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ゆず愛
2020年5月22日 20:53
「なんでなん?なんで私が母親の結婚式のバージンロード歩かなアカンのさぁ!」結婚式の前日の夜である。優子は、吉田との結婚には反対しなかった。むしろ、あんな素敵な人に出会えた母が羨ましい程だ。「もう何度も話し合ったやろ!私の家族は、あんただけや。まさか父親を天国から呼ぶ訳にも行かへん。」優子の祖父母はもう既にこの世に居ない。優子が3歳の時祖母が病死。祖父は、1人で田舎で暮らしていたが、畑仕事
2020年5月21日 10:57
「優子、あなたにあって欲しい人がいるねん。あんた、丁度会社休みやろ?」母は、ハニカムように私の顔色を伺う。これはもしや、「また、恋人でも出来たんか?」と、ため息混じりで答える。さらに上目遣いに私を見るはは。「恋人やなくて、婚約者や!」「なに?それどういうこと?それも世間は、非常事態が発生してるのに。」そう、私の母は、いつも突拍子のない行動に出る。母には持病があり入退院を繰り返し
2020年5月31日 23:11
その日の午後の事だ。「田中さん、ちょっと!」上司に呼び出される。何事かと思うが、ミスをした覚えもないし、うーん。足取り重く、上司の後に続き、別の部屋へ行く。考えこんでいる私に、「田中さん、ちょっと悪いんだけど、部署異動してもらえる?」頭の中が混乱状態に陥る。「どういうことですか?私何かみすしましたか?」上司は首を横に振る。が、笑顔の中の瞳は真剣だった。 「ここだけの話。噂だから、
2020年5月31日 16:06
母からのLINEはいつも単純明快なものだ。多分スマホを使いこなせないから、短文で済ます。「妊娠した」マジか!とおもうが、男女二人同じ屋根の下。歳は離れていても夫婦だ。当然の成り行きだろう。私はその場で母に電話をかけた。「優子、LINE見た?」声がどことなく不安そうだ。 「どうしたん?もう吉田くんに話したか?」少し間が空いて、「まだや!だって、あまりにびっくりして、どう言えばいいか分
2020年5月31日 10:53
携帯アラームはいつも通り6時に鳴った。ソファーの真一郎は毛布を顔まで被り、まだ眠っている。また昨夜も寝ながら、爬虫類の話で盛り上がった。外はまだ暗い。エアコンをつけて、彼が眠っている間に、サーっと着替えを済ませ、キッチンに立つ。牛乳と卵をまぜ、そこに固くなったトーストを浸した。コーヒーメーカーに豆と水をセットしてスイッチオン。朝は「グアテマラ」酸味とフルーツのような香りの上にコクがある。フ
2020年5月30日 14:50
コーヒーの香りで目を覚ます。鼻先でこれはマンデリンだなとおもう。少し苦味とコクがあるが、ハーブのような香りが脳内細胞を目覚めさせる。私はベッドから起き上がり、時計を見る。午後4時をとっくに回っていた。隣のキッチンで誰かがコーヒーを入れている。寝ぼけて回らない頭をフル回転させた。そうだ、明け方まで真一郎と爬虫類の話で盛り上がり、いつの間にか眠ってしまったのだった。私が、起きたのに気付いた真一郎
2020年5月29日 20:44
私たちが家に帰り着く頃には、日がどっぷり暮れていた。アパートの鍵を開け、そそくさと中にはいり、玄関のライトをつける。「寒い!すぐにエアコンつけるからね。早く入って!」遠慮がちに、中にはいり、靴を脱ぎ、脱ぎっぱなしの私のパンプスまできちんと揃えたあと、ケージと、リュックを背負ったまま、中に入る。「お邪魔します。」玄関のすぐそばがユニットバスと小さな下駄箱、そこを通り抜けると、3畳ほどの広
2020年5月28日 18:31
爬虫類カフェ「ネバーランド」次の土曜日の午後、真一郎と待ち合わせ、ちょっと今後の打ち合わせをしようという事になっていた。私は、先に到着し、「カナヘビパスタ」という奇妙な名前のパスタを注文し、一人ランチを食べ彼の来るのを待つ。約束の時間10分前に、大きなリュックを背中に背負い、手にはイグアナを入れたケージ見るからに怪しい格好で現れた。「優子さん、来るの早いね。まだ来てないかと思ったよ。」
2020年5月27日 20:15
「こんな平日の午後で仕事の方大丈夫だった?」真一郎が少し心配そうに聞く。「大丈夫だよ!私普段無遅刻無欠席で、有休が沢山残ってるから。」私は笑顔で応える。真一郎は私の言葉を聞き笑顔を見て、安堵の表情を浮かべ、少し躊躇う表情で私の瞳の奥を見つめ、言葉を選びながら「優子さん、実は君にお願いしたい事があるのだけど、僕の願いを聞いてくれませんか?」「は?突然何?喋る言葉も敬語になって。」私は戸惑
2020年5月27日 09:30
コーヒーのイグアナの絵にすっかり圧倒させられ、飲むのが勿体なくてずっと眺めていると、「早く飲まないと冷めちゃうよ。」顔をあげると、真一郎が笑顔で私を見つめる。彼はと言えば、もう半分パフェを食べ終えていた。「だって、あまりに巧妙な絵なので見とれちゃって。」一口すする。コーヒーのほろ苦い味とミルクのまろやかさが心を満たしていく。「ここ凄いね。」私は店の中をぐるっと見渡す。ケージの中に蛇やトカゲ
2020年5月26日 20:13
あの非常事態宣言が、全国的に解除になり半年が過ぎた。街もすっかり落ち着きを取り戻し、季節は、夏から晩秋へとうつろい、街路樹の銀杏も黄金色に染まって、時折冷たい風がすーっとコートを羽織った体をすり抜けていく。半年前は、ほとんどの人がマスクをして外を往来していたが、今、あの頃がなかったかのように、共に笑い合い歩く人、スマホを片手に営業に向かうひと。ごく普通の平日の午後。私はスマホで、時間を確認す