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モアツ(インド)2018


Ao Naga アオナガ族

 ナガランド州のモコクチュン(Mokokchung)はナガ族の一支族であるアオナガ族(Ao Naga)のエリアだ。ナガ族はインドからミャンマー国境付近まで分布するモンゴロイドの少数民族。見た目でいうとかなり日本人に近い。様々な民族の住むインドの中でも最も日本人に近いような気がする。ラダックの方にもチベット系のラダッキが住んでいるが、チベット系はややずんぐりした体形が少し多いような気もする(?) そのことを考えると多分一番外見が日本人的な人が多い州だろう。ここら辺一帯は基本的に山岳地帯でそれぞれの部族は山などで遮断されており、部族ごとに社会を守る生活が続いていた。ここでいう守るというのは生活を維持するという意味ではなく、生命である。もっと端的に言うと人間の首そのものだ。というのは、ナガ族は他部族の首を狩ることで自部族の繁栄を得ると信じていたためである。かなり最近の50年ほど前まで首狩りは行われていた。他部族の首を狩ることで力が得られ部族の豊作繁栄をもたらすとされ、男たちの通過儀礼の一つだったようだ。50年ほど前であるから村の長老には若い時に首狩りを経験した者もいまだに生存しているくらい最近なのである。

 ナガ族にはそれぞれ部族の祭りがある。普通は民族によって祭日は決まっているものだが、ナガ族に関してはなぜか部族によってかなり日程は違う。五月の初めには今回のアオナガ族の祭日がある。ナガ族は現在ほとんどがキリスト教徒なので祭りはだいたい西暦に基づいて行われる。

 

 

Moatsu  モアツ

 アオナガ族の祭りはモアツ(Moatsu)と呼ばれる。好戦的な色彩の強いナガ族の祭りは半裸のナガ戦士達が槍と盾を手に踊る。おそらく昔は他部族を襲撃する前後に踊ったのがベースなのではないだろうか。

 

 

初日

 まずはウングマ(Ungma)という地域から始まる。このUngmaというところはナガ族の発祥の地とされ、ナガ族にとっては特別な聖地だ。このUngmaには屋根付きの体育館みたいなところがあり、この中で賛美歌によって幕が開ける。館内に美しいコーラスが響き渡り、館内周囲の様子がなければこれは教会のミサといっても誰も疑わないだろう。しかし、いかつい民族衣装を身にまとい手に蛮刀を握りしめている戦士達の目の前で歌われる賛美歌というのは完全なミスマッチ感この上ない。この平和的ムードの歌に戦闘的な踊り、完全な雰囲気のギャップがあるのだが、後からキリスト教が入ってきて文化が上塗りされてしまったからしょうがない。キリスト教が入ってこなければ、きっと賛美歌ではなくナガドラムで激しいリズムの上に戦士達の雄叫びで式が始まったのかもしれない。賛美歌の後は若手のナガ戦士達の踊りでシンプルに締めくくられた。この日はどちらかといえばちょっとした前夜祭的な感じで観光客もほとんどいない状態であった。


翌々日(本祭)

 翌日には何もなく、翌々日に祭りのメインとなる大勢のナガ戦士達の踊りがある。会場はモコクチュン(Mokokchung)の中心から車で30分ほど離れた広場だ。この日は初日とは全く違い大勢の観客でにぎわっていた。そしてキリスト教的なイベントは全くなく、完全なナガスタイルで行われる。この日は早めに会場入りにした。それが結果的には大ラッキーで、彼らはリハーサルで踊りなどしている。本番だと結果的には近寄れなかったので、リハーサル時の周りに観客が少ない目の前での撮影はとても助かった。踊りは予想どおり槍や盾を手にした戦士を彷彿させるもので、なんといっても見どころはジャンプして盾をぶつけ合う肉弾戦だ。しかしながら残念なのは踊りの時間は短く、式の大半を占めるのはなんとエライさんの挨拶なのである。これにはちょっと辟易した。昼頃には式そのものは終了し、ナガ料理が無料で振舞われる。これは好みが分かれそうだがインド料理とは全く別物だ。発酵系のものが使われているので東南アジア的な香りがするものの、味付けはかなりシンプルな印象を受けた。ランチタイムにはナガの昔の生活再現ショーが行われる。昔の織物の様子や昔ながらの遊びなどが披露されお開き状態となる。


 個人でここに行く場合、この会場はちょっと難しいかもしれない。Mokokchung市内にタクシーそのものの数がとても少ない。少ないというか見ることがほとんどない。そしてなんといっても祭りの帰り、普通の祭りであれば帰り客をゲットしようと出口付近でタクシーの運ちゃんたちが列をなして「ヘイ! タクシー?」と声をかけてくるものなのだが皆無だった。したがって市内に戻るならヒッチハイク的に誰かに乗せてもらうしかないのかも。

 正直いうと本祭の踊りの時間が短くちょっと物足りなさを感じるものの、なかなかこのような民族の祭りはそう簡単にお目にかかれない。ホーンズビルフェスの方が有名なのは事実だが今回のMokokchungの方が田舎過ぎて観光化されていないので外国人は極めて少ない。秘境、民族系がお好きでゴールデンウィークにどこに行こうかなと悩んでいる人には悪くはない。ただもう一つの問題はなんといっても雨がかなり多い。この時期は完全な雨季の真っ最中で今回の行程でほとんど毎日雨が降ったのである。本祭の日にも小雨ではあるが降った。大雨になるかもというリスクもあるので、それを覚悟の上で運に任せて行ってみるということになる。

 


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