シェア
弘生
2024年1月26日 12:33
ニセモノだからシェルピンクにしたあたりまえすぎて見過ごしちゃうほらそこだから左腕の包帯昨夜の深い引っ掻き痕どの扉よりもホンモノらしいニセモノに気をつけてほらそこ実しやかに現れて実しやかに幻になっちゃう七色に憧れる石鹸玉に似てるほら弾けたシェルピンクにしたら新しい島に着いた砂浜の無重力の椅子に願いをこめて記憶のあるうちに時を閉じ込めちゃう不完全な足跡を消
2023年12月6日 01:28
黄色い白ねえ、おんぶしてその安全な白はあたし軽いのよ冬の蝶の目を灯す微かな背中の振動がその熟した白はあなたの言葉を心臓に伝える月の鱗粉を悦ばせあなたの首筋とあたしの頬その滑らかな白は溶けて境が消滅するの産み落とす涙を掬いずっとこのままがいいその無機質な白がただそれだけ夢からの覚醒をただ促すただそれだけの夢ひろ生の夢日記シリーズ
2023年8月21日 07:15
無機質な涙夢から醒める前にその蛹に伝えて言葉の魔力をあたしから奪わないで瓶に詰めて持っていかないでとあのねあなたが久しぶりに夢の中にいたから無機質な歯みたいなとこで胡座かいてさ灰色の大きな蛹を抱えてるから夢の中だって知ってるあたしを緩やかに締め出したあなただもの鍵もかけないほどあたしを信用して扉を開けたままのあの部屋からあたしを追い出したあなただものだから言ってし
2023年5月19日 08:22
魔女の歯形硝子張りの立方体の部屋光源は深夜の映画硝子の向こうでのぞき込む幼な子の小さな顔あれはたぶんあたしのむすこかわいいむすこあたしと並んで壁にもたれてるそのひとは幼いころの弟のようにぐったり小さくみえて何に追われているのか何を追っているのか穏やかにふるえて朝が来るのを待つ夜から生まれたくせに夜がこわいのねあたしは両のてのひらをそのひとの両のてのひらと合わ
2023年4月14日 11:59
なんでもないなんでもないなんてことはないのだ虫歯みたいな石の上に晒された脈打つ心臓の音狂気の濁流に抗わず彼岸横目に一滴のなみだねえ、まっかな花束をくれたのは誰だった?ねえ、まっさおな空ってどんな色だった?ねえ、黒い大きな鳥が頭上を掠めたのはいつだった?片方の靴が脱げたってなんでもないなんてことないくぐり抜けるだけの空の穴はりぼてだらけでなんにもな
2023年3月21日 20:22
囚われ鉄格子から伸びる紫色の右手何かを掴もうと宙を掻く今一番欲しいものはなんだ 魔法の絨毯湿気を許す剥き出しのコンクリート鉄格子から彷徨い出る紫色の指床の開かれた本から文字が起き上がる今一番見たいものはなんだ へびつかい座紫色の爪が鋭く弱々しく伸びる頁に置かれたままの形でひらひらと行儀よく浮遊する文字たち触れると消滅しそうな絨毯みたいだ今一番食べたいもの
2023年3月13日 22:10
魚あたしは水槽の中の魚海は知らないことになってるどうやらここで生まれてどうやらここで生きてるみたい音の無い世界あたしの鰓の呼吸と前世の心臓の鼓動だけが魚のあたしの耳に干渉してるあたしはあなたを観察してる分厚い水槽ごしに感じる困った顔、疲れた顔、悲しい顔あたしが持ち得ない数多の種類の顔笑った顔、驚いた顔、痛みの顔あたしには選べない数多の気