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持分法の処理と財務モデル

持分法の概要

持分法は連結会計のうち一行連結と呼ばれるものである。端的に言うと、支配権を獲得していない会社(議決権の20% ~ 50%以下)を連結BSおよびPL上どのように表現するか規定した会計処理である。

*通常のマジョリティないし100%買収 (outright acquisition)は、支配権を獲得する行為なので会計上、連結財務諸表を作成する際には全部連結という方法になる。

英語ではEquity methodといい、M&A関連の会計処理では時折必要とされる知識であるため、知っておいて損はないと思う

会計処理概観

簿記的な考えで行くと、毎回毎回仕訳を作成することが正しいが、PLおよびBSにどのようなインパクトがあるか計算するには仕訳よりもTime tableのような形式で示すほうが望ましい。
イメージとしては以下のようになる。

持分法による連結会計上のタイムテーブルのイメージ

大事なpointとしては、①オンバランスする関係会社株式の計算、②PLに計上する持分法による投資損益の計算ができればOKということになる。
上記では持分法による投資損益は、50,000*25% - のれん償却500 = 12,000になる。

PLへのインパクト

事業会社の方にとっては、新規にM&Aを実施し、出資した会社をグループ連結上持分法により取り込む場合、損益にどのようなimpactがあるのか知りたいところであろう。
一般的な買収(ここでは簡単に100% 買収を想定)した場合に、買収した会社の純資産と取得対価の差額をのれんとして計上し、最大20年以内で定額償却(JGAAP)もしくは、減損テストを行う処理 (IFRS)がなされるが、持分法の場合は若干異なる。

持分法の場合は、PLの営業外項目において「持分法による投資損益」を計上するが、当該項目は持分法適用会社が計上した当期純利益×持分比率 - 持分法投資により発生したのれん相当額の償却を反映すれば良い(JGAAP)

持分法による投資損益は営業外項目なので、純利益からEBITDAまでを計算する際には計算上考慮しなければいけない。

財務モデル作成上の留意点

財務モデル作成上はPLに持分法による投資損益を反映させる必要がある。計算方法は先ほど記載した通りである。

なお税金にも影響することに留意したい。対象会社の課税所得を計算する際には「持分法による投資損益」は損金ないし益金不算入なのでPBT (profit before tax)から課税所得を計算する際に、そのほかの損金不算入項目(のれんの償却費や減損損失など)と同様に調整しないといけない。

持分法投資にかかる関係会社株式をモデル上精緻に予測するということは中々想定できないが、もしも必要な場合は、対象となる持分法適用会社の純資産のスケジュールを作成し、持分を乗じて計算(のれんが発生している場合は当該残高も加味する)することが重要である。

バリュエーションでの留意点

バリュエーション実務において重要なpointは、EBITDA (Adjusted EBITDAの計算)と、DCF法によるバリュエーションでEquity valueを出す際のブリッジであろう。

EBITDA調整

Net incomeからEBITDAへ調整する際にはequity investment (持分法)による投資損益は調整しないといけない(下記参照)
米国の開示であるが、DDレポートのようにreported EBITDAからAdjusted EBITDAまでの調整過程が分かりやすく示されている。

もっともJGAAPで考える場合にはEBITの計算過程に持分法による投資損益は含まれていないので、いつも通りEBIT+DA=EBITDAで計算して特段問題はないであろう。

EV to equity bridge

EVからEquity valueのブリッジを計算する際に、通常はEV+Net debt (cash) = equity valueとイメージされることが多いが、Net debtで一括りにするよりも、下記に分けて計算するほうが分かりやすい

  • Debt

  • Excess cash

  • Debt-like item (非支配株主持分等, 優先株も含む)

  • Non-operating assets (非事業用資産)

  • その他 (NOLの節税効果の現在価値等)

持分峰投資による関係会社株式は (必ずコア事業に紐づいている場合を除いて) non-operating assetsになるので、EVに合算すべき項目になる。
バリュエーションレポートを作成する際には、漏れがないように気を付けたい。

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