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視点10_ブランドは「企業から人」へ

<2023年7月アップデート>
こちらのnoteは、2018年末に室井淳司が宣伝会議より出版した「全ての企業はサービス業になる」の最終章で、書籍の内容を10の視点にまとめた内容を要約した記事になります。

2023年現在からすると5年前の記事ですが、当時から現在までに起きた変化を追うと、社会や消費の流れがどの方向に向かっているのか解りやすいと思いますので是非ご一読ください。

以下書籍本文の要約


ブランド=人。

ブランドのメタファーを人とする考え方は従来からありました。しかし「ブランドは人として振る舞う時代へ」という考え方は、もう少し進んだ考え方です。

書籍より

これまでのブランディングは、自らをどう規定するかという自己分析・定義から始まっていました。どうなりたいかというブランド側の願望は、ブランドが本来持つ実力以上、または努力しても到達できないイメージで形成される場合もありました。

ブランドは、実体以上の自己のイメージを規定し、それを、メディアを通して顧客に一方的に訴え続けることで、ブランドイメージを顧客の記憶の中に刷り込んできました。

このブランディングのアプローチ、そして顧客とブランドイメージを共有する手段はこれから変えていかなければなりません。

これからのブランドは、等身大のブランドとして顧客とリアルタイムに会話し、物理的に交流し、顧客一人一人と良い関係を保つ為に自分を変えていく「人」として振る舞うことが求められます。

これからのブランドは、自らのビジョンと、顧客と共有したい価値に基づき、事業の構造、チャネル形態を組み立て直す時代です。

従来のブランドのように事業構造やチャネルありきの中で、顧客にとって価値となりそうな強みを軸にブランドイメージを規定し、発信していくという順序ではありません。

つまりこれからのブランドは事業そのものであり、どの様な生体で顧客と繋がっていくかという、関係を築く為の「人」である事が求められます。

ブランドが「人」になっていくとすると、これからの時代に企業が必要な姿勢を一筋のコンテクストにおさめることができます。


ブランドは人です。

人なので、自分が何者なのか自分で自分を把握し、整理し、相手に伝えようとします。

人なので、相手に自分を良く見せようと考えます。しかし、自分以上の自分はいずれ剥がされ、相手の失望を生みます。

人なので、相手とリアルタイムに会話ができなければなりません。

人なので、相手の意思に反応し振舞わなければなりません。

人なので、コミュニティにも属します。コミュニティでは互いを尊重し、コミュニティに属する人として誠実に振舞わなければなりません。

人なので、周りと良い関係を保つ為に自分も変わり続けなければなりません。

人なので、相手と会話し、相手の特徴を記憶し、相手のパーソナリティを前提とした適切な会話をしなければなりません。

人なので、お互いの信頼関係が大切です。信頼できる人として、誠実に振る舞い続けることで、継続的で良好な関係が成立します。

人なので、金銭的な関係で支配し、支配される関係ではありません。常に対等で、接続しあう関係です。

人なので、学習し、新しい能力を身につけ、相手が関係を継続することに魅力を感じてもらえる様に努力をします。

人なので、夢を持ちます。その夢をコミュニティに公開し、共感してもらい、応援してもらうことができます。

人なので、大きな夢を語り、周りから注目されることもあります。

人なので、行動が失敗することもあります。それでも夢に向かって行動する姿勢は、周囲の人たちから応援されます。

人なので、応援し続けてくれる人たちの期待に応えようとします。

その為に、自分本位に陥らず周囲と協力し、夢を実現しようと行動します。

ブランドは人です。

自分を高く売る為に、都合よくイメージをつくる時代は終わりました。今は、自分にとって都合の良いイメージは、すぐに剥がされます。

これからの時代、全ての企業はサービス業へと変わっていきます。モノを売る企業でも、モノがもたらすコトを継続的に利用してもらえるサービス業へと変わっていかなくてはなりません。

モノは顧客のデータを吸い上げ、それらをAIが分析することにより顧客と継続的でパーソナルな関係が始まり、顧客の問いかけにリアルタイムに適切に答え、要望に応えられるように常にアップデートし、それら一連の行動が全て、誠実で信頼できる行動でなければなりません。

顧客との信頼関係、絆が強いブランドほど、その評判は周囲のコミュニティへと広がり、よりたくさんの顧客やパートナーへと繋がることができます。

人の社会では当たり前の行動です。

しかしブランドはこれまで自分を大きく見せ、情報の包囲網で顧客のイメージや評価を上げることに莫大なマーケティング予算を投下してきました。

これからは、人として振る舞い、人としての評判を上げることで、周辺との良い関係を築き、新たな接続を生む時代です。それは、従来の様に広告で実現することはできません。誠実な事業で実現することであり、行動でのみ実現できる時代になってきています。


書籍要約ここまで


2023年からみて

視点10は全ての視点のまとめで、企業が時代に関係なく持つべき普遍的な姿勢を書いています。

企業は人としてどの様な思想や意志を持ち、地球市民の一員として社会で活動していくのかが求められています。この考え方は、2018年時点で長期的な企業ブランドのあり方として書いたもので、この5年で変わるものではなく、改めてこの流れは顕著になっていると感じます。

例えば企業は人としてどの様な思想や意思を持って行動するかを実践的に規定していく為に、「パーパス」「ミッション・ビジョン・バリュー」「ナラティブ」等の言葉があります。これらは手法であり、これらの規定を通して企業自体の人格や振る舞いを浮き彫りにすることができます。


総括的には、視点10で書いた内容が全体像を言い表していると思うので、ブランドをデザインする為にはこの全体像をイメージしておく必要があると思います。

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書籍写真



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室井淳司