出血をともなう。
皮膚科への通院は欠かすことができず、ステロイド軟膏と抗アレルギー薬の服薬をしてコントロールをしている。
アレルゲンはハウスダストで、花粉症はなし。

アトピー性皮膚炎のほかに、肩凝り、腰痛、頭痛、胃痛があり、体質改善をして、これらの全ての症状をなくしたい、という目的で来院をした。

【増悪する要因】
・仕事の忙しさから解放された後
・定期的な引っ越しによる環境変化に慣れた頃
・仕事量が多く忙しくて余裕がない時
・睡眠不足が続いた時

【緩解する要因】
・皮膚科での治療
・何かに集中をしている時

【その他】
・季節変化は不明
・月経に伴う変化は不明
・手の爪がガタガタで波打っている
・肩こりと腰痛に対してマッサージは効果があまりない
・全身の皮膚の状態は乾燥がめだつ
・月経量が減ってきている

【診断と治療方針】
東洋医学的には、以下の原因が混在している状態にあると診断。

1)イライラ、精神的ストレスによる内熱(血熱型)
常にイライラしたり思い悩んだりしていると、精神的なストレスが原因で心身共に過緊張状態になり、たまったストレスを発散できなくなることから、体内循環が停滞する。
結果、体内に過剰に熱がこもりやすくなり、その熱が痒みを発症させる。
患部は顔や頸などの上半身が多く、赤みをおびて、かきむしると出血を伴う。

2)皮膚の潤い不足によるもの(血虚型)
長年にわたりアトピー性皮膚炎を患うことで、皮膚の状態を改善させ皮膚表面を潤わせる作用が働きづらくなる。
皮膚は潤いを失い、乾燥して出血をしやすくなる。

従って、身体の緊張を緩め体内循環の停滞を取り除くとともに、身体の潤いを補うことを中心に処置を行う。

【日常生活での注意点】
・普段から適度に運動する。
・軟膏と服薬は医師の指導どおりに使用する。

なお、肩凝り、腰痛、頭痛、胃痛についても、同様の原因により起こっていると診断したことから、長期的にアトピー性皮膚炎の症状が改善していくなかで、肩凝り、腰痛、頭痛、胃痛の症状変化についても変化をしていく、ということを伝える。

【通院頻度】
週に1回程度

【経過】
初診 鍼をした直後から身体の緊張がゆるみ、肩凝り、腰痛が改善する。
4診経過後 肩凝り、腰痛が改善した状態が保たれており、頭痛と胃痛はおこっていない。皮膚の状態は自覚で少しよくなってきており、引っ掻くことが減り、出血もなくなってきたように感じる。
12診経過後 仕事で負荷がかかるタイミングで、一時的にかゆみと乾燥が悪化をすることを何度か繰り返したが、皮膚科の通院と鍼灸治療を継続することで、次第に皮膚の状態は改善に向かう。肩こり、腰痛も以前に比べると楽になってきており、頭痛と胃痛はめったにおこらないようになってきた。
その後は、通院頻度を減らしながら、現在も治療を継続している。

8.まとめ

今回は、アレルギーと鍼灸治療、アトピー性皮膚炎に対する鍼灸の施術例についてとりあげました。

東洋医学においても、アレルギー疾患に対する鍼灸によるアプローチが可能なことはご理解いただけたでしょうか。
今回はここまでとなります。最後までお読みいただきまして、ありがとうございます。

それでは、鍼灸でからだも心も元気になりましょう!

鍼灸 あやかざり
千葉駅5分 完全予約制 女性と子ども専門の鍼灸治療院
千葉県 千葉市中央区新町1−6 ラポール千葉新町202
TEL:070-8525-6132

画像の出典:https://www.photo-ac.com/

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