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総額4,750万円のデットファイナンス(融資)に成功〜エクイティーではないベンチャーの資金調達法〜

2023年度下期、きらぼし銀行、西武信用金庫、日本政策金融公庫、東京厚生信用組合からの借入により総額4,750万円の資金調達を行いました。サービス開始2年目の創業期にして一部金融機関からは無保証のプロパー融資を実現、これまで累計7,500万円は全て融資での資金調達(デットファイナンス)となり、エクイティー(株式による投資家からの資金調達)での資金調達なしでベンチャーを立ち上げたことになります。今回の資本政策の意図や今後の資本政策に対する考え方などシェアできればと思います。
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デットファイナンスのメリット・デメリット

デットファイナンスとは銀行などの金融機関から借入を行うことによる資金調達方法のことです。
メリットデメリットとしては以下になります。(エクイティーファイナンスのメリットデメリットはその裏返しになります。)

メリット①:株主が増えず報告業務/稟議が最小化できるので、迅速な意思決定ができる
メリット②:既存株主(佐々)の株(取り分)が希薄化せずモチベーションを保ったまま事業運営に集中できる

デメリット①:(ビジネスモデルによるが)創業時は数百万円〜3,000万円ほどしか調達できず先行投資に回せる金額に限りがある→スケール型のビジネスを描きづらい
デメリット②:世間的にニュースには成り辛いので注目を浴びず営業・採用への波及効果を生み出し辛い
※そもそも(最近のベンチャーデッド以外基本的には)黒字化していないとデッドは難しい

なぜASEAN HOUSEはデットファイナンスなのか?

上場を目指すのでいずれにせよ株主は増えることになる。よっぽど低バリュエーションでエクイティーを行わない限りメリット②はそこまで気にする必要はないのですが、とはいえ自社株を売るということは自分の右腕を売るくらいのことだと考えており容易にエクイティーで調達するのではなくなるべく行けるところまではデットファイナンスで頑張って、バリュエーションが上がった状態で、必要なタイミングで、エクイティーを入れていきたいというのが基本的な考え方です。今後、「外国人も暮らしやすい社会を創る」というビジョンに向け日本での外国人材紹介だけではなく、中国などのこれから人手不足となる国での移民紹介ビジネス、外国人版のSmartHRや越境版のビズリーチ、移民向けの送金プラットフォーム、スーパーアプリ構想など様々お金のかかるタイミングが控えているので、このタイミングでエクイティーを入れている場合ではないというのが本音です。

それより弊社にとって重要なのはメリット①の「迅速な意思決定ができる状態作り」。そもそもベンチャー企業はPMF(プロダクトマーケットフィット)に向けて何度もピボット(事業の方向転換)を繰り返し、そこの迅速性が成功の鍵を握るのでステークホルダー(株主)は少なければ少ないほど良い。
そこにプラスして、コロコロ変わる外国人業界の法令・仕組みが拍車をかけます。昨年は、弊社の紹介する労働者レイヤーの特定技能ビザを持つ外国人は永住権まで繋がるものとなりました。(9業種の特定技能2号の創設)これにより向き合うマーケットが2倍、3倍と膨れ上がりました。そして、つい数ヶ月前は弊社の紹介する特定技能ビザの適用範囲が運送業、林業、木材産業まで拡大するという方針も固まりました。

そして、今まで認められていなかった介護業の中の訪問介護業も紹介可能となりました。

潜在マーケットが拡大する一方で、運用面での懸念(離職率増加、治安の悪化など)も噴出しており今後ライセンス要件が厳しくなったり制度が縮小されたりすることも考えられます。またミャンマー人に関しては、内政不安定→出国停止の流れも直近になって急浮上し紹介が突然できなくなる可能性も高まっているなど、クロスボーダーで仕事をする分国際情勢の波を受けざるを得ません。そうなった際に大事なのは、大手ができないような迅速な意思決定が出来て一早く市場ニーズのキャッチアップができるかどうかです。(そういう意味でこの黎明期の外国人業界はベンチャー向きと言える)その迅速な意思決定を担保するために、現在の創業期はデッドファイナンスに拘り続けています。

ミャンマーでは不安定な状況が続く

また、ビジネスモデル的にも赤字を掘ってJカーブを描くものではなく、寧ろ紹介翌月(内定翌月)には受入企業様からすぐに入金頂けて支払サイトが短く(キャッシュフローが良い)単月黒字は2年目に入って早々に達成していたので、そこまでお金に困っている訳ではないということが正直なところです。とはいえ、急成長を目論み営業や採用など、先行投資を行うのであれば資金が必要でデットファインナンスは必要ということになります。
デメリット②の見せ方の部分は確かに痛手ではあるものの、今回のようにプレスを自社で打ったり言語化してNoteで発信するなどは可能ではあるし、エクイティー以外の営業・採用手法も存在するのでそこを最大限活用することでそのデメリットは解消できると考えました。

デットファイナンス成功に向け行ったアクション

デットファイナンスで行く、となっても通常は売上高が大きくないベンチャー企業、特にその創業期で多くの資金を調達するのは難しいことがほとんど。少しでも多くの融資を頂くために行ったいくつかのことを紹介したいと思います。

綿密な事業計画の作成

事業ごとの売上、コスト、収益、利益率などをシートに落とし込みました

創業期のベンチャー企業において、未来の事業計画は変数が多すぎてなかなか言語化・資料化が難しいのですが、それでも過去の実績や競合他社の状況などからキーとなるような事業係数は割り出し、できる限り具現化して事業計画を資料に落とし込みました。事業の構造をフロー図にし、どこの係数をいじりたくて資金調達をするのか?どこの係数が高いことが弊社の強みなのか?などわかりやすく表現できたのもポイントです。

事業シナリオは3パターンを用意しました。
最高シナリオのA(市場シェア率5%),通常シナリオのB(市場シェア率3%),最悪シナリオのC(市場シェア率1.5%)を用意し、それぞれのシナリオに対して、どの程度のお金がどのタイミングで必要なのか?どのくらいの社員の採用しなければならないのか?など細かく設計しました。

わかりやすい資料の作成

「金融機関も多くの融資案件を抱えており、そこまで細かく・膨大な資料を読み込んで頂く時間はないはず」と考え、大事なポイントに絞り込みより単純明快な資料の作成を心がけました。事業には愛が詰まっているので、多くの情報を詰め込みたくなるのですが、ここが味噌な気がします。

金融機関とのこまめなコミュニケーション

資金調達直前になっていきなり金融機関の担当者へ連絡を取り、熱くプレゼンされても都合良く見えてしまうだけ」と周りの経営者から伺っており、何かにつけて連絡を取るように心がけていました。(できていない金融機関もありますが….)取引先や仕入れ先との関係性構築と同じように、頻繁な連絡が功を奏します。
融資を検討している知り合いの経営者がおれば、取引金融機関を紹介したり、新規事業開始などのプレスを打つ際はそちらのURLをメールで共有したり。
もちろん事業の性質や業績などによって融資のほとんどが決まってしまうのかもしれないですが、金融機関の担当者様も一人の人間であり、どのようなコミュニケーションを取るかで少しでも有利な条件の融資が頂けるのであれば努力は惜しむべきではないと考えました。

金融マン目線の獲得

日頃からスタートアップ界隈の投資家などと話してばかりいると見落としてしまいがちだけど、金融機関が大切にしていることが沢山あります。

・バリュエーションより目先の利益
Jカーブを描き「如何に大きなビジネスを想像し何百倍のリターンを投資家にお返しするか」が大事なエクイティーファイナンスとは違い、デットファイナンスでは「如何に返済不能にならないか」が最重要となります。つまり、長期より短期での収益性が重視され、より安定感のあるビジネスモデルが好まれる傾向にあります。人を採用したり、資本を投下してから売上が上がり利益を上げるまでのリードタイムが短いモデルである必要があります。弊社の今までのビジネスが如何にリードタイムが短いのか?リードタイムを短くするためにどんな工夫をしているのか?などを丁寧に説明しました。
また、月毎に現預金残高をシミュレートして記載し、返済可能な状態にあることを明確化するよう心がけています。(向こう3ヶ月分のコストが払える金額が現預金としてあることが理想らしい)
※債務超過(企業の負債の額が資産の額を上回っている状態)であれば基本的にはデットファイナンスは難しいとされる、特にプロパー融資は難しいとされる。

・社内稟議を如何に通すか
金融機関は大きな組織であるため、多くの稟議が想定されます。その稟議で伝言ゲームのような形となってしまわないと担当者の方に明確に弊社の事業を理解いただけるよう、スタートアップ業界で多用される過度な横文字の使用は避けたりしながら明快な資料と共に毎回プレゼンの時間をしっかりと頂きました。そして、稟議を上げた際に上司の方がどんなに時間がなくても「これだけ見て頂ければ大丈夫」というペライチを冒頭に用意しました。

ベンチャーに優しい金融機関様とのネットワーク

上記でも申し上げていたように、より大きな事業を成し遂げたいが故の創業時の赤字が大きいスタートアップにおいて、目の前の利益を重視される金融機関からのデットファイナンスは相性が悪い傾向にあります。しかし、最近は少し様相が変わってきており、タイミーさん(下記リンク)などベンチャー企業だとしてもデッドファイナンスでの調達も増えています。

みずほさんはスタートアップ向けデットファンドを創成しています。

スタートアップの事業モデルへ理解があり、利益だけでなくその他の事業KPIを重視して頂ける金融機関としっかりと粘り強くアプローチし関係性を構築できたのも今回の成功要因だったと思います。今回の資金調達では計15社の金融機関さんとお話をさせて頂きました。

フル活用した制度融資

上記のアクションを取ったとしても、他の企業に比べればベンチャー企業の創業期の財務状況は厳しさしかないと思います。
それでも、日本という国はそんな財務状況でも手を差し伸べてくれる素晴らしい制度が沢山あります。ミャンマーやインドネシアで事業を起こした経験もあるので日本のこれらの制度の有り難みが身に染みるほどわかります…途上国ではこのような制度は全くなく、担保(土地)を持っていなければ銀行からの融資なんてもっての他。借りれたとしても大体利子は年利10-20%とかです。金持ちにしか挑戦する権利が与えられていないのが途上国です。
隅々まで制度を調べ、今回利用させて頂いたのが以下の3つになります。

・日本政策金融公庫 創業融資
こちらは創業融資制度で一番有名かもしれません。政府系の金融機関であり、最近は更なる条件の緩和が発表されています。ある程度の信用があれば全然1,000万円とかでも借りれるはずなので、世の中のサラリーマンが「まずはお金を貯めてから…」と言っている理由がよく分かりません…笑
こちらの創業融資で累計3,000万円お借りしています。

・西武信用金庫 S-wish
こちらはかなりマイナーかもしれませんがかなり好条件。ソーシャルな事業であれば申し込みできて最大1,000万円。しかもプロパー融資なので無保証です。こちらで1,000万円お借りしています。

・女性・若者・シニア創業サポート
女性か若者かシニアであれば、最大1,500万円まで東京都の指定する信用金庫から融資をいただけます。信用金庫により融資の降りやすさはかなり変わるそうなのでそこは情報戦。(詳細はお問い合わせください)こちらで1,500万円お借りしています。

・保証協会
借入する金融機関の保証を創業保証として、東京信用保証協会が肩代わりしてくれますよという制度。今回私はこちらは利用しておりませんが、過去に1,000万円ほどこちらの制度を利用させて頂いております。

今回の資金調達により成し遂げたい未来

今回の4,750万円の融資は基本的に全て採用費用、人件費に費やしていきたいと思います。
弊社の外国人紹介事業は既に世の中で高収益が実現できると証明された日本人紹介事業を「外国人版」へ置き換えたもの。もちろん言語もバッググラウンドも異なる「外国人」を紹介するのは簡単ではないものの、今までにないようなスキームを社会で普及させる高難易度のビジネスモデルではないと考えています。その分、創業2年足らずで200社を超える受入企業、350人を超える外国人の紹介を実現し、ビジネスフローも固まりマニュアル類の整備も進み基盤が整ってきました。具体的に言えば、社員が1名増えてオンボーディングを終えれば約140万円/月の売上がほぼ確実に計算できる体制、アセットが整っています。

しかし、「人材紹介ビジネス」はスキーム構築が簡単な分、構築できてからの事業の伸びはそこまでなく、スケール型ではなく労働集約型です。事業を伸ばすには、如何に同じクオリティーの業務を担保できる社員を増やし続けられるか、組織を創っていけるかが鍵となります。

※スタートアップ業界を中心にプラットフォーム型(スケール型)がカッコ良いとされる風潮があるが実際は下記のように儲かっている会社は労働集約型が多い。高い車を如何に多く売るか、センサーに如何に付加価値をつけて売るか、服をどれだけコストを抑えて売るか。如何に強い組織を創り、高単価商材を再現性高く売ることができるかが大きなビジネスを創るにおいては実際は大事。言い方は悪いが「ヒト」は何よりも高く売れる商材であり、どんな企業でも必ずや必要とされるし、これからの人手不足時代では尚更である。

ビジネスが一回転する仕組みをある程度整えられた今のASEAN HOUSEが更に社会にインパクトを与えられるようになるには、「如何に組織を大きくできるか」だと思っています。
2024年度中に従業員数は100人、来年度は250人に伸ばすことを想定しそれと共に売上も6億円→20億円と着実に伸ばしていく構想です。

上述したように、シナリオAでは2027年度中に市場シェア率5%を目指します。(2024年度:0.4%→2025年度:1.24%)
リクルートでもHR業界の市場シェア率は9%との数字も出ているので我々は外国人マーケットにおいてその約半分である5%を目標に置きました。外国人斡旋業界がM&A合戦になる前にマーケットを取り切り、メルカリさんのように独立系の会社としてしっかりと市場を勝ち抜いていきたいと思います。
マーケットシェアを取り切ることができれば、業界発言力が大きくなります。まだまだ「これおかしくない?」と思うような法令やしがらみが沢山存在する中で、マーケットリーダーとして業界の発展へと寄与し「日本に来て良かった」と思ってもらえる外国人を増やしたいと思います。新興国の台頭もある中で賃金も高くない日本が世界で勝ち抜くただ一つの道は、日本の良いイメージを、良い評判を増殖させ「賃金」だけではない価値のある国にすることだと思います。そうでないと日本人の労働力も集まらない、外国人の労働力も集まらない、終焉していく国になってしまう。

「日本に来て良かった!」と言ってもらえる未来を創りたい。

ASEAN HOUSEの今後の資金調達について

これからも金融機関からは追加融資という形でお世話になりつつ、1〜2年後にはエクイティーでの資金調達も視野に入れています。
ただ、上述の通り生き残るために絶対に資金が必要という訳ではなく、「攻めのエクイティー」となる訳なので条件のよい資本家からの資金調達となります。弊社によって「条件が良い」とは様々ありますが、主には「如何に事業シナジーを生める資本家から資金調達ができるか」だと考えています。
売り先である受入企業から投資を受け多くの外国人受け入れ窓口を確保できる、なのか、多くの受入企業のネットワークがある企業から投資を受けクロスセルとして弊社の外国人紹介サービスを沢山顧客へ紹介し弊社の営業力強化に一役買ってもらう、なのか。現場職かつ人事部とネットワークのあるHR系の事業会社が相性が良いのではないかと思い、既に動き出してもいます。

株式会社ASEAN HOUSEでは一緒に働く仲間を募集しています!

今回の資金調達の目的は「仲間」の総数を増やすこと。
現在様々なポジションで共にチャレンジしてくれる仲間を募集しています!少しでも興味をお持ちの方は、ぜひ、採用情報をご覧ください!

【簡単な仕事概要】
・「外国人労働者失踪者1万人」という社会課題に向き合い、「妹を学校に行かせるべく仕送りがしたい」と我武者羅に頑張る東南アジア人を支援する手触り感のあるソーシャルな仕事!
・新規事業を連続的に立ち上げているベンチャー企業なので裁量権が無限大。最大速度で成長できる!(新卒2年目でインドネシア支社立ち上げマネージャー登用実績あり)
・東京/インドネシア拠点で外国人社員比率40%のグローバルスタートアップ。グローバルな視座で仕事ができる!
・リクルート出身かつミャンマーで100万人メディアを創り売却したグローバル連続起業家直下で“社会正義”דそろばん”経営が学べる
・年間260%急成長の移民マーケットに挑み、松屋やギンビスなど大手含む200社以上と取引、350人以上を斡旋。
*RAメンバーは入社後半年以内にインドネシア現地入社研修がございます。(日本語学校見学/出前授業、ローカルホームステイなど)

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