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視点2_信用は「認知から評価」へ


はじめに


この記事は、2018年末に室井淳司が宣伝会議より出版した「全ての企業はサービス業になる」の最終章で、書籍の内容を10の視点にまとめた内容を要約した記事になります。

2023年現在からすると5年前の記事ですが、当時から現在までに起きた変化を追うと、社会や消費の流れがどの方向に向かっているのか解りやすいと思いますので是非ご一読ください。

2023年視点からのコメントは後半に記載しています。


以下書籍本文の要約

生活者が日常的にインターネットを利用する環境が整う2000年代前半までは、テレビ広告は企業の信用担保に大きな影響を持っていました。テレビで広告を流している企業は企業規模も大きく信用できる企業という生活者の暗黙の了解があった為、企業はテレビ広告を打ち、認知率を上げることから「信用」を形成してきました。

書籍より


しかし、インターネットの普及により企業のマーケティングはマス広告かそれ以外かという構造から、様々なチャネルで顧客へ情報を届ける360度型へと変化しました。このタッチポイントにはマスメディアも含まれますが、ブランドサイトやSNS、企業活動等も含まれ情報の発信元はメディア側から事業会社側になったと言えます。

この頃までのマーケティング活動の目的は「認知」の獲得でした。しかし、高い認知率が高い信用スコアへ繋がり、高い購買率に繋がる時代は、インターネットのさらなる普及に伴い次第に崩れていきました。

コトラーの「接続性の時代のカスタマージャーニー」にもあるように、生活者は企業の信用の実態を調査するようになり、その調査の対象で最も重要な項目は、顧客で構成されたコミュニティが企業の信用をどう評価しているかになりました。そのコミュニティは、家族や友達といった身近な人たちかもしれませんし、商品やサービスの既存ユーザーの口コミや評価かもしれません。

(コトラーのマーケティングは2023年現在5.0が発売されています)


かつてはメディア露出により獲得した認知により担保されていた信用は、コミュニティによりどのように評価されているかという生活者側の共通認識による信用へと変わっていきました。これらのコミュニティに対し企業側がアクセスし、コントロールすることはできません。

メディアを通して企業主語で着飾ったブランドも、コミュニティの中では等身大の振る舞いを求められます。企業主語のイメージと等身大の姿にギャップがあると、顧客は落胆し、それがマイナス方向の推奨を生み、信用を落としてしまう結果になります。

故に企業は、あらかじめコミュニティで実体を評価されることを前提に、等身大の姿で振る舞い、コミュニティでの評価を受け止めながら常に改善を行うという対話のような企業行動でコミュニティからの信用を得なければなりません。

マスマーケティングの時代からすると効率が悪く見えますが、顧客が企業の信用を調査する時代は「不可避」です。故に企業はたとえ地道な作業でも、社会善として振る舞い、等身大の姿で顧客一人ひとりと向き合い、会話し、一人ひとりから信用を獲得していくしかありません。

しかしそうした信用はフローとして流れていくものではなく、ストックされていきます。企業がそれら信用のストックをブランドの資産と認識し、振る舞い続けることで、ブランドを取り巻くコミュニティが新たな顧客を連れて来てくれます。

書籍要約ここまで


2023年からみて

近年では「推奨」も単なる「口コミ」という機能的な役割だけではなく、どんな人たちが推奨しているか」というコミュニティの像も大切になっています。

そのブランドを取り巻く人たちがどの様な人たちかというコミュニティ像は、新たにそのブランドに関わろうとする(購入しようとする)生活者にとって、「購買=そのコミュニティに自分が属する」という判断と同軸になっているからです。

良い推奨は機能的価値の向上のみで達成できますが、企業やブランド側が思い描くコミュニティ像を達成するためには情緒的な価値を伝え、価値と実体が合致する行動を取り、生活者の共感を伴う様に細心の注意を払う必要があります。

先に公開している記事「視点10」にもある様に、企業やブランドはコミュニティに属する人としての振る舞いを大切にしていく必要が一段と求められています。

この書籍は全ての視点や考察が視点10に繋がる構成になっています。視点10も是非ご一読ください。


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室井淳司