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結婚前に獲得すべきだった「本当の親密さ」とは?

「3人目が生まれて、あっちゃんはもっと優しくなった」

子どもたちが寝静まった夜、二人で晩酌をしていた時に妻がそう言いました。

最初の出産(双子でした)では、育児に対して当事者意識を持てていなかったぼくも、3人目にしてやっと変わることができ、その変化が妻にも伝わったのだと思います。

子どもが3人もできると色々なことが起こります。

弟の誕生により上の子たちが情緒不安定になったり、毎日のように兄弟喧嘩が起こったり、食事や洗濯が増え、保育園や上の子の習いごとの送迎が増えたり。

特に、上の子たちのメンタルへの寄り添いは今でも大きな課題です。

結婚し子どもを育てると、色々な課題が生まれ、時には危機と呼ぶような大きな出来事も起こりますよね。

危機が起こった時こそ夫婦の絆を作るチャンスだととらえるようになってから、妻からぼくへの視線が変わったように感じています。

夫婦に降り注ぐ危機の雨が、ふたりの心を大木へと発達させていく。

ですが、妻から嫌われてしまった男性たちの話を聞いていると、「夫婦の心の発達」がうまくいっていないケースが多いのです。

夫婦の発達課題において、妻から嫌われた男性たちは何を間違えたのか?

滋養を与えるはずの雨は、なぜふたりの心を枯らせてしまったのか?

詳しくみていきましょう。

家族ライフサイクルにおける夫婦の発達課題

夫婦はライフサイクルごとに発達課題が存在し、それらのクリアしていくことで、絆を深めていくと言われています。

以下は明治学院大学心理学部心理学科教授 野末武義さんの著書「夫婦・カップルのためのアサーション 自分もパートナーも大切にする自己表現」からの引用です。

家族ライフサイクルは7つありますが、夫婦関係悪化に関連する以下の5つを取り上げますね。

  1. 結婚前の独身の段階(自己の確立)

  2. 新婚夫婦の段階(夫婦としてのアイデンティティの確立)

  3. 乳幼児を育てる段階(子どもにとって安心できる夫婦関係の構築)

  4. 学童期の子どもを育てる段階

  5. 思春期・青年期の子どもを育てる段階

難しく思えるかもしれませんが、内容はすごく簡単です。

それぞれのステージがどういったものか、なぜそれぞれのステージで失敗したのか、わかりやすく解説しますね。

結婚前の独身の段階

この段階の発達課題は三つあります。

  1. 職業を選択してコミットし経済的に自立すること

  2. 友人や恋人と親密な人間関係を築くこと

  3. 親や実家から心理的に自立すること

このうち、妻から嫌われた男性に強く関連するものは2です。

なぜ、友人や恋人と親密な人間関係を築くことが大切なのか?

それは、この時期に夫婦間コミュニケーションの基礎である「親密さ」を学ぶことになるからです。

友人や恋人と仲が良くなったときに、お互いの共通点ばかりに目がいってしまい、存在するはずの「二人の違い」を受け入れられなかったことはありませんか?

「なんで、そう思うの?」

「そんな考え方、おかしいでしょ?」

「ありえないでしょ、普通」

などと、相手を自分に同化させようとした経験は?

もしくは、仲良くあり続けるために、お互いの違いを見て見ぬふりをし、相手に合わせてしまった経験は?

これらは融合的な関係と呼ばれており、お互いを大切にしているとは言えない関係です。

この関係性を妻に対して強いている人が、妻から嫌われやすくなるのです。

ぼくもこういった経験がありますが、相手は「自分を否定された」気持ちになり、とてもじゃないですが安心感を与えることはできません。

また、日々の生活で生じる小さなすれ違いや、考え方の違いに我慢できなくなり、孤独感を感じやすくなります。

ぼくは融合的な気質があるので、この孤独感を感じることが今でもあります。ぼくにとっても課題ですね。

逆に、友人や恋人との付き合い方が、距離を置いたものだった人もいるかと思います。

恋人であっても自分は自分、相手は相手と割り切り、物理的にも精神的にも距離をあけた付き合いしかしてこなかった。

自立しているように見えますが、相手と心理的に近づくことがむずかしく、親密さを築くことができません。

このまま結婚してしまうと、夫婦として一緒に暮らすことに窮屈さを感じ、家事育児やキャリアの問題など、夫婦としての課題を解決するために気持ちを伝え合ったり、課題解決のための努力がむずかしくなってしまいます。

妻から嫌われた男性の傾向を見ると、後者の孤立的な関係の方が多いようです。

友人や恋人と親密な関係を築けず、距離を取ったつきあいばかりだったケースですね。

結婚前は、お互いを強く求める気持ちが働き、心理的な距離があることに気がつきにくいですが、結婚し子どもが生まれると生活がガラッと変わりますので、お互いの気持ちを伝え合わないとうまくいかないことが増えていきます。

家事、育児、キャリアの課題など、お互いの思いを伝え合っても「夫婦はしょせん他人だから」と、相手の思いへの理解と共感を拒絶する。

気持ちを伝え合うことを無意味と切り捨て、自分の殻に閉じこもる。

ふたりとも固い殻に閉じこもってしまった結果、お互いの感情を知る機会が絶たれ、気がついたら絶望的なほどの心理的距離が生まれていた。

そんな話をたくさん聞きました。

では、「本当の親密な関係」とは一体どういう関係を指すのでしょうか?

アメリカの心理療法家ルーナーは親密さをこのように定義しています。

自分が自分らしくいられ、相手のその人らしさも承認できるような関係

ちょっと難しく聞こえますが、言っていることがすごくシンプルです。

お互いにアイデンティティをしっかりと持っており、独立した個人という意識があるという前提で、自分とは異なる個性を持ったパートナーに理解と共感を寄せることができ、お互いの思いを共有できる関係性です。

ただ、これは結婚前からできている人はほとんどいないと思います。ぼくもできていませんでしたし、今でも修行中です。

だからこそ、多くの人間が夫婦関係に悩むのだと思います。

そもそも、「独立した個人」としてアイデンティティを持つことの難易度が高いですよね。

自分のアイデンティティ(自分らしさ)とはなんなのか?

そう問われて、すぐに答えが出る人はそうそういないと思います。

特に女性の場合、出産し、母になる時点でアイデンティティを見失う人が多い印象です。

自分らしさが分からないまま他者と情緒的に向き合うと、お互いに傷ついてしまうことが多いはずです。

他者と心理的に近づくためには、まずは自分を知ることが大切なのかかもしれません。

ぼくの場合、仕事、キャリア、結婚、子どもの誕生を経て、アイデンティティを養っていった感覚があります。

そして、自分だけではなく、「夫婦としてのアイデンティティ」も、子育て中心となった結婚生活のなかで育まれていったと感じています。

次の記事では、「夫婦のアイデンティティの確立」について、詳しくお話ししますね。


ーーあとがきーー

先日、家事シェア研究家の三木智有さんと、ネオ・ファミリースタイル学キュレーターの海野千尋さんがやられているポッドキャスト「家族をアンラーンする!」のコラボ収録に参加させていただきました。

まだ配信は先ですが、これがめちゃくちゃ楽しかったです!

普段の生活では、夫婦間系や家族関係について話す機会なんてそうそうないじゃないですか。

でも、おふたりとも、夫婦や家族に真剣に向き合われているので、話が止まらない止まらない……!

収録時間内では話し足りないくらいで、終わったあとに(あ~!あれもこれも話せばよかった!)と後悔するほどでした。

質問をいただいて、それに答えるなかで自分についても理解が深まったような気がしています。

たぶん、いままでぼくのポッドキャスト(アツの夫婦関係学ラジオ)では話していない個人的なことも話しているので、配信されたときにはぜひ聴いていただけると嬉しいです。


ーーお知らせーー

この記事は「男性向け夫婦関係改善本」のための下書きです。

下の目次の(←ここ)とある箇所の記事です。記事を書き足していき、最後は一冊の本にします。

本が完成するまで記事を書き続けますので、応援していただけると嬉しいです。

また、ぼくの夫婦関係研究へのサポートも募集しています。応援したいと思ってくださる方はよろしくお願いします。


第一部:なぜ、あなたは妻から嫌われたのか?

◾️第一章:恋から愛への移行不具合

恋のメカニズム
○産後の妻の変化への無理解
産後の妻の変化1:オキシトシン分泌によるガルガル期突入
産後の妻の変化2:肉体と精神がズタボロになる産褥期
産後の妻の変化3:産後女性の性欲減少メカニズム
産後の妻の変化4:圧倒的な社会的孤立
産後の妻の変化5:失われたアインデンティティ
絆を構築する共同体験の欠如

◾️第二章:無から愛の生成不良

○「Who you are? 」ではなく「What you have ?」であなたが選ばれた場合

◾️第三章:夫への恨みの生成過程

○未完に終わった夫婦の発達課題(←ここ)
○非主張的自己表現の呪いから抜け出せない妻
○攻撃的自己表現によりエスカレートするネガティブループ
○妻の不信感を募らせる、夫の非自己開示
○時限爆弾となる「夫への恨み」
○増加する”婚外恋愛”願望

◾️第四章:セックスに関する無理解

○産後にセックスに興味を失う理由
○生理周期に伴う性欲の変化
○性に関する夫婦の話し合いの不在

◾️第五章:現状把握と事態の受け入れ

○妻の恨みの根幹を知る
○思い込みにとらわれず質問を恐れない
○客観的に自分たちを見つめる

◾️第六章:妻から嫌われる3つのパターン

○家庭より仕事を優先してきた
○家族の幸せより自己実現を優先させてきた
○妻への思いやりより自己の欲望を優先させてきた

第二部:では、どうするか?

◾️第一章:皿洗いをする前にやるべきこと

○夫婦の絆の土台となる”親密性”
○「受け止めてもらえる」安心感を妻に与える
○柔らかな感情の掘り起こし

◾️第ニ章:愛着の形成が二人の絆を作る

○柔らかな感情の共有
○相互理解という快感
○夫婦に恋愛は必要ない
○ドーパミンではなく、オキシトシンが愛を作る

◾️第三章:自分も相手も大切にするアサーティブコミュニケーション

→詳細考え中

◾️第四章:セルフコンパッションで関係改善の努力を継続

→詳細考え中

◾️第五章:セックスは愛の最終形態

○セックスは手段、目的は親密性への触れ合い
○性の話し合いを恐れない

第三部:フェニックスマンの特徴

○夫婦関係を改善できる男性の特徴とは?


それでは、また!





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