子育ては思い通りにいかないもの
ウサギ仙人(ウ仙)から子どもを幸せにする方法を学んできた亀子であったが、
亀子「子どもが最近言うことを聞いてくれなくって困っているんですが・・・」
ウ仙「おぬしの子どもは何歳じゃったかの?」
亀子「3歳になりましたね」
ウ仙「ちょうど言うことを聞かなくなる年頃じゃからな」
亀子「そうなんですか?」
ウ仙「こんな話があるんじゃ」
亀子「で、ジョージは帰ってきて、どれを一番初めに手にしたのですか?」
ウ仙「おぬしはどれじゃと思うかの?」
亀子「う~ん。やっぱり親子なんだから、ジョージはリンゴを手にして、リンゴ農家を継ぐんじゃないかと思いますね」
ウ仙「結果はこうじゃったんじゃ」
亀子「どの職業が合っているかわからないじゃないですか」
ウ仙「『その後ジョージは政治家になりましたとさ』と話は締めくくられておるんじゃ」
亀子「ええー!これって1ドル札っていうからにはアメリカの話ですよね。政治家は人間的に礼儀知らずでお金に汚いっていうのは、日本の話だけではないんですね」
ウ仙「まぁいわゆる政治家という職業を揶揄する逸話じゃな。しかしこの話を別の角度から見ると、
子どもは親の用意した選択肢とは違うものを択びがち
ということじゃな」
亀子「なるほど、そういう見方もできるんですね」
ウ仙「たとえば小学生に四字熟語の問題を出すじゃろ。」
亀子「弱肉強食ですよね?」
ウ仙「ところが小学生の中には『焼肉定食』と答える子もおるんじゃ」
亀子「親的には恥ずかしいですね」
亀子「ええ!小学生にこんな問題出していいんですか?」
ウ仙「そんな変な問題か?」
亀子「だって『無理心中』なんて、指導要領的に小学生に教えていいんですか?」
ウ仙「いや、教科書的な正解は『無我夢中』じゃぞ」
亀子「あれ???」
ウ仙「おぬし、心が病んでおらんか?」
亀子「いやー・・・」
亀子「これは大丈夫ですよ。『電光石火』ですよね」
ウ仙「中には『出光石油』と入れる子もいるんじゃよ」
亀子「ガソリンの価格が上がってますからね・・・」
ウ仙「おぬしの『無理心中』も含めて、教科書的な正解とは違う答えであっても、四字熟語にはなっておるな。むしろ既存の答えとは違う斬新な回答とも言えるかもしれん」
亀子「『無理心中』と答えてしまったことも含めて、親的にはもし授業参観で自分の子どもがこう答えたら、恥ずかしいですね」
ウ仙「その考えが子どもの選択肢の幅を狭めてしまうのじゃよ。
成長意欲を高めるには選択肢の幅を拡げること
じゃと言ったじゃろ」
亀子「そうおっしゃってましたね」
子育てというのは、親の思い通りにいかないくらいがちょうどいい
ウ仙「とくに子どもが成長するにしたがって、親の用意したレールからは大きく外れていくこともあるじゃろう」
亀子「なんか寂しいですね」
ウ仙「その第一歩がちょうど3歳くらいに始まるのじゃよ」
亀子「そうなんですね」
ウ仙「そのあたりのことはまた詳しくやろう」
亀子「よろしくお願いします」
こうして亀子はレベルが上がった。
亀子は「無理心中」の呪文を忘れ、「無我夢中」の呪文を覚えた。(つづく)
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