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むさしの写真帖

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「写真っていうのはねぇ。いい被写体が来たっ、て思ってからカメラ向けたらもう遅いんですよ。その場の空気に自分が溶け込めば、二、三秒前に来るのがわかるんですよ。その二、三秒のあいだに…
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#京都

むさしの写真帖

むさしの写真帖

古いデジカメについて書いています。
ただしこれらの記事は2018年前後のものであるので、カメラのほとんどは手許にないのをご承知おきください。

追記: ネタが尽きたので写真、カメラにまつわること。またアラカンおじさんの日常について書いたりします。(2023年霜月朔日)

壬生

壬生

文久3年9月18日は晴れていたと言う。
西村兼文著「壬生浪士始末記」に因ると雨とされているが16日が雨だったとする記録がある様で、あるいは16日だったのかも知れない。
酷く蒸し暑い夜だったと言う。

島原・角屋でしこたま呑み、前後不覚のまま屯所に戻って、妾であったお梅と床に就く。
平山五郎も同部屋で情婦と眠っていた。

水戸出身で尊王敬幕攘夷論者。
攘夷の名の下に商家の土蔵を焼き討ちするなど過激な

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建築のジェノサイド

建築のジェノサイド

少し前のことだけれど、ネットの記事を拾い読みしていた時、Newsweek誌レジス・アルノーという人の「建築のジェノサイド」に気付かない日本、というコラムを読んだ。

元シャネル日本法人の社長であって先頃イオンの社外取締役に就任したリシャール・コラス氏の言葉を引用しつつ、日本の古い街並みが急速に失われつつあることを嘆く記事だ。
記事によればコラス氏は長年鎌倉で暮らしていて、古都に対する思い入れは人並

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高瀬舟(2012)

高瀬舟(2012)

森鴎外による「高瀬舟」はお読みになった方が多いのではないだろうか。
安楽死についての問題提起だとしたりする解説を能く見かけるのだけれども、僕は以下の一文が印象深い。

僕も何時の間にか折り返しを過ぎた。
不惑と言う様な年齢になっても、一向に心が穏やかになる事が無い。
今更己の人生に言訳を繕ってみても詮方ないが、矢張り僕は喜助ほどの器量も無い。
常に枡一杯の欲を持ち、それで足らなければ、更に大きな枡

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六道の辻(2014)

六道の辻(2014)

落語では妻の墓所は高台寺にあって、「それもそのはず墓所は『子、大事 ( こうだいじ )』」とサゲる。
お伽話ともつかない様な話のデティールが実際に在る不思議さ。
僕が感じる京都の魅力はそんな所にもある。
( 写真は上から、1. 六道珍皇寺、2. 小野篁冥土通いの井戸、3. 井戸の縁起書、4. 六波羅蜜寺、5. みなとや )

寺田屋(2014年)

寺田屋(2014年)

(ぼくの記事は昔書いたブログの記事を再掲することが多く、そのため場所や時系列などが現在ぼくが生活している状況とそぐわないことがあるので、これからはタイトル後に書いた年を入れていこうと思う)

歴史に興味のない人でも1度や2度は「寺田屋事件」というのを聞いた事があるのではないだろうか。
場所が伏見なので京都の華やかな辺りからは少し離れていて、足早な京都観光では行きにくいのかも知れない。
伏見は明治天

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路地

路地

京都は路地である。
路地といってもいろいろあるが、これは広い方の路地。
祇園であるのでお茶屋さんが多いのだけど、ここにちょっと貫禄のあるご婦人の和服姿は好いものである。
すっと背筋を伸ばして、少しも暑いなどという表情はしない。
矜持であろう。

昔は各地にこういった路地があったと思うが、戦災やら何やらでなくなってしまって、ちゃんと残すための努力をしている街だけに残っているのだろう。

人がようやく

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龍安寺

龍安寺

龍安寺は日本の京都にある臨済宗妙心寺派の寺院で、その名を知られた枯山水の石庭が特に有名である。この石庭は世界遺産に登録されており、白砂と15個の石だけで構成されたシンプルなデザインが特徴となっている。

この庭のデザインは禅の精神を象徴しており、見る人に深い精神的な感動を与えるとされている。また、どの角度から見ても15個の石のうち1個は必ず隠れて見えないように配置されているという特徴がある。
この

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ようおこし

ようおこし

京都に限らず、古い街の魅力は路地にある。
水を撒いた路地に猫。
出来すぎ。

ごばんちょ

ごばんちょ

水上勉 の「五番町夕霧楼」は、水上がよく知る「センナカ」辺りの遊廓を舞台に、実際にあった金閣寺放火事件をテーマに1962年に発表された小説である。
読んだのは随分昔の事だったと思うが、三島由紀夫の「金閣寺」を読んだのと粗同時期であったので、その関連性からも強く印象にあった。

「遊郭」と言うキーワードにノスタルジーを感じるのは、もしかしたら水上の美しい文章のせいかも知れない。
ぼくもかつて、ほんの

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子育て幽霊

子育て幽霊

ある夜の事。

店仕舞いを終えた飴屋の雨戸を叩く音がする。
主人は何事かと
「どちらさんで?」
と応える。
雨戸の向こうでか細い声がする。
「飴を一つ売って下さいませんか」
こんな夜更けに一体 … と思いながら、主人は雨戸を開けた。
店の前には青白い顔をして髪をボサボサに振り乱した女が独り。
一瞬ぎょっとしたが、それでも女は一文銭を出すので
「一つでよろしいので?」
と聞くと女は何も言わない。

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宵五ツ時

宵五ツ時

坂本龍馬はそれまで定宿としていた寺田屋が幕府側に目をつけられているというので、11月3日に蛸薬師にある醤油商近江屋新助宅に移った。
11月13日、御陵衛士伊東甲子太郎が訪ねてきて、暗殺の危険があるから三条の土佐藩邸に移ったらどうかと勧めたが、坂本は近江屋に留まることにする。
11月15日、坂本31歳の誕生日である。夕刻に中岡慎太郎が近江屋を尋ねる。
近所の書肆菊屋(中岡の定宿)の鹿野峰吉が、中岡か

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逍遥

逍遥

2012年から2014年にかけて、京都に仕事をいただいていて、その間ずいぶんあちこち写真を撮った。

京都は父親が旅行好きだったせいもあって、子どもの頃からよく連れていってもらっていたので、割と馴染みのある町だ。

町中はこんな路地が多くある。
路地というよりも抜け道といった感じだが、途中は昼でも真っ暗になる。
どこに抜けるのか分かっていないと、ふと不安になるような暗さだ。

仕事の合間なのであま

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