Atsushi Takada

自転車、カメラ、カレー、アイドル、走る詩人( http://acchali.tumbl…

Atsushi Takada

自転車、カメラ、カレー、アイドル、走る詩人( http://acchali.tumblr.com )など。

マガジン

  • ガーミン・アンバウンド・グラベル 2021

    2021年6月、カンザス州エンポーリア。 GARMIN UNBOUND Gravel 100マイルを走った男の連載ルポルタージュ。 君は、砂利を踏む音が聞こえるか。

  • 2023年 アメリカMTB旅行記

    2023年4月にMTBを携えて行ったアメリカ旅行記

  • 写真

    写真が趣味ではなくて、カメラが趣味です。

  • 雑記

    エッセイ、ポエム、なんでも散文

  • って話

    非アイドルファンにむけてゲートウェイ的アイドルコンテンツ。プレイリストとライナーノーツ的なものをセットでポストします。

最近の記事

2023年 アメリカMTB旅行記 サンタクルーズ フロートレイル編

サンタクルーズと聞いて思い浮かべるのはスケートボードのブランドだ。いや、最近だとマウンテンバイクのメーカーかもしれない。前者はサンタクルーズ・スケートボーズと、後者はサンタクルズ・バイシクルと日本語表記されるが、クルーズとクルズ、どちらがネイティブ的なのかは僕にはわからないし、検索の対策とかそういう類で決定したのかもしれない。少年の頃はスケートボードに明け暮れていたが、最も歴史あるブランドのひとつであるそれは、当時は少し古臭いイメージがして敬遠していたようにも思う。スケートボ

    • Rapha Prestige Sanjo

      車輪が誕生したのは紀元前数千年という大昔なのにも関わらず、自転車というのは1817年が起源とされている。古代より人力車や馬車に示すまでもなくあらゆる時代に車輪の存在を確認できるが、人類は2つの車輪を縦に並べるという発想に至るまでに何千年もかかったということだ。その頃、世界はすでに内燃機関を発明し、自動車を実用している。それは労働において荷物や人を楽に遠くに運ぶという、車輪の発明と利用の進化の埒外で自転車が誕生したと言えるだろう。自転車の起源とされる乗り物は木製の車輪が着いたキ

      • GARMIN UNBOUND Gravel 2021 #24

        右ふくらはぎの激痛に耐えインナー・ローでペダルを回す。ここで自転車を降りる訳にはいかなかった。これまで多くの選手が路面が荒れたところや川の洗い越し、強め登りなどで自転車を押していた。僕と森本はそのすべてを乗車でクリアしてきたのに、このほんのちょっとの舗装の坂道で押しを入れる訳にはいかなかった。森本はすぐに登りきって右折をして見えなくなった。ロードレース中に大逃げした選手が攣った脚に安全ピンを刺して走っただの、競技中に脚が攣る対策を聞かれ攣ってないことにしろとアドバイスしただの

        • GARMIN UNBOUND Gravel 2021 #23

          コーナーを右に曲がると、そこに見覚えのある景色があった。サイクルコンピューターは162kmを指している。この道は朝、はるか先まで選手が埋まっていた直線だ。いまはもう完璧にバラバラで、僕と森本と、あと前後に数人だけここにいる。帰ってきた、と思った。スタートとゴールが同じだからではない。僕は100マイルのグラベルレースを走っていた。たった9時間程度の道程だったが、それは紛れもなく旅だった。だから。僕にとって縁もゆかりもない街、ただレースのスタート地点だったエンポーリアという街に、

        2023年 アメリカMTB旅行記 サンタクルーズ フロートレイル編

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          GARMIN UNBOUND Gravel 2021 #22

          ペダルを回すにつれ景色が変わってきた。何もなかった地平線は徐々に農地へと姿を変え、用途が不明な建物など人工物も増えてきた。アップダウンも緩やかになってくると、大きなピックアップ・トラックとすれ違ったりもする。それは街が、つまりゴールが近づいているということだった。僕が前を引いて疲れが出てきた森本を休ませようとしたが、平坦においてはTTバーがやはり強力で、TTポジションを取る森本が速度を乗せて僕を抜かして前を引くので、僕たちはロードレースの逃げ集団のようにローテーションを繰り返

          GARMIN UNBOUND Gravel 2021 #22

          GARMIN UNBOUND Gravel 2021 #21

          休憩を終え、ここからずっと進路は東に向かっている。風は南から吹いているようだが、東向きに進むときも向かい風に感じるので、つまりここから先はずっと向かい風の区間を進むことになる。時刻は13時をまわり気温は天井知らずに上昇している。苦しい時間帯だが、森本はTTポジションを取ると向かい風を切り裂いて走りはじめた。彼もかなり疲労困憊の感があったが、先ほどの休憩で取り戻したのか俄然強さを発揮し僕の前を力強く引き続けてくれている。いま僕のサイクルコンピューターは125ワットの出力を示して

          GARMIN UNBOUND Gravel 2021 #21

          GARMIN UNBOUND Gravel 2021 #20

          隣で森本がカメラに向かって話しはじめた。僕は路肩ギリギリの砂利が無いところに座っているが、彼はしっかり砂利の上に座っている。立っているのが辛すぎて砂利の上でも座れる喜びの方が勝っているそうだが、その砂利はそれなりの(こぶしの半分ぐらいもある)大きさだった。これまでも彼は事あるごとにカメラを回していたが、それは走行中だったり少し離れたところだったので、僕が参加することは少なかった。あくまで森本の配信者としての動画なので、僕がしゃあしゃあと出しゃばるのは良くないと考えているところ

          GARMIN UNBOUND Gravel 2021 #20

          GARMIN UNBOUND Gravel 2021 #19

          無事に水の補給も完了し、僕たちはコースに復帰した。緩やかな登りの2車線の舗装路を南に向かうと、すぐにサイクルコンピューターは右折を示した。そこにはこれまでと同様に1車線半ぐらいの砂利道があり、小高い丘に向かってなだらかに登っている。長めの休憩を取ってすぐというのもあって、短い登りは身体的にはどうということはなかっが、登りきって見えたものは地平線と低木、そこに真っ直ぐに伸びるグラベルで、これまでと全く変わらない景色だった。家畜が放牧されていたりと人の生活に近いところという感じは

          GARMIN UNBOUND Gravel 2021 #19

          GARMIN UNBOUND Gravel 2021 #18

          カウンシルグローブのメインストリートに出ると町並みはアメリカの田舎町そのもので、レンガづくりの2階建の商店が並び、その前にピックアップ・トラックが斜めに駐車されている様はまるで映画のセットのようだった。実際に未確認飛行物体モノの映画で、こういう趣の小さな街と鉄道しかないエリアが舞台なものを観た記憶がある。すぐに古びたガソリンスタンドを見つけたので、そこなら水などを購入できるだろうと立ち寄ることにした。店に入るとまさに爆音と表現するにふさわしい音量でハード・ロックがかかっていた

          GARMIN UNBOUND Gravel 2021 #18

          GARMIN UNBOUND Gravel 2021 #17

          グラベルに鉄線の簡易的なフェンスや用途のわからない鉄柵など人工物が多くなってきて街に近づいているような気配がするのだが、広い範囲で見るとやはり見渡すかぎりの草原に低木、真っ白なグラベルしか存在しない。先程から森本の後ろについて風を避け楽をさせてもらっているのだが、ずっと右のふくらはぎが攣りそうだ。このペースを維持されると十数分ともたないかもしれない。できるだけふくらはぎに負担がかからないようにと思うのだが、自転車のペダリングはハムストリングスと腰や臀部の筋肉を主に使うので、ど

          GARMIN UNBOUND Gravel 2021 #17

          GARMIN UNBOUND Gravel 2021 #16

          ふと、路面にこぶし大の砂利が転がり出した。こういうところは木が多く茂っていて、路面と植生になんらかの関係性もありそうだが、正直心身とも疲れているので観察することもない。グラベルは深く、下りはかなりハンドルも暴れるが、そこはテクニックと43Cのタイヤのエアボリュームでカバーした。ここでもまた降車してバイクを押す選手(日本ではあまり馴染みがないが白人選手はすぐに降車するようだ)をラインを外してパスをする必要があった。深くガレたグラベルでラインを外すのはリスキーだが、ここで降車する

          GARMIN UNBOUND Gravel 2021 #16

          GARMIN UNBOUND Gravel 2021 #15

          休憩を挟んで回復はしたものの、相変わらずのアップダウンだ。景色は相変わらず壮大なスケールで素晴らしいが、あまり代わり映えがないので正直きつい。日が登るにつれ風も強くなってきて、南を向いて走るとかなりの向かい風だし西に向かっているときも向かい風に感じる。つまり強弱はあるもののずっと向かい風という格好になっている。上昇する気温、乾燥した空気と強い日差し、向かい風と代わり映えない景色、グラベルはそこそこ荒れていて、丘をそれなりの斜度で登って下る。これの繰り返しである。ダメージと疲労

          GARMIN UNBOUND Gravel 2021 #15

          GARMIN UNBOUND Gravel 2021 #14

          森本と僕はやっと見つけた木陰に滑り込んで休憩をした。UNBOUND Gravelはアメリカの大平原を走るグラベルレースというイメージがありWebサイトで見かけるビジュアルにも峠道のようなものは無かったので、全域フラットなコースプロフィールと思い込んでいた。オフィシャルサイトのコース概要図にはスタート直後に最も低い標高1,098ftのポイントを通過し25マイルぐらいの地点が最高点1,513ftとあった。差は415ftとなるがこれは126mということであり、約40kmでの獲得標高

          GARMIN UNBOUND Gravel 2021 #14

          GARMIN UNBOUND Gravel 2021 #13

          スタートから北方(つまり街が一切ないエリアだ)に向かうにつれて道幅は細くなり砂利のサイズも大きくなってくる。それでもスムーズなグラベルと言えるが、身体に伝わる振動は大きくなり速度の維持にもパワーを使うようになってきた。また広大な平原は緩やかに隆起しているので、道はそれに合わせて緩い上りと下りを繰り返す。この上りが確実に脚を削ってくるうえに、日が昇ってくるにつれ気温も上昇し、影のない草原を走る間、絶え間なく日光に晒され疲労は確実に蓄積する。 あまりに長い直線とどこまでもただ続く

          GARMIN UNBOUND Gravel 2021 #13

          GARMIN UNBOUND Gravel 2021 #12

          小一時間ほど走ったところで、休憩いるんやったら止まってもらってええんやで、と森本に言われたので、木陰で少し休憩することにした。とにかくスムーズなグラベルを直線的に進むので、淡々とペダルを回していると、気づけば30分程度は過ぎてしまう。気づいたタイミングで意識してこまめに補給と休憩をすることが良いと思ったが、まだ25kmほどしか走っていなかったので特に疲労もなく、とにかくスケールが桁違いの景色にひたすらにまっすぐなグラベルと非日常のど真ん中だったのもあり、休憩している間もなにか

          GARMIN UNBOUND Gravel 2021 #12

          GARMIN UNBOUND Gravel 2021 #11

          保安官が乗車するピックアップ・トラックに先導されて100マイルクラス選手746人が目抜き通りを進んでいく。公道を封鎖してのパレードランはまるでツール・ド・フランスのようで、自転車のプロ選手になったような気分だった。選手はまさに老若男女というところで、アメリカのサイクリストの幅広さと、グラベルレースの普及率の高さを感じさせる。ふと、エンポーリア州立大学の下り坂で集団落車が起きたりしないかと不安がよぎったが、それは全くの杞憂で、同時にこれだけの人数の老若男女がしっかりと自転車を乗

          GARMIN UNBOUND Gravel 2021 #11