産後の妻への無理解が不和を呼ぶーオキシトシントラップー
「産後からだと思います。子どもが生まれてから、関係が一気に悪化しました」
夫婦関係に悩む男性にいつから関係が悪くなったのかとたずねると、そう答える方がほとんどです。
「産後クライシス」というタイトルの本が出版されたのは2013年、10年が経ちますが、今でも夫婦を引き裂くきっかけが産後にあることは変わりないようです。
ぼくら夫婦も、出産を機にジェットコースターのように超特急&アップダウンな人生がいきなり始まりました。
もう自分たちはダメなんじゃないかと思うほど沈み込み時もあれば、最高に幸せだなと感じられる瞬間もある。
最初の出産から8年、猛スピードで夫婦一緒に人生を進めてきましたが、あれをもっと早く知っておければ、これを知っておけばと思うことがいくつもあったんです。
この記事に書いてある「産後の妻に起こる5つの変化」は、ぼくがもっと早く知っておきたかったというものばかりです。
ぼく自身が夫婦関係に悩む中で調べたこと、夫婦関係に悩む男女のお話を聞く中で学んだことをもとにしています。
「そんなこと知っても、今さらどうにもならない」
そう思う方もいるかもしれません。
ですが、本当に妻から愛されたいのなら、妻から大切にされたいのなら、その妻自身を知ることはなによりも大切ですよね。
彼を知り己を知れば百戦殆からず
孫子の兵法にもそう書かれています。
妻との関係を改善したいのなら妻自身を知り、自分自身を知り、そして二人の関係性を知ることが大切だと、ぼくは思っています。
産後の妻の変化1:オキシトシン分泌によるガルガル期突入
オキシトシンというホルモンを聞いたことがありますか?
幸せホルモンとも呼ばれ、産後の夫婦にとってもっとも重要なホルモンです。夫婦関係のすべての鍵を握っていると言ってもいいと思います。
オキシトシンは子宮を収縮させる効果があるため、陣痛促進剤として出産時に大量に分泌されます。
大量に分泌されたオキシトシンは脳にも影響を与え、目の前の人間を無条件で信じこむ働きがあります。
鼻からオキシトシンスプレーを嗅がされると、どんな不利な条件であってもサインをしてしまうほどで、海外では怪しい媚薬としてネット販売されています。(オキシトシンは連続して分泌されないと効果が薄れるので、この商品には効果がないとは思いますが……。)
出産時に大量に分泌されたオキシトシンのおかげで、女性は目の前の子どもを絶対的に受け入れ、無条件で愛し、心から愛おしく感じるようになります。
ヒトが養育を行うための自然プログラムがオキシトシンであり、授乳や子どもに触れるだけでも、このホルモンは分泌され、いつまでも子どものことを可愛いと思い続けることができます。
出産を機に妻の表情が変わったなと思ったことはありませんか?
優しげで、すべてを包み込むような慈愛に満ちた表情に変わった人も多いと思います。
ぼくの妻もそうでした。出産翌日以降に撮影した妻の顔はまるで菩薩のようで、今まではまったく(と言ったら怒られそうですが)違うものでした。
ですが、このホルモン、男性にとってはかなりまずい作用もあるんです。
それは、他者に対する排他性です。
自身もお子さんを育てるパパである脳研究者、池谷裕二さんの著作から引用します。
自分の子どもがなによりも大切であり、子どもに危害を与えそうなものはすべて敵とみなす。
この敵の線引きの中に、ぼくら夫が入ってしまうことで夫婦の溝が生まれます。
「パパは脳研究者 子どもを育てる脳科学」では、「万が一」という表現がされていますが、夫が妻から敵認定されるケースは珍しくないと思うのです。
産後すぐに育児に関与しないと、妻は子どもに対してオキシトシンをどんどん分泌し、子どもとの間に親密な関係性を築いていきますよね。
仕事が忙しかったり、育児は母親がメイン担当と思っていると、母子間の結束が強くなる一方で、夫婦間の絆は枯葉のようにもろくなっていきます。
また、妻の中で育児に関するこだわりが強くなると、ぼくら男性は関わりにくくなってきますよね。
「そこじゃない!」
と、ガルガル期の妻から強い口調で責められると、(もう、自分は関わらない方がいいのかな)とさえ思うようになります。
ぼくも何度も「そこじゃない」と怒られました。「なんでわかんないの?」「もっと察してよ」、そんなことも言われました。
今思えば、明らかに妻の線引きの中にぼくが入っていなかったのだと思います。
ぼくは最初の出産では1週間しか育休を取得しておらず、日中の育児は妻に任せていたため、妻と子どもの絆は強くなる一方で、ぼくら夫婦の絆はどんどんと弱まっていったのです。
子どもが生まれてから、妻が人が変わったように怒りっぽくなった。
もし、あなたがそう感じるなら、それは妻のせいではなく、妻の脳から分泌されるオキシトシンが原因です。ホルモンの効果ですから、妻自身がコントロールすることはとても難しいんです。
オキシトシンによる妻の変化を論理的に理解しておくと、妻に対して情緒的な対応をとても取りやすくなります。
まずは、オキシトシンの作用を理解しておくことが、夫婦関係改善においてはもっとも大切なんじゃないかなと思っています。
愛のホルモン、オキシトシン。
それには排他性という多くの人が気が付きにくいトラップが隠されているのです。
ですが、最初の出産から数年後、ぼくらの関係を愛情あふれるものにしてくれたのもまた、オキシトシンでした。
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長くなってしまったので、二つ目の変化については次の記事でまとめますね。
ちなみに、残りの変化はこちらです。
産後の妻の変化2:赤子養育のために性欲減退
産後の妻の変化3:産褥期≒全治2ヶ月の大怪我
産後の妻の変化4:圧倒的な社会的孤立
産後の妻の変化5:失われたアインデンティティ
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この記事は「男性向け夫婦関係改善本」のための下書きです。
下の目次の(←ここ)とある箇所の記事です。記事を書き足していき、最後は一冊の本にします。
明日以降もぜひ読んでいただけると嬉しいです。
第一部:なぜ、あなたは妻から嫌われたのか?
◾️第一章:恋から愛への移行不具合
○恋のメカニズム
○産後の妻の変化への無理解
産後の妻の変化1:オキシトシン分泌によるガルガル期突入
産後の妻の変化2:肉体と精神がズタボロになる産褥期
産後の妻の変化3:産後女性の性欲減少メカニズム
産後の妻の変化4:圧倒的な社会的孤立
産後の妻の変化5:失われたアインデンティティ
○絆を構築する共同体験の欠如
◾️第二章:無から愛の生成不良
○「Who you are? 」ではなく「What you have ?」であなたが選ばれた場合
第二部:では、どうするか?
◾️第一章:夫への恨みの生成過程を知る
○未完に終わった夫婦の発達課題
・結婚前に獲得すべきだった「本当の親密さ」とは?
・未確立な夫婦のアイデンティティ
・親になること、夫婦になること
○非主張的自己表現の呪いから抜け出せない妻
○攻撃的自己表現をやめられない夫たち
○妻の不信感を募らせる、夫の非自己開示
○「夫への恨み」はいかにして生まれるのか?
○なぜ、あなたの妻は「婚外恋愛」を望むのか?
◾️第二章:セックスに関する無理解を知る
○産後にセックスに興味を失う理由
○生理周期に伴う性欲の変化
○性に関する夫婦の話し合いの不在
◾️第三章:現状把握と事態の受け入れ
○妻の恨みの根幹を知る
○妻の恨みの発生原因と対応策
○妻を家政婦として見ていないか?
○妻を性的愛玩具として見ていないか?
○人生の優先順位を間違えていないか?
◾️第四章:愛着スタイルから考える夫婦関係悪化の原因
○冷えた夫婦関係を温める”アタッチメント”を手に入れろ!
○回避型愛着スタイルを持つパートナーとの付き合い方とは?
○不安型愛着スタイルを持つパートナーとの付き合い方とは?
○オキシトシンが夫婦の精神的親密性を生み、精神的親密性が愛を生む
◾️第五章:精神的親密性という二人の基礎を作る
○二人の間のエモーショナルに焦点を当てる(EFTに関して説明)
○二人の関係性のダイナミクスを変えていく(EFTを夫婦間コニュニケーションに応用)
○相互理解の快感が恋愛を超える
◾️第六章:セックスは愛の最終形態
○セックスは手段、目的は親密性との触れ合い
○ケアラーはなぜセクシーなのか?
第三部:どうやって努力を継続させるか?
◾️第一章:関係性改善の継続のために必要なもの
○別れる覚悟を持つ
○共に前に進む仲間を作る
○自分に思いやりを与えるセルフコンパッションで走り続ける
◾️第ニ章:妻への思いやりを定着させるコンパッション
○コンパッションとは?
○まずは自分が酸素マスクをつける(自分を思いやりで満たす。自分に思いやりを向けることを許す)
○具体的なコンパッションワーク(スージングブリーズ、マインドフルネス、友人からの手紙、思いやりを受け取る・与えるワーク)
◾️第三章:妻へのコンパッションを実現させるステップ
○他者(妻以外)へのコンパッションビームと感謝のワークによってコンパッションを体に染み込ませる
○妻へのコンパッションビームと感謝のワーク
○妻への感謝を言葉にして伝える
まとめ:妻との関係改善に本当に必要なものとは?
番外編:夫婦関係改善に役立つモノ
○ジャーナリング
○世帯経営ノート
○EFTカップルセラピー
○トラウマ治療
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