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なぜ、夫婦は「性の話」を傷つくことなくできないのか?

ぼくらが性に関する話をできるようになったのは、3人目が生まれてからだった。

本当はどうして欲しいのか、どうして欲しくないのか。

したい時としたくない時とは?

こういった話には羞恥心がつきまとう。

自分の願望を伝える恥ずかしさ。

相手に受け入れられないのではという恐怖心。

そして、望まぬ行動を伝える際には、相手を傷つけるのではという罪悪感もつきまとう。

逃げ出したくなるような羞恥心と、拒絶というナイフの殺傷能力に怯えながらも話し合いを重ねる中で、やっとぼくらは心を開き合い、厄介な性に関する会話をカジュアルにすることができるようになった。

夫婦が性に関する話をすることは確かに難しい。

だけど、恥と罪悪感の丘を乗り越えた先には、きっと今とは違った景色が広がっているはずだ。

性の概念、罪悪感、断絶感。

なぜ、性に関する話し合いは難しいのか?

一つは性に対する概念の問題だと思う。

触れてはいけないトピックであり、社会的タブーですらある。

「今日の晩御飯どうする?」と同じテンションで「今日のセックスどうする?」なんて、言えるわけがないですよね?

イエスノー枕に代表されるように、セックスに関する話題には禁じられた空気感がある。

はしたない、恥ずかしい、いやらしい。

たとえ誰にも話を聞かれない自宅であっても、自分の夫や妻にセックスに関する話題を切り出すことはとても勇気が要るはずだ。

一体どうやって切り出せばいいのか?軽蔑されやしないか?

タブー視しているトピックには触れることができないため、結局話し合えない。

もう一つは、拒絶に対する罪悪感と断絶感だ。

自分はしたくないが相手はしたい。

そんなシチュエーションでは、相手の願望を拒絶することに強い罪悪感を覚える。

断ることが怖く、嫌々夫に応じているうちに、夫への肉体的嫌悪感が増していったという女性の話を何度も聞いた。

夫に指一本触れられたくなく、罪悪感が夫への嫌悪感へと変化していく。

また、自分はしたいが相手はしたくない場合。

「したくない」と拒否されることで、その人は人間性を否定されたような強い断絶感を感じる。

自分には何の価値も無い。つまらないちっぽけな虫けらのような存在なんだ。生きている意味すら感じられない。

妻から拒絶され続け、生きる目的を見失った男性の話をいくつも聞いた。

なぜなのか?

彼らにとってセックスは、単なる性交渉を意味していないからだ。

お互いに愛し合っている証拠、出会った頃にあったはずのお互いへの柔らかな想いの確認。

そういった精神性を意味している。

だが、多くの人は自分が求めるものが精神的なものであると理解していない。

マーケティング分析フレームワーク3C(Customer, Competitor, Company)のように、性交渉を前戯、挿入、オーガズムの3要素で捉えている。

アダルト産業が生み出したフレームワークにとらわれ、ぼくらはセックスの意味を見失っているのだ。

そのため、セックスに関する夫婦の話し合いは「したい」と「したくない」の衝突となっている。

二つのグラスが激しくぶつかりどちらも粉々になるように、この衝突は初めから結論が見えているのにも関わらず、多くの人が同じループにはまり抜け出せなくなっている。

「したい」「したくない」の下にあるものは?

では、一体どうすればいいのか?

どうすれば、夫婦は性の話し合いをお互いに傷つかずにオープンにできるのか?

まずは、繰り返される「したい」「したくない」論争から一歩引き、相手の言葉に耳を傾けることだと思う。

相手に共感はできないかもしれないが、理解はできるはずだ。

なぜ、そんなにもセックスを拒絶するのか?

この話題には羞恥心がつきものだから、簡単には口を開いてくれないだろう。

だけど、名探偵シャーロック・ホームズになったつもりで、パートナーの感情を紐解いてみよう。

「したい」という自分の思いから一旦離れ、相手の感情の流れを読み解くのだ。

論理ではなく感情。

なぜしたくないのかというロジックを追わず、「したくない」という感情の川の流れを見つけ、その水がどこからやってくるのかを調査するのだ。

もしかしたら川上の源流には、こういった感情が存在するかもしれない。

自分勝手なセックスによって、体を使われているような屈辱感を感じる。

したくないタイミングに無理やりさせられ、トラウマになっている。

こちらの性欲の流れを理解しようとしないことに寂しさを感じる。

あなたにとってはあまりにショッキングで、受け入れがたいものもあるだろう。

だけど、パートナーの心からの素直で柔らかな思いに触れることができれば、時に怒りが伴うほどの「したい」という自分勝手な欲望を押し出すことはなくなるのではないだろうか?

また、逆に「したくない人」は「したい人」の感情の根底に何があるのか、じっくり拾い上げてみてはどうだろう。

おそらく「したい人」は、自分が本当は何を望んでいるのか、自分でもわかっていないはずだ。

性交渉への渇望に取り憑かれたパートナーの言葉を、ゆっくりと分解していってみよう。

もしかしたら、そこにはこんな感情が横たわっているかもしれない。

あなたと手を繋ぐこともできない毎日は、風が吹けば粉々に砕けるざらりと枯れた葉っぱのよう。

心がギュウっとしぼみ、体がぺちゃんこになるほど強い絶望感を感じる。

肉体的な親密性を失った日常は、ただ死へと向かう絶望の日々。

あなたに触れられるだけで、心の中にジュワッと温かなものが広がっていくのに。

ただギュッと抱きしめてもらえるだけで、生きている喜びを感じられるのに。

その人が求めているものは単なる性交渉ではなく、愛し愛されているという実感なのかもしれない。

人が生きるにあたり必要不可欠となる愛着を求めているだけなのかもしれない。

ただ、愛を手に入れる手段がセックスしかないと、思い込んでいるだけなのかもしれない。

「したい」「したくない」の意見をぶつけ合うのではなく、お互いの心の源流にあるソフトな感情に触れてみよう。

お互いの柔らかな思いを「共感」はできなくとも、「理解」することができれば、少しは自分と相手に対する見方が変わってくるはずだ。

そうすれば、「する」「しない」ではなく、二人が納得できるもっと柔軟なアクションが考えられるようになるはず。

例えば、こんな風に。

挿入は無しで、ただベッドの上で眠りに落ちるまで抱きしめ合う。

相手がしたいタイミングを把握し(もしくは申告してもらい)、お互いにとってベターなタイミングでする。

回数ではなく、お互いに愛を感じ合える質にこだわる。

性行為中ではなく、日常生活で愛着を感じ合えるよう、別れと出会いのタイミング(いってらっしゃい、いってきます)でのキスとハグを習慣化する。

パートナーが性に関するトラウマを抱えているなら、専門家によるトラウマ治療をおこなう。

お互いの柔らかな感情を知り、受け止め合うアクション

性の話題につきまとう恥と罪悪感、挿入にとらわれるセックスへの固定概念、セックスに関するトラウマ。

夫婦が性の課題を解決することは簡単じゃない。

だけど、セックスを性行為ではなく、愛情を伝え合い感じ合う行為と捉え直すことができれば、話し合いへのハードルは少し下がるんじゃないかと思う。

いや、話し合いと捉えること自体が問題なのかもしれない。

お互いの柔らかな感情を知り、受け止め合うアクション。

言葉が交わされるから、人は「話し合い」と呼ぶかもしれないが、そんな冷淡なワードに収まらない豊かな心の交流がそこにはあるのだとぼくは思う。

パートナーの心に触れ、自分の心にも触れてもらう。

薄いガラスに触れられるような恐怖を感じるけれど、いくつもの愛着あふれるアクションを繰り返すことで、強固な外側としなやかな内側をあわせ持つ日本刀のように、夫婦関係も頑丈で柔軟なものへと変化していくのだと思う。

どれだけ性の話題に触れても、お互いを傷つけることなく、オープンに話し合えるほどに。

ぼくはそう信じている。



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この記事は「男性向け夫婦関係改善本」のための下書きであり、下の目次に沿って記事を書き足していき、最後に一冊の本にします。

下線がある目次は執筆済み記事へのリンクです。クリックすると記事に飛びます。

本が完成するまで記事を書き続けますので、応援していただけると幸いです。


第一部:なぜ、あなたは妻から嫌われたのか?

◾️第一章:恋から愛への移行不具合

恋のメカニズム
○産後の妻の変化への無理解
産後の妻の変化1:オキシトシン分泌によるガルガル期突入
産後の妻の変化2:肉体と精神がズタボロになる産褥期
産後の妻の変化3:産後女性の性欲減少メカニズム
産後の妻の変化4:圧倒的な社会的孤立
産後の妻の変化5:失われたアインデンティティ
絆を構築する共同体験の欠如

◾️第二章:無から愛の生成不良

○「Who you are? 」ではなく「What you have ?」であなたが選ばれた場合

◾️第三章:夫への恨みの生成過程

○未完に終わった夫婦の発達課題
結婚前に獲得すべきだった「本当の親密さ」とは?
未確立な夫婦のアイデンティティ
親になること、夫婦になること
○非主張的自己表現の呪いから抜け出せない妻
○攻撃的自己表現をやめられない夫たち
○妻の不信感を募らせる、夫の非自己開示
○「夫への恨み」はいかにして生まれるのか?
○なぜ、あなたの妻は「婚外恋愛」を望むのか?

◾️第四章:セックスに関する無理解

○産後にセックスに興味を失う理由
○生理周期に伴う性欲の変化
○性に関する夫婦の話し合いの不在(←今ここ)

◾️第五章:現状把握と事態の受け入れ

○妻の恨みの根幹を知る
○思い込みにとらわれず質問を恐れない
○客観的に自分たちを見つめる

◾️第六章:妻から嫌われる3つのパターン

○家庭より仕事を優先してきた
○家族の幸せより自己実現を優先させてきた
○妻への思いやりより自己の欲望を優先させてきた

第二部:では、どうするか?

◾️第一章:皿洗いをする前にやるべきこと

○夫婦の絆の土台となる”親密性”
○「受け止めてもらえる」安心感を妻に与える
○柔らかな感情の掘り起こし

◾️第ニ章:愛着の形成が二人の絆を作る

○柔らかな感情の共有
○相互理解という快感
○夫婦に恋愛は必要ない
○ドーパミンではなく、オキシトシンが愛を作る

◾️第三章:自分も相手も大切にするアサーティブコミュニケーション

→詳細考え中

◾️第四章:セルフコンパッションで関係改善の努力を継続

→詳細考え中

◾️第五章:セックスは愛の最終形態

○セックスは手段、目的は親密性への触れ合い
○性の話し合いを恐れない

第三部:フェニックスマンの特徴

○夫婦関係を改善できる男性の特徴とは?


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