見出し画像

トライアスロンxアスリートx哲学=八田益之

 トライアスロンに興味のある方、アスリートにはたまらないエッセイです!

 トライアスロンの年代別で4連覇(11'-14')を成し遂げたアスリート八田益之さんが2014年伊良湖トライアスロン大会でのレース中の駆け引きをエッセイに書きました。読んでいて、自分もレースの中に引込まれる様な感じになります。
 トライアスロンって実際どんなか分からない方にも「へぇ〜、こんなスポーツなんだ!」と新しい発見があります!
 そして、常に自分自身と向き合い、己を高めるアスリートの哲学があります。

 ちなみに八田さんはご自身の著書『覚醒せよ、わが身体。トライアスリートのエスノグラフィー』も出版されています。


 さぁ、トライアスロンの世界をお楽しみください!

           (管理人より。)

〈2014年大会、勝利への4㎞〉

「40秒差!」
沿道から身を乗り出して、見知らぬ男が叫ぶ。ランスタート時点では、先頭から1分差と告げられていた。6㎞で20秒。残るは4㎞、このペースでは負ける!
 2014年9月7日午前11時55分。伊良湖ビューホテル付近、海からほぼ垂直に切り立つ崖っぷち、標高60mの走路を、ぼくは走る。夏の終わりの太平洋、三島由紀夫『潮騒』の舞台となった神島、その向こうに志摩半島を遠望する、「トライアスロン伊良湖大会」文字通り最高の絶景ポイントだ。「日本の道100選」の一つ、渥美サイクリングロードだ。

 スイムを出遅れて9位で終え、バイクで5位に上がる。ランの前半で2位に上がり、残るは一人。前回の優勝者、JTU(日本トライアスロン連合)年代別ランキング1位も獲得した、地元田原市の強豪ヤマモトさんだ。この大会への想いは誰よりも強いことだろう。だがトライアスロンは、想いの強い者が勝つ競技ではない。
 勝つのは、俺だ! と自分を鼓舞する。
 スタートから2時間...

ここから先は

17,767字 / 10画像
この記事のみ ¥ 300
期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

この記事が参加している募集

#推薦図書

42,767件

いただいたサポートは次号製作のために使用させていただきますので、宜しくお願いします。