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「何を考えているか分からない」 ASDと失感情症(アレキシサイミア)について

 今回の記事はスタンドFMで話した内容です。アレキシサイミアとASDの関連性とそれに付随する僕の体験談をnoteでも触れていきます。

 実はお便りをいただきまして、内容は「ASDの子はあまり自分の感情が分からないように感じる」といったご質問でした。これについて文献と僕の経験から考えていこうと思います。
 
 結論を言いますと、ASD当事者には「自分や他者の感情への気づきや情緒的な共有が困難」といった生活機能上の特性があります。
 僕が持っている「精神障害と作業療法」という、三輪書店から出されている本にも、自閉症スペクトラム障害の生活機能上の特性という項目に、社会性の特徴の一つとして「自分や他者への感情への気づきや情緒的な共有が困難で、周囲が理解、共感しにくい感情状態を示すことがある」と書かれています。

 そして僕としては、アレキシサイミアとASDの関連についても何らかの要因があるのかなと思っています。
 青山学院大学の米田英嗣 先生が発表された論文「発達障害を持つ成人の併存障害を予防するための国際共同研究」の内容にアレキシサイミアについての解説があります。

 まずアレキシサイミア特性というものは何かについてですが「自分の感情を表現する言葉を見つけるのが難しいというパーソナリティ特性で、日本語で失感情症‥感情がないと訳されることがあるのですが、正確には感情がないのではなくて、感情に気づかない症例です。この症例は(中略)「自分自身の感情に対する気づきが弱く、自分の感情に気付かないので、従って他者に対する共感を示しにくい症状」であるといったことが言われています。
  自閉スペクトラム症の人の約40%がこのアレキシサイミア特性と持っているということで、自閉スペクトラム症の人が感情について気付きが弱いという症例があるかと思うのですが、それが自閉スペクトラム症そのものの症例なのか、あるいはアレキシサイミアが付随していることによって見られる症例なのかといったことは、しっかり認識していく必要があるのではないかと考えられています。

 

 僕の半生を振り返ると「何を考えているか分からない」と言われることがよくありました。それはおそらく表情や感情表現の乏しさなどが影響していると思います。また、小説を理解するのが苦手で、国語では評論文は得意でしたが、小説は登場人物の気持ちの読み違いが多く、なかなか点数が取れませんでした。

 自分の経験からですが、自分の感情に気づけないことで一番困ることは、いじめや悪意、ハラスメントの察知が遅れることです。一般的にはそういう状況になれば、その場の非言語的なものを察して、自分の不快な感情を言語化して対策を立てる方向に結びついていくでしょう。
 しかしASDを抱えていると、そもそも人の意図や感情を察するのが苦手で、さらに感情の言語化が困難で、困り感があっても言葉として表出できないことで、状況の整理にすら行きつかず、ずるずると悪い状況のままに陥りがちです。そして言語化が困難なことでストレスが身体化する傾向があり、例えば僕の経験では吐き気、頭痛、ひどい肩こり、歩行障害が起こり、ストレスが体を通して出てきました。

 つまり、日常生活に明らかに支障が見える状態になって、気づいた時には既に薬物療法が必要な状況まで追い込まれてしまう傾向を感じます。ただ我慢のしすぎで治療が遅れるとさらに回復が遅れるので、異常を感じた時点でもちろん受診に踏み切った方が良いですが、普段から言語化を試みることで、考えを「見える化」して状況の整理もできるようにすると良いかと思います。

 ASD当事者の自分の気持ちや状況の言語化を促す試みは、一つの治療のポイントだと思いますが、まだまだ僕自身もどのような過程を踏むのが最適解なのかが掴めていないです。
 
 以上で今回の内容はここまでとなります。

 最後までお付き合いいただきありがとうございます。

【参考・引用文献】


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