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#3 「LGBTQ+を理解はできなくても、受け入れられる社会にしたい」 トークセッション/カノンさん

カノンさんプロフィール


皆さんはじめまして、大学生のカノンです。私は、不定性Xジェンダーとパンセクシュアルの当事者で、主にヒューマンライブラリーで「私」についてのお話をしています。私に興味を持ってくれた方と一緒にお話できる日が来ることを楽しみにしています。


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パンセクシャルで、不定性Xジェンダーである、カノンさんとトークセッションを行い、用語の説明から始まりカノンさんが考えていること、感じていることをシェアしていただいた。


カノンさんは、タフでしなやかな方。

語れない人の代わりに語る人が語ること。
カノンさんの生き方に救われる人がきっといると思う。

場を和ませるような柔らかいトークをしてくださった花音さんだが、お母さんへのカミングアウトや、担任の先生のアウティングについてお話しているときは少し語気が強まったのがうかがえた気がした。
シスヘテロの人にカミングアウトは必要ない。カミングアウトが必要のない社会を目指したい。アウティングは今の社会構造が生み出している問題。これが問題とならないような社会にしないといけない。

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Kari(以下K):こんにちは、はじめまして。本日はよろしくお願いします。Art Lab Philiaの運営のKariです。

カノンさん(以下カ):はじめまして。現在大学3年生のカノンです。はじめに自分がどんな属性か伝えたほうがいいんですかね笑 私のセクシュアリティはパンセクシュアルと不定性のXジェンダーです。今日はみんなと楽しくお話したいと思います。よろしくお願いします!

K:ご自身のセクシュアリティについて紹介していただいてもよろしいですか?

カ:パンセクシュアルとは、漢字にするとわかりやすいんですが、「全性愛」と訳され、「全てのジェンダーの人に性的欲求や恋愛感情がもてる」人のことを指す。男性でも女性でも、またそのどちらでもない人に対しても、恋することができる。もちろんトランスジェンダーの人も含まれます。相手がゲイでも、その人が私を受け入れてくれるなら付き合いたいというかんじ。相手のことが好きなら好き、人を愛するに当たって性別を意識強いないことが特徴です。
バイセクシュアルとの線引きが難しいとされています。バイセクシュアルは「両性愛」と訳され、男性、女性という線引きがあります。一方で、Xジェンダーとは、男女どちらの性別にも当てはまらないと自認している人のことを指します。男でも女でもない無性だったり、男性と女性の中心だったり、男性でも女性でもある両性だったりと、幅が広いです。私の不定性Xジェンダーとは、さまざまな性の間で自分の性が揺れ動いているという人のこと、時と場合によって生の割合が変わっていく人のことです。
性自認とは、自身の性をどのように認識しているか、なのですが、日によって、季節によって、恋人によって、性自認が変わるかんじです。言っちゃえば気分です笑
朝起きてワンピースを着たければ、今日は女の子の日だ!となります。最近はメンズ寄りかな、中性とメンズを行き来している感じですね

K:とてもわかりやすいです。ありがとうございます!
パンセクシュアルとバイセクシュアルとの線引きは難しい、とおっしゃっていましたが、カノンさんが自分のセクシュアリティに気づいたのはどんなタイミングだったんですか?時間をかけて気づいていったのか、それとも何かのきっかけがあったんですか?

カ:中1、2のとき、初めて女の子を好きになったのがきっかけでした。それまで小学生のころは男の子を好きになったりしていたので、その時は自分のことはバイセクシュアルなのかなと思いました。女の子を好きになったことに対して否定的な感情はなかったんですが、なんでだろう?と不思議に思ったので、ネットで調べてみました。その頃はネットにセクマイの情報は沢山はなかったし、当時自分が中学生だったこともあって、決定的な情報を掴むことができませんでした。その時に見た記事で今でも覚えてるのがヤフー知恵袋です笑
この時期の女の子は仲間意識やグループ意識が高くて、誰かと一緒にいたい・独り占めしたいという気持ちがあるから、それは恋愛感情ではなくて、独占欲がに近いものだよ、とありました。
その時は、「へーそうなんだ」と思いましたが、今は、なんやあの記事(笑)って思ってます。
それが自分がセクマイに該当しているなと思ったことで、パンセクシュアルと不定性はもっとあとから自認しました。その時は女の子も好きになれるんじゃなくて、女の子の方が好きかもと思いました。今も女の子の方が好きです。

高校3年生の受験期にpixivという漫画やイラストを投稿するサイトのコラムを読んだのがきっかけになっています。大学のAO入試を受験したのですが、評価対象が面談とプレゼンでした。高三のとき杉田水脈議員の「LGBTは生産性がない」それについてプレゼンをしたんですよ。

(ポスターを見せてくださった)

K:いろんな資料を調べていったことで、自分のセクシュアリティを自認したんですか?

カ:受験の時、資料を作るにあたって自分のことを知らないといけないと思いました。その流れでネットのいろんな記事を読みました。でも最近になって当時読んでいた記事を見たら不定性という言葉は書かれてなくて…私はどこで気づいたんだろう、どこでその言葉と出会ったんだろう…でも、ネットでその言葉を知らないと気づけないので、Xジェンダーって幅広いんだよというネットの記事を読んで、調べようと思ったんだと思います

K:知識がある上で自分で判断していくかんじなんですか?

カ:自分がどれに該当するとか悩むと思うんですよ。悩んでいても、クエスチョニングという言葉を知らなければ、自分でクエスチョニングと名乗ることもできないし、悩んだら調べるしかないかな…みたいな

K:パンセクシュアルに自認して、困ったことやよかったことはありますか?

カ:大学入学後に、みんなと仲良くなるための合宿があったのですが、大浴場のお風呂に入る時に困りました。みんなでお風呂に入るのが嫌だったんです。自分の裸も見せたくないけど、自分が他人の裸を見るのも申し訳なかったんです。過去にも似たような経験をしたことがあったので、みんなとお風呂に入らなくて済むように、ドライシャンプーのような、お風呂に入らなくてもいいグッズを持っていって、大浴場を使いませんでした。
あとは、アンケートの性別欄に丸をつけるときですね。あんまり男・女どちらかに大きく振れることはなくて、基本的に中性があっての男・中性があっての女という感じなので、どちらかに丸をつけるのに、私は抵抗がありますね。あとはプールで水着も着たくないですね。
最近セクマイの友達たちにバーベキューに誘われて、あまり乗り気ではないので断っていたのですが、その会費制の内容が、「水着で行くと500円引きになる」でした。何それ?と思いました。着たくなかったですね。セクマイ界隈で集まってるのに、その指定をするというのはどういう感覚なんでしょうか。気持ちがわかるはずじゃないですか。同じセクマイで集まるのに、配慮ができないことに驚きました。

K:そのコミュニティはセクシュアリティがそれぞれ違ったんですか?

カ:はい、そうです。

K:セクマイの人たちが集まっても、配慮が至らないことがあるんですね。

カ:セクマイで集まるとその人の人間性が見えてきます。セクシュアリティを気にしなくていいので、セクマイの中ではストレートみたいに話せるんですね。色々な話を共有したり。セクマイの友達が増えれば増えるほど、私も配慮できるようになりたいなと勉強になります。

K:コミュニティに入ってから、ジェンダーというものが薄くなっていって、逆に個性とか人間性が強まっていくんでしょうか?

カ:そうですね。セクマイで集まったら、「セクシュアリティは何?」とはあんまり聞きませんね。「あの人好きだな」と気になって、知りたくなったら「好きなタイプは?」などと同じ感じで「セクシュアリティは?」と聞くんですが、基本的には聞きませんね。聞かれるのが嫌な人もいるので。アセクとかノンセクの人は、恋愛感情を向けられるのが嫌だったりするので、配慮をしたい思いも込めて、周りの人づてに聞いたりします。


K:逆に、自認したり、コミュニティに入ったりしてよかったことはありますか?

カ:友達や知識が増えた。困ることはいっぱい出てくるけど、まず最初に自分がセクマイだからといって否定的な感情がないところから、私にとっての普通はこれ、という感じで生きてきたので、よかったことを聞かれると答えるのが難しいです。良かったことはないということではないのですが。

K:自分のセクシュアリティにマイナスなことではないから、通常の上で、困ったことがあるという感じなんですね。

カ:そうですね。あと。恋愛話はちょっとしづらいです。いい男紹介してよと言われたりしても、友達はセクマイの人ばっかりだし、いい男紹介してよと言われるんですね。ストレートの男友達はほとんどいないんですよ。だから紹介すること自体難しいんですが、その流れで、私が「私にも女の子紹介してよ」って言うとなんかちょっと変な感じになるんです。「いやまあまあ」って流されます。笑
しまいにはこの前、「カノンは男の人って駄目なんだっけ」って言われて、「駄目じゃないけど」と返したら、「じゃあ次男の人にすればいいじゃん」って言われて、そういう面は困りますね。パンセクシャルとか、女の子が好きで困っているのはそこですね。

あとね、不定性の方が結構困ることはさっき言ったみたいに多くて、髪を切るのが怖いんです。先日までミディアムくらいの長さだったのですが、一昨日切りました。もう早く髪切りたいという衝動が今までで一番強まって、短いショートにしました。でも、長かった髪の毛がなくなっちゃった!という衝撃で女の子の気持ちに寄っちゃったらどうしよう。

あとは服にお金がかかります。今はジェンダーが男性に寄っているからメンズの服ばっかり買っているんですが、突然女性の方に寄っちゃったら私はどうしたらいいのだろう、と思います。昔髪が長かったころに着ていた服もまだあるんですが、流行に乗り遅れている服たちなので処分したいのですが、まだ処分できないでいます。


K:外側から研究している人には気づけないような細かい気持ちや困っていることがあるんですね。

カ:はい、困っていることはセクシュアリティによっても違うだろうし、同じセクシュアリティでも、困っていることや気にすることは本当に人それぞれだと思います。当事者を呼んだ方が早いです。笑

K:では、次に進みたいと思います。カノンさんは、ご自身のセクシュアリティを公開して活動していると思いますが、カミングアウトやアウティングについて、ご自身の経験がありましたらシェアしていただけますか?

カ:カミングアウトについてはしてもしなくてもいいと思うんですよ。私はしたいからしただけで、セクマイの友達がカミングアウトについて困っていたとしたら、簡単に「言っちゃえよ」と無責任なことを言うことはできませんね。カミングアウトする相手が、過去に私がカミングアウトをしたことがある友達だったら、「私も言えたし、受け入れてくれた相手だから大丈夫だよ」と言えるけど。

でも、その人が自分のセクシュアリティを言えないことが苦痛になるんだったら、仲間を見つけて、その仲間に話すのはいいんじゃないかなと思います。

私がカミングアウトしたことによって、私に「自分もそうなんだ」と言ってくれると嬉しいし、「自分もそうかもしれない」と考えてくれるきっかけになったらいいなと思うから、こうやって発信しているという面があります。

私は「自分のことを知ってほしい」っていう気持ちが強いから、これからもカミングアウトしていきたい、情報を発信していきたいって思っています。

アウティングは本当に難しい問題ですよね。
実は私もされたことがあるんですよ。


K:Facebookでも配信されても発信されていましたよね

カ:はい。受験でLGBTについて調べていたとき、担任の先生に自分が当事者であることを伝えました。今は大丈夫ですが、狭い世界で言うのはすごく勇気が要る行動なんですよね。さらっと自分のセクシャリティを伝えたら、先生は「そうなんだ」と返してきて、悪い反応ではありませんでした。

でも、次の日、担任の先生に「一年生の時の担任に言っておいたよ」と言われました。驚きました。一年生の頃の担任の先生のことは好きだったし、「知られても別にいいかな」とは思いましたが、それは私の気持ちですよね。私が自分のセクシュアリティを伝えるかどうかは、少なくとも担任の先生が判断することではないと思うんです。「私がどれだけ勇気を振り絞ったと思っているの」「簡単にさらっと言ってるんじゃないよ」と思いました。その時はアウティングについて深く考えたことがありませんでしたが、今思うと「そういうことはしちゃいけないんですよ」とちゃんと言えるようになっていればよかったと思っています。「私だからこんなに傷が浅くて済んだんだよ」と思いました。他の人だったらすごく傷つくよと思いました。
アウティングはセクマイの人たち同士でも気をつけないといけないことですよね。私は会ったことないけど、セクマイの人たちと一緒にいても、他のコミュニティでストレートの人として生きるために、自分のセクシュアリティを知られたくないと考えている人もいると思うんですよ。
その人が言わないでとは言っていなくても、言うときは自分から言うだろうから「要らんこと言うなよ」という話ですよね。

K:カミングアウトについてもう少し伺いたいです。カノンさんがご自身のセクシュアリティを初めてカミングアウトしたのは、セクマイの友達だったのですか?それとも両親や先生が最初だったのでしょうか?

カ:多分友達だったと思います。中学の時に、「そういう(女の子も好きになれる)感じかも」って言ったかもしれない…最初は全然覚えてないです…深く考えてなさすぎて覚えてないんですよ笑 その時は全然気にしていなかったので…
親にもカミングアウトをしています。うちは4人家族で、両親と妹がいるんですが、お父さんだけには言えていないんです。自分の知識が足りていないというか、父親に否定的なことを言われたときに、返せる力が私にまだないなと思っているからです。いつ言えるのかなあと思っています

K:お母さんと妹さんにはもう伝えたんですか?

カ:そうですね。お母さんには、受験の時に一度軽く言っていて「ああそうなんだ、ふーん」と返されました。すごく勇気が必要だったけど、そうやって受け入れてくれる感じで良かったなと思いました。でも、大学に入ってから調べて、改めて自分が不定性Xジェンダーでパンセクシュアルであると自認したため、もう一度ちゃんと伝えるべきかなと思って、離れているお母さんに電話で言いました。

するとお母さんから「私はそれについてよく分からないけど、あんまりそういうことを周りに言わないでね」と言われました。「ああ、なるほどね。そのタイプできたか」と思いました笑。最初のカミングアウトは受験期だったから、私を混乱させないように気を遣ってくれてたのかな、と考えています。今になってそういうことを言っちゃうのか〜と思いましたね。でももう遅かったんだよなぁ笑。もうその時には周りに自分が不定性であることもカミングアウトしまくっていたので笑

お母さんにはちゃんと不定性についても説明しました。お母さんが「周りに言わないで」ほしい理由は、その気持ちがなくなって、元に戻るかもしれないから、だそうです。「セクマイではなくなる時がくるかもしれないじゃん」というニュアンスを感じ取りました。

でも、私は揺れ動いていると言っています。今は男性の期間が続いてるけど、次に長い女性の期間が来るかもしれない。それが10年続くかもしれない。また男性になるかもしれない。そしてまた女性になるかもしれない。それは、戻るとかじゃなくて、その時々で性が確立しただけなんです。私が不定性Xジェンダーであること、パンセクシュアルであることには変わりないんです。

やっぱり親にはもうちょっとちゃんと説明できるようになりたいなとは思っています。でも今は親はもう半分諦めてきたのかなという感じです。でも私は、諦めたというのは悪い意味ではないんです。受け入れるためには、諦めも必要だと思っています。理解して受け入れることは、諦めとは言わないと思うんですね、そして理解できないけど受け入れることができるというのは半分諦めだと思っています。でもそれでいいと思っています。家族だし、他人じゃないから。私は、諦めて受け入れてくれるならそんなにありがたい話はないなあという感じです。

私は4月くらいまで彼女がいて、別れちゃったんですけど、彼女ができたときにそれをお母さんに伝えていました。「ハメはずすなよ」などとからかわれていました。いや、女同士のハメの外し方知らないよと思いながら。笑  妹にも彼女ができたことを言っていました。「まじか」という反応でした(笑)
妹にもカミングアウトしているんですけど、最初にしたのは妹が小学生の時です。妹は5歳下なんですけど、「一回試しに言ってみるか」と思ったのがきっかけです。妹なら何を言われてもいいかなと思って。妹だし。「もしかのんが女の子好きだったらどうする?」と言ったら、「え、ないわ」と言われました。「おいおいそんなこと言うなよ〜」と思いました笑。

私は大丈夫なんです。「きも」などと言われても妹とは離れることができないし。だからそれを私に言うのはいいんですが、もし妹が友達にそう言われたら、そういうこと言っちゃだめだよとしっかり伝えました。小学生だったし、分かってくれたかは知らないんですけど。

あとになって、妹が中学3年生位のときにカミングアウトするとうよりは、お店で「あの女の子可愛くない?めっちゃ付き合いたい」などと言うようにしていました。脳に刷り込ませる作戦です。笑「え、別に普通じゃん」と言う感覚で、「何が悪いの?この前(妹さんも)あの人かっこいいって言ってたじゃん。それと同じことだよ」と伝えていくことにしました。言葉で説明してもよくわかんないよなと思って。
妹が歳を重ねるごとに。なんとなく「カノンはそういう人間なんだな」と分かってくれてるみたいです。今の妹とは、恋愛をリアルタイムで共有できる仲になっています。
家族はそんな感じです。

K:そんなに悪い反応ではないんですね

カ:カミングアウトを受け取る相手の悪い反応は、驚きや知識不足のせいだから、最初はしょうがないと思うんです。他の誰かにカミングアウトされたことがないだろうから。だから、最初が私で良かったなと思っています。私は、悪い反応をされることが想定内なんです。漫画やメディアを読んで、誰かに否定されて悲しい思いをする可能性があることを知っていたからです。だから、そういう経験をする人は、私で留めておきたいと思っています。「私にそう言うのはいいけど、他の人のカミングアウトを受けたら、そんな事は言わないでね」みたいに思っています。

K:メディアや小説を読んで、自分のジェンダーやセクシュアリティはいけないこと?と不安になった瞬間などはあったんですか?

カ:驚いたというか、「え、そんな感じなの?」という感想を抱くことが多いです。新しく恋人ができても、その恋人ができる前に悲しい経験があったから好きを伝えられない、とか、禁断の恋的なあの感じで描かれるじゃないですか、BL本とかと。みんなそんな感じなのかな?自分がそうじゃなさすぎるんです。記事を読んでも、いじめられた経験とか、そういうのが多いですよね。

友達に言った時に否定的な感情を持ってきたのは1人だけだったし…いたけどその人に対しては今は別にもういいやっていう感じですね。でもあんまりよくわかってない感じなのであいつをどうにかしなきゃと思っているんですけど。笑

友達や周りの人に恵まれていたっていうのが大きいと思います。あんまり漫画などのメディアで一般的に描かれる経験をしたことがないので。

周りにいるセクマイの友達は最近やっと自認した人が多くて、小学生のときに気づいていた人はあんまり周りにいないので、そういう人と出会ったら、本当にそういう感じだったのかと聞いてみたいなと思います。


K:なるほど、そうなんですね。先ほどカミングアウトのお話を深く掘り下げましたが、カミングアウトをして、発信していきたいと思ったきっかけは何だったのでしょうか。

カ:最初の情報発信が、私が通っている大学でやっているヒューマンライブラリーの企画だったので、去年から本格的に情報発信を始めたっていう感じです。理由は自分のことを知って欲しかったからですね、こういう人がいるんだよ!みたいな。

だから、ヒューマンライブラリーをやっている教授に、私も本に出たいです!とメールを送って、今も今日みたいな感じで情報発信を続けられています。


K:ヒューマンライブラリーでは、ジェンダーや、病気のことなどについて発信している方がいると思いますが、花音さんが発信を通して新たに気づいたこと、もしくは感じた事はあるのでしょうか?

カ:情報発信をきっかけに、私はストレートの人がどんなことに疑問を持っているのか・どんなことを知りたいのかっていうのに気づくことができました。ストレートの人たちは似ている質問をしがちなんです。例えば、家族にカミングアウトをしましたか?とか、政治についてどう思いますか?とか、困り事はなんですか?とかです。

でもそういうテーマが気になるというのを私は分かっているので、全然同じ質問をされても、また質問の返答も自分のなかで更新されていくだろうし全然いいんですよね。

情報発信を続けることでみんなにセクマイについて知ってもらえるうえに、やっていくうちに自分で自分がどういう人なのか理解が深まります。だからいいことしかないなって私は思っています。


K:ストレートの人たちの質問は多分似ていくんですよね。なんとなく分かります。では、逆に聞かれなくても「これは違うんだよ!」などと自分から発信したいメッセージはありますか?

カ:最近、特に女の子同士の恋愛は美しく描かれ過ぎだと思います。漫画を読んだことがある人は分かるかもしれないんですけど、禁断の恋と描かれがちなんですよね。本だから可愛く描かれる面もあると思います。でも、そんなことばかりじゃない。笑

百合本界隈が大きくなっていったら、どんな話が出てくるかわからないですけど、ドロドロもあるし、普通のみんなが知っている恋愛とおんなじ感じで「何とかの彼氏さ、この前女の人と歩いてたよ」とか全然あるし、そこまで美しい世界ではない。ないよと思う。別に怖い世界ではないけど、セクマイだから難しい問題とかもあるわけで、そんなにきれいに書かないでほしい。勘違いしちゃうから。

K:こういう媒体が美化され過ぎる部分もあるし、ネガティブに描かれ過ぎる部分もあると思います。私の友達もいわゆる腐女子というんですかね。BL本が好きな女の子がいて、だけど話していくうちに、私はBLは好きだけど、現実は無理と言っていた。「なんだろう」と思った。

カ:いますよね。本だからいい、現実は無理。「現実も面白いよ」と思います。現実の話も聞きな〜と思います。

K:これからも発信していくと思いますが、かのんさん自身のこういうことをしてみたい、こんなことを叶えたいという展望はありますでしょうか?

カ:そうですね、、小・中・高校の教室やステージの上で、ゲストスピーカーとしてお話をしてみたいなとずっと思っています。1回だけやってみたいなってずっと思っています。私の小中高時代でLGBTQ+についての講演はなかったけど、昔見ていたそういう講演に憧れがありますね。そういう情報発信を1度でもいいからやってみたいと思います。

K:大学じゃなくて小・中学校を中心にしたい理由はありますか?

カ:大学生になったらそれはもうほとんど大人と一緒で、もう固定観念に縛り付けられていて、それを「違うんだよ」と壊すのは難しいと思うんです。だから、小学生などの柔軟な思考があって、どうにもできるうちに伝えたいです。

実際に講演会をするときに「この子たちはどんな考えをしているのか」というのを私は知りたいです。どれだけアンチ的なことを言われても私は大丈夫だし、むしろアンチ的な意見も言ってほしいと思っています。偏見がある事はしょうがないと思う。だから、どんな偏見を持っていているのかを知りたいです。それが分かったら、どういう風に伝えていくべきなのかということが分かるからです。また高校生になると、恥ずかしがって感想を書かなかったりするから、小学生とか中学生とか、まだ自分の思いをつらつら書いてしまうような年の人たちに向けて、一旦情報を発信したいなと思います。

K:なるほど、素敵ですね。

K:私たちはアートを通して、LGBTQ+シーンについての知識や認識をより多くの人に伝えたいという目標があって、当事者の人たちをはじめとした様々な人たちの意見を取り入れたいと考えているんですが、もし、花音さんが参加者だったら、どのような表現方法がいいとか、どのようなメッセージが入っていたら嬉しいか、入っていてほしいかをお聞きしたいです。

カ:アートの知識がなさすぎて、アートとはって感じなんですが。笑

絵とかだと分かりづらいのかなと思うんですが、現代社会の風刺画みたいなかたちだったら、観た人は考えてくれるし、分かってくれるのかな。伝わりやすいのかなと思いました。伝えるのって難しいですよね。
メッセージとしては、LGBTQ+を理解はできなくても、受け入れられる社会にしたいです。理解できなくてもいいんです。私もストレートなどの自分とは違うセクシュアリティの人の考え方を理解するのはやっぱり難しいし。だから理解はできなくてもいいんだけど、もうしょうがない、受け入れなきゃいけない時代になったよ。左利きも受け入れられたでしょ?理解しあえなくても、受け入れられる社会を作りたいです。

あと、もう一つのメッセージとしては、「普通って何?」ということです。

全員が分かる普通なんてないと思います。なので、「普通」という言葉を使わないようにしていますね。

K:私も当事者の人の話を聞いていると、「普通」には棘のある意味を含む言葉だなと分かってきました。LGBTQ+コミュニティにいる人たちは普通という言葉を使わないですよね。「普通とは何か」って本当に大切なメッセージですよね。

これでインタビューは以上になります。ありがとうございました。





Art Lab Philia



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