- 運営しているクリエイター
#アーサー王伝説
アヴァロンか、バビロンか? ―岡本広毅・小宮真樹子【編】『いかにしてアーサー王は日本で受容されサブカルチャー界に君臨したか』―
数年前、私は旧ツイッターで「私は前世紀からのアーサー王伝説好きですが、今世紀に入ってからのアーサー王伝説の日本での人気の上昇は色々と疑う必要があると思います。君主制廃止論者とアーサー王伝説ファンを兼ねている私は間違いなく、腐女子とフェミニストを兼ねている女性以上に矛盾していますね。」と投稿した。それに対する当時相互フォローだったお方の返答は次の通りだった。
《思ったんですけど、君主制廃止論者兼ア
『アヴァロンの霧』に対してさらにイチャモンつけるぜ
私はマリオン・ジマー・ブラッドリー氏の『アヴァロンの霧』を再読したが、この小説のグウェンフウィファル(グィネヴィア)がモーゲンと敵対する理屈(自らの狭量さをキリスト教の信仰で正当化している)はきちんと描かれているんだな。海音寺潮五郎の『孫子』の龐涓(孫臏に対する好意が嫉妬心に変わりつつある過程の描写)もそうだ。それに対して、宮城谷さんの『楽毅』の燕の恵王の人物造形は前述の二人と比べると手抜きでし
もっとみる「女教皇」の名誉回復、そして「女文士」の失墜 ―マリオン・ジマー・ブラッドリー『アヴァロンの霧』―
マリオン・ジマー・ブラッドリーの小説『アヴァロンの霧』(ハヤカワ文庫)は、アーサー王伝説をフェミニズムや多神教優位論の観点から語り直した内容の作品である。その点においては、バーナード・コーンウェルの『小説アーサー王物語』シリーズ(原書房)の先駆けである。主人公モーゲンはいわゆる「モーガン・ル・フェイ」であり、アーサー王の異父姉だが、彼女は古い部族の巫女の血筋を引く娘である。
トマス・マロリーの
血まみれの王者 ―バーナード・コーンウェル『小説アーサー王物語』シリーズ―
いわゆる「三国志」を題材にしたフィクションは、大きく分けて「正史寄り」と「演義寄り」の二通りある。吉川英治や横山光輝の『三国志』は「演義寄り」の代表格であり、陳舜臣『秘本三国志』や王欣太『蒼天航路』は「正史寄り」の代表格だ。この場合、演義の女性キャラクターの代表格である貂蝉の存在は、この分類の基準にはならない。正史寄りの三国志フィクションにも貂蝉が出てくるものがあるからだ。それに、正史『三国志』
もっとみる