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パリのビストロにて
田舎から列車とメトロを乗り継いで、待ち合わせのビストロへ。
Aちゃんは、もう先に来ているかしら。
今日は早起きして、列車で日帰り小旅行。
来年には日本へ帰国するAちゃんに逢える、きっと最後のとき。
12時30分。一足早くAちゃんは来ていた。
偶然にも、ふたりの洋服のコ-ディネイトが似ている。Aちゃんは、紺色の麻のブラウスとマスタードカラーの麻のロングスカーに紺色のサンダル。
わたしは紺色の麻のゆったりしたワンピースに、マスタードカラーのサンダル。
なんか、合わせてみたいに、すごく調和している。
一年ぶりに逢えた、やっと逢えた、実現した!
嬉しさに心が震えたけど、なにかを話し始める前に、まずここへ、
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トイレ
長旅だったし、いまのご時世、ちゃんときれいに手を洗わなくちゃ。
そして、外のテラス席のテ-ブルへ。
まず、飲み物を
![画像2](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/57329184/picture_pc_faa3baedd95e14440e88d540d328ef32.jpg?width=800)
フランスの自然発砲炭酸水、CHATELDON。
生産量が少なくて、レストランでも、あまりみかけない稀な水。美味しい。
![画像3](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/57329449/picture_pc_a0b090fd5fd455c6fba373f6956e56b8.jpg?width=800)
ワインリスト。
Aちゃんはアルコールがダメだけど、わたしは一杯だけ、いただく。
メニューに目を通しながら、話がはずむ。
とりあえず、注文してと。
* * * * *
Aちゃんと知り合ったのは、1995年のこと。
だからもう四半世紀以上におつきあい。20代の頃から今までずっとお互いにいろいろなことを分かち合ってきた。
わたしは、友達の数が少ない。少ない方だと思う。
でも、つきあい方がたぶん、濃い。
彼女ともそうだ。離れていても、頻繁に会えなくても、何でも話せる
友達。
その大事な友達が、帰国する。
数年前から少しづづ、準備をしていたAちゃん。
日本へ里帰りするたびに、目的のための勉強やお手伝いをしていた。それを実現するための帰国。
こちらでの仕事のこと、子供のこと、家族の事、自分の親のこと、これから日本で、彼女が守って続けていくこと、明るいことだけではないだろう。でも彼女は自分で決めた。
今までだって、彼女はちゃんと自分で決めてやってきた。心配はないだろう。
でも、わたしは、正直、寂しいよ。
でも寂しくなるよって、言えなかった。なんか言ってはだめなんだって、そう思った。
* * * * *
あ、ワインがきたよ。
![画像4](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/57335340/picture_pc_efb457bd390e9ef9e90d76cf495910a4.jpg?width=800)
Vin de Pays (地酒) 【小さい醜いカモ】っていう名の白ワイン。
グラスワインで、6ユ-ロ。
さぁ、前菜も。
![画像5](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/57335396/picture_pc_53df2b9808e253cf74d1fbe7ec3cada1.jpg?width=800)
手前がわたしの前菜、【完璧なたまご】っていう名の料理。
トマト味のクリ-ミィなソ-スに浮かぶポ-チドエッグ、クルトンとシブレット添え。キリっと冷えた白ワインと。
Aちゃんのは、アスパラガスの冷製ポタージュ、フェタチーズ添え。
そして、メイン。
![画像6](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/57335450/picture_pc_b03429630cbb44f3823425abdfc2e751.jpg?width=800)
サ-モンのグリエ、ズッキーニ添え、香草とオリ-ブオイルソース。
あ-、旬の夏野菜、ズッキーニ!
* * * * *
Aちゃんも、ちょっと寂しそうにみえた。
いろいろあったけど、フランスって国が好きなんだよね。
でも、話しているうちに、Aちゃんに夢があるって知った。それもフランスと関係のあること。
そうなんだ、じゃあ、日本での毎日の生活、楽しめるよって思った。安心したよ。応援する、きっとできる、実現する。
そろそろ、デザートだね。
![画像7](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/57335571/picture_pc_a8f004212e9e66cc9d086e289468e35c.jpg?width=800)
Aちゃんは、メロンとフランボワーズのフル-ツプレ-ト。
わたしは、ア・ラ・カルトから選んで、サバラン。
フランス語で【ババ・オ・ロム】ラム酒がたっぷりのサバランとバニラ風味の生クリーム添え。
フランスのビストロやレストランは、営業時間が、きっちりと決まっている。お昼は12時から14時30分。
お客さんは、食事が終わると14時30には席を立つ。
座っていた席が外のテラスだったからか、閉店の時間が過ぎても、お店の人からは何も言われなかった。
だから、ずっとおしゃべりできた。誰もいない二人だけのビストロで。
「わたし、あなたにさよならを言わなくちゃいけない」
普段、フランス人が別れ際によく言うセリフ。
でもね、わたしはそう言わないよ。
いつものように、「じゃあ、またね」
これだけ。
Aちゃんも、「じゃあ、またね」と。
なんだかね、最後じゃない気がする。
また、いつか、きっと逢える。
* * * * *
ビストロ 【Au bon coin】オ・ボン・コワン
パリ5区にある1904年創業の古き良きビストロ。地元の人がよく食べにくるカジュアルな雰囲気。
新鮮な季節の素材を使ったシンプルなフランス料理の店。日替わりお昼のコースは、前菜、メイン、デザートのセットで15ユ-ロ90、又は、19ユ-ロ90。
季節のお昼のコ-スは、同じく前菜、メイン、デザートのセットで27ユ-ロ、又は、32ユ-ロ。各コ-スとも、3.4種類の前菜、メイン、デザートから選ぶことが出来る。
ビストロ 【Au bon coin】
rue de la collégial 75005 Paris
最寄り駅,メトロ 7番線 les Gobelins
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