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子育ては思い通りにいかないもの

ウサギ仙人(ウ仙)から子どもを幸せにする方法を学んできた亀子であったが、

亀子「子どもが最近言うことを聞いてくれなくって困っているんですが・・・」

ウ仙「おぬしの子どもは何歳じゃったかの?」

亀子「3歳になりましたね」

ウ仙「ちょうど言うことを聞かなくなる年頃じゃからな」

亀子「そうなんですか?」

ウ仙「こんな話があるんじゃ」

あるリンゴ農家に一人の息子がいた。その息子の名前はジョージと言った。ジョージはそろそろ職業を決めないといけない年頃であったため、父親はジョージに自分の仕事(リンゴ農家)を継がせるかどうかを決断しないといけない時期に差しかかっていた。
「これからの不安定な世の中で、ジョージをリンゴ農家にすることがジョージの幸せにつながるだろうか・・・」
父親は悩んだ末に、ジョージの職業適性を調べてみようと思い、ジョージが出かけている間に、彼の部屋に以下の三つの物を置いておいた。
①聖書
②1ドル札
③リンゴ
もしもジョージが部屋に帰ってきて、一番初めに『聖書』を手にすれば、ジョージは牧師になればいいだろう。
また一番初めに『1ドル札』を手にすれば、銀行マンになればいいだろう。そしてもしも一番初めに『リンゴ』を手にすれば、堂々とリンゴ農家を継いでもらおう。父親はこう考えたのであった。

亀子「で、ジョージは帰ってきて、どれを一番初めに手にしたのですか?」

ウ仙「おぬしはどれじゃと思うかの?」

亀子「う~ん。やっぱり親子なんだから、ジョージはリンゴを手にして、リンゴ農家を継ぐんじゃないかと思いますね」

ウ仙「結果はこうじゃったんじゃ」

「ただいま!」と家に帰ってきたジョージが部屋に入っていった。しばらくして父親がジョージの部屋をノックして「ジョージ、いいか入るぞ」と中に入っていくと、ジョージは聖書をお尻にしいて、机の上でリンゴをかじっていたのだった。父親が「ジョージ、1ドル札はどうした?」と聞くと、ジョージは「知らないよ」と言って、実は1ドル札をふところの中に隠していたのだった。

亀子「どの職業が合っているかわからないじゃないですか」

ウ仙「『その後ジョージは政治家になりましたとさ』と話は締めくくられておるんじゃ」

亀子「ええー!これって1ドル札っていうからにはアメリカの話ですよね。政治家は人間的に礼儀知らずでお金に汚いっていうのは、日本の話だけではないんですね」

ウ仙「まぁいわゆる政治家という職業を揶揄する逸話じゃな。しかしこの話を別の角度から見ると、

子どもは親の用意した選択肢とは違うものを択びがち

ということじゃな」

亀子「なるほど、そういう見方もできるんですね」

ウ仙「たとえば小学生に四字熟語の問題を出すじゃろ。」

問.次の〇に漢字を入れて、四字熟語を完成させよ
〇肉〇食

亀子「弱肉強食ですよね?」

ウ仙「ところが小学生の中には『焼肉定食』と答える子もおるんじゃ」

亀子「親的には恥ずかしいですね」

問.次の〇に漢字を入れて、四字熟語を完成させよ
無○○中

亀子「ええ!小学生にこんな問題出していいんですか?」

ウ仙「そんな変な問題か?」

亀子「だって『無理心中』なんて、指導要領的に小学生に教えていいんですか?」

ウ仙「いや、教科書的な正解は『無我夢中』じゃぞ」

亀子「あれ???」

ウ仙「おぬし、心が病んでおらんか?」

亀子「いやー・・・」

問.次の〇に漢字を入れて、四字熟語を完成させよ
〇光石〇

亀子「これは大丈夫ですよ。『電光石火』ですよね」

ウ仙「中には『出光石油』と入れる子もいるんじゃよ」

亀子「ガソリンの価格が上がってますからね・・・」

ウ仙「おぬしの『無理心中』も含めて、教科書的な正解とは違う答えであっても、四字熟語にはなっておるな。むしろ既存の答えとは違う斬新な回答とも言えるかもしれん」

亀子「『無理心中』と答えてしまったことも含めて、親的にはもし授業参観で自分の子どもがこう答えたら、恥ずかしいですね」

ウ仙「その考えが子どもの選択肢の幅を狭めてしまうのじゃよ。

成長意欲を高めるには選択肢の幅を拡げること

じゃと言ったじゃろ」

亀子「そうおっしゃってましたね」

子育てというのは、親の思い通りにいかないくらいがちょうどいい

ウ仙「とくに子どもが成長するにしたがって、親の用意したレールからは大きく外れていくこともあるじゃろう」

亀子「なんか寂しいですね」

ウ仙「その第一歩がちょうど3歳くらいに始まるのじゃよ」

亀子「そうなんですね」

ウ仙「そのあたりのことはまた詳しくやろう」

亀子「よろしくお願いします」

こうして亀子はレベルが上がった。
亀子は「無理心中」の呪文を忘れ、「無我夢中」の呪文を覚えた。(つづく)


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