子どもの幸せ④(自己肯定感)誇りを持たせる
ウサギ仙人(ウ仙)から子どもの幸せの最後の要素となる自己肯定感について伝授してもらっていた亀子であったが、
ウ仙「前回の続きになるのじゃがな。自己肯定感と一口に言っても、段階があってな。自己肯定感は一足跳びに行けるわけではなく、まずは自尊心から始まるんじゃが、6段階あるんじゃ」
自己肯定感の段階
①自尊心
②自己受容
③自己効力感
④自己信頼
⑤自己有用感
⑥自己決定
亀子「へー細かく分かれているんですね。なんか仏教の六波羅蜜みたいですね」
ウ仙「難しいことをよく知っておるじゃないか。六波羅蜜で言えば、まさに自己肯定感というのは『彼岸』ということじゃな。『布施』『持戒』『禅定』『忍辱』『精進』『智慧』という修行を経て、『彼岸』にたどりつくじゃろ。同じように自己肯定感も①~⑥を段階的に経て、たどり着くものなんじゃ。仏教の修行に例えて言えば、自己肯定感というのは『悟り』みたいなもんじゃな」
亀子「いい例えですね」
ウ仙「なんせ自己肯定感というのは、他人の目に左右されず、自分で自分のことを『価値のある人間だ』と思えることじゃからな。『悟り』と似ておるじゃろ」
亀子「そう聞くと、自己肯定感を持つのは大変そうな感じになってしまいますが・・・子どもに『悟り』を拓かせるってね」
ウ仙「いやこれも一つ一つトレーニングしていけば誰でもできることなんじゃ。ドラクエでも『悟りの書』を持っていれば、誰でも賢者に転職できるじゃろ?」
亀子「逆に遊び人だと『悟りの書』が要りませんね(笑)」
ウ仙「まぁいずれにしても一番初めは『自尊心を育てる』というところからスタートじゃな」
亀子「前回の話も自尊心でしたね」
自尊心は自分に誇りが持てること
ウ仙「自尊心というのは『自分が大切にされている』と感じることなんじゃが、もう一つ『自分に誇りが持てる』という意味も持っておるのじゃ」
亀子「誇り?」
ウ仙「そうじゃ。たとえば、大谷翔平がアメリカのメジャーリーグで活躍したという話を聞いたら、同じ日本人として誇りを持てるじゃろ?」
亀子「今年はホームラン王に輝きましたものね」
ウ仙「自分と同じ民族の血が流れている人がヒーローになれば、自分も同じ国の一員として誇りを感じるのじゃ」
亀子「なるほど」
ウ仙「他にもな、自分の先祖に英雄がいると知ったら、誇りに感じるじゃろ?」
亀子「そうですね」
膨大な先祖の中にはヒーローもいるし、悪人もいる
ウ仙「ところでおぬしは先祖は何人おるんじゃ?」
亀子「私の先祖ですか?お祖父ちゃん、お祖母ちゃんは合わせて4人ですね。それ以上は私が生まれた時には死んでたのでわかりません」
ウ仙「おぬしが生まれてくるには、お父さん・お母さんがいて、そのお父さん・お母さんが生まれてくるにはそのお父さん・お母さん、つまりお祖父ちゃん・お祖母ちゃんがいたじゃろ?」
亀子「そうですね」
ウ仙「お祖父ちゃん・お祖母ちゃんが生まれてくるにも、そのお父さん・お母さん、いわゆるひいお祖父ちゃん・ひいお祖母ちゃんがいたはずじゃ。こう考えていくと、10代さかのぼれば約1000人、20代さかのぼれば約100万人、30代さかのぼれば約10億人の先祖がいることになるんじゃ」
亀子「30代前って、仮に1代30年として900年前だから、藤原道長・頼通の時代に、日本の人口って10億人もいたんですか?」
ウ仙「10億人のうち何人もの子どもに関わっている者もおるから、正確には10億人全員が別々の人間というわけではないがな。しかし日本全体の人口に近い先祖がおるんじゃ。それだけいれば、一人くらい歴史に名を残すような英雄もおるじゃろ?」
亀子「おそらくいるでしょうね。歴史の教科書に載っている人が一人くらいいるのかな」
ウ仙「逆に一人くらい極悪人もおるかもしらんの」
亀子「そっちのほうが確率が高そうな気もしますが・・・」
自分の先祖にヒーローがいると教えるほうが自尊心は高まる
ウ仙「子どもに教育をするうえでの話じゃが、
①あなたの先祖に国を代表するような人がいたのよ。あなたはその血を引いているから、将来必ず国を代表するような英雄になれるのよ
②あなたの先祖に国中がみんな迷惑するような極悪な人がいたのよ。あなたはその血を引いているから、迷惑しないように慎ましく生きなさい
この2つのどちらの話をしたほうが、子どもは自尊心を持てると思うか?」
亀子「①のほうがよさそうですね。ドラクエで『勇者ロトの血を引きし者よ』って王様が言うところからスタートですものね」
ウ仙「その通りじゃ。誰にでも先祖はたくさんいるんじゃが、中にはいい人も悪い人もいるんじゃ。しかし子どもの自尊心を考えた時には、いい先祖の話を教えたほうが、自分に誇りが持てて自尊心が出てくるんじゃ」
亀子「なるほど」
ウ仙「思春期になると、リストカットする子がいるじゃろ?自分の親や先祖の醜い部分を知ってしまい、自分の中に同じ血が流れているのが嫌になって、傷をつけてその血を流し出そうとしているんじゃ」
亀子「えーー!そうだったんですか」
ウ仙「それくらい自分の中に流れている血がいいか悪いかということは、子どもの自尊心に大きな影響を与えるのじゃ」
亀子「具体的にどうすればいいんですか?」
偉人伝は先祖の中のヒーロー話
ウ仙「偉人の話なんかを教えるといいんじゃよ」
亀子「偉人?」
ウ仙「とくに日本人で、世界で活躍した人の話なんかを教えると『同じ日本人』というカテゴリーで自分に誇りを持てるようになるな」
亀子「どんな人がいいんですか?」
ウ仙「たとえば、おぬしは先の大戦の時、リトアニアのカウナスでユダヤ人にビザを発給して6000人の命を救った杉原千畝なんかは知っておるか?」
亀子「岐阜の八百津町出身の方ですよね」
ウ仙「よく知っておるじゃないか」
亀子「小さい頃にテレビで見たことがあります」
ウ仙「これは人物ではないが、1890年に和歌山の串本沖で遭難したエルトゥールル号の話は知っておるか?」
亀子「金剛と比叡でトルコまで送って行った話ですよね」
ウ仙「よく知っておるじゃないか。『坂の上の雲』の主人公の一人である秋山真之はこのどちらかの船に乗っていったそうじゃの」
亀子「世界で活躍した日本人の話を教えればいいということなんですね」
ウ仙「他にもいっぱいいるんじゃが、それはまた別の回でゆっくり取り上げることにして、今回は子どもに誇りを持たせるには、いい先祖の話をしっかりしてやることじゃということで終わっておこう」
亀子「はい、わかりました」
こうして亀子のレベルが上がった。
亀子は『悟りの書』を手に入れた。(つづく)
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