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#1)写真史-ストレートフォトグラフィの周辺

ストレートフォトグラフィ(Straight Photography,20th初頭):それは芸術の1つのジャンルとして、写真を取り込んだ。

写真の創成期から、考える時、写真の創成期は、ダゲレオタイプの発生の前夜からだろう。
学際(がくさい)という言葉があるが、それは、知の共有だが、まさに、その時代は、その状況だった。
それまで、画家の仕事は、カメラ・オブスクラで肖像等を描く事であったが、それが、化学(写真化学)の発展から、画像を定着できるようになった。

当初の感光材料はアスファルト等々であったが、基本的には、ハロゲン化銀での湿版、乾版、そして、フィルムへの定着となる。ネガティブな画像、反転させて、ポジティプにして、過去の瞬間が、あたかも真実であるかのように、よみがえる。

ダゲレオタイプ
ダゲレオタイプによるパリの街

その方法論は、当初は、ピクトリアリスム(pictorialism-19-20th初め)と呼ばれた。それは、絵画的な写真表現を追究していた。
そのピクトリアリスム(pictorialism)は、写真技術の科学者と写真技師は、同様のテリトリーだったが、芸術としての写真を目指す方向性を目指した。この視点は、学際だが、ただ、本来、ダゲレオタイプの時代からも、写真家は画家であった。また、その「リンクト・リング」(Linked Ring-London)グループが、著名だった。いわゆる、フォト・セセッション(Photo-Secession)の運動である。

それから、しばらくして、絵画の枠から、離れた、芸術のテリトリーの1つとして、写真という表現形式を確立していく、流れが発生した。
それは、ストレートフォトグラフィ(Straight Photography)と呼ばれた。

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具体的には、写真を絵画とは、別のメディアとして、その写真ならではの特性・機能を重視して、写真に新しい表現形式を確立された。
それは、作家の主観を排除した客観的表現(ストレート)に視点を当てる姿勢は、モダニズム(1920年代のアート前衛的な動向-美術史を前提とした客観の確立)に対応するだろう。
主には、アメリカ合衆国の戦前の傾向かも知れない。
その中でも「Group f/64」が著名だ。
ストレートフォトグラフィ作家としては、ランダムになるが、エドワード・ウェストン(Edward Weston)、ポール・ストランド(Paul Strand)、アルフレッド・スティーグリッツ(Alfred Stieglitz)、アンセル・アダムス(Ansel Easton Adams II)、ドロシア・ラング(Dorothea Lange)、ウォーカー・エヴァンス(Walker Evans)、ベレニス・アボット(Berenice Abbott)、アンリ・カルティエ=ブレッソン、そして、H・アッジェ(Jean-Eugène Atget,パリの克明な記録)…このあたりを探ると書き切れないのだが、大きな1つの流れとなった。

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(c)Ansel Easton Adams II

「Group f/64」の名称と技術面:そのf/64とは大判カメラ(8×10inch/8by10)における最小の絞り(アイリス)の値のことだ。
(註)写真や映画のカメラから、フィルムへの露光は、絞り値(f値-アイリス)とシャッタースピードで決まる。
最小の絞り(f64)という事は、最大の*被写界深度を保つ事で、ごく前景も背景も均一にピントをを合わせる事(シャープに撮る)である。
この事は、精密な即物的な造形美が得られる。そして、この表象方法は、ストレートフォトグラフィの哲学だった。

このストレートフォトグラフィの後、写真ジャンルは、多様なロジックを持ちながら、その多様性のもとに、そして、グローバルに展開した。
このドキュメンタリー写真の展開を促し(うながし)、そして、ポップ・アート(社会史を前提した表象)が盛り上がった1960年代に、ストレートフォトグラフィは一時的には、衰退したように見えたものの、1970年代以降は、インスタレーション(や、コラージュ)などの記録メディア(広範囲の前提エリアから表象)のとして、あらためて、脚光を浴びたと言えるだろう。

このストレートフォトグラフィによって、写真という表象が、アートの1つとして認識された事は大きい、そして、写真を撮るという行為、そのものにもロジックが発生して行った。
「なぜ撮るのか?」という事だ。そして、「何を撮るのか?」

ただ、美術史は後から語られるように、写真史もそうだろう。全体像を体系的にまとめるのには、多様性を極め過ぎるようだ。
それらの流れを鑑みても、ストレートフォトグラフィというロジックの発生は、あまりに大きな1つのポイントだ。

(註)*被写界深度:ピントを合わせた部分の前後のピントが合っているように見える範囲のこと。絞り値(F値)、レンズの焦点距離、撮影距離(被写体とカメラの距離)ができる。

次回は、写真史-ストレートフォトグラフィの現在形(デジタル時代)


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