GARMIN UNBOUND Gravel 2021 #18

カウンシルグローブのメインストリートに出ると町並みはアメリカの田舎町そのもので、レンガづくりの2階建の商店が並び、その前にピックアップ・トラックが斜めに駐車されている様はまるで映画のセットのようだった。実際に未確認飛行物体モノの映画で、こういう趣の小さな街と鉄道しかないエリアが舞台なものを観た記憶がある。すぐに古びたガソリンスタンドを見つけたので、そこなら水などを購入できるだろうと立ち寄ることにした。店に入るとまさに爆音と表現するにふさわしい音量でハード・ロックがかかっていた。冷蔵庫を物色していると音楽が止まり、振り返ると帽子を被った男が笑顔で立っていた。半袖のチェックシャツにスラックス、そこにベースボールキャップ(どうやらこの店の名前が書かれているようだ)という出で立ちは、あまりにもイメージ通りというか、この田舎町を舞台にした映画に出てくるキャストのようだった。帽子から覗く髪と髭は白髪で、一見老人のようにも見えるのだが、それほど年老いているようではない印象だった。僕はペットボトルの水を3本と、20種類以上のフレーバーブレンドが特徴のアメリカでもっとも古い炭酸飲料を彼の待つカウンターへと持っていった。クレジットカードで支払おうとすると何度もエラーを起こし、4度目でやっと決済が完了した。
外へ出るやいなや炭酸飲料のキャップを回して開栓し、喉を鳴らして飲めるだけ飲んだ。人生で1番うまい炭酸飲料だった。ビールのコマーシャルの俳優ぐらい大きく息を吐き出すと、500ミリリットルのペットボトルはもう半分以上空っぽだった。2本の空のボトルに水を補給し、ペットボトルに残った水を頭から被った。水が無くなった時からずっと心の底にあった不安が消え、ここでやっと一息つけた気がした。すると、店主の男がレシートの束を持って僕の方に来て、見ろ、お前のカードの決済は正しい金額だと言った。英語が得意ではないのと、彼が少し早口だったので半分ぐらいしか聞き取れなかったが、なんとかなるもんだな、と思った。森本は動画の撮影をしている。動画配信者の鏡だと思った。彼はビジネスのチャネルとして昔から動画配信を行なっていたが、配信者になると宣言して4年ほど経つが、今は既に生活の中心に動画配信があるように見える。サイクリングロード以降はゆっくりしたページで走っていたので、ふくらはぎの違和感も無くなったが、念入りにストレッチをした。残りの70km程度、あらためて走りきる準備が完了した。

GARMIN UNBOUND Gravel 2021 #19


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