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香りの工房。n.9 *調和と幸福のありか。*

今回で香りの工房も最終回。先に植物を100%原料としている製薬会社の博物館へとご案内し、マリア・レティツイアさんのアトリエに戻ります。

前回までのシリーズは、本投稿の一番最後に案内していますので、ぜひお立ち寄りください。

Aboca  アボカ

本社のある土地名をそのまま社名にしたアボカ。あたり一面に咲いていたキンラン草を、土地の人がアビガ(Abiga)と呼んでいたことから、アボカという土地名になったそうです。

2020年に40周年を迎えたアボカ

現在アボカでは、1700ヘクタールの畑に60種類の植物を栽培しています。

自分たちの畑で栽培し収穫した植物で、薬を作る製薬会社。フィレンツェでアボカの商品を置いてない薬局はないほど、普通に置いてあります。

このアボカの博物館が、フィレンツェからアレッツォを通り過ぎ、山を越えた先の、サンセポルクロという街にあります。フィレンツェからは車で約90分の距離。

小さなサンセポルクロ街にある、アボカの博物館。セクションごとに部屋が分かれていて、見応えがあります。

ここは昔のアボカ薬局。クラシカルな木製の戸棚には、薬草や抽出した精油を入れていた容器が並んでいます。

採取した植物や、輸入されたスパイス。

参照:aboca museum

1600年代の製造室を再現したもの。ハーブやスパイスを砕き、調合したり、精油を作るところ。釜戸に火が入るので、部屋は温められ、植物やスパイスの香りで空気は満たされていたことでしょう。

参照:aboca museum

暖炉の壁に飾られている剥製のワニは、植物がすくすく育ち、良薬を作れるようにとの願いと、遠い国へと探し求めて輸入された貴重な材料に対するシンボルです。

ここから向こうは立ち入り禁止。量を間違えれば死を招く危険な薬を調合し、良薬を作るのも薬剤師の仕事。薬剤師の管理する鍵でのみ入れる薬物室です。

参照:aboca museum

実験器具みたい。精油を抽出するためには、どの形で、細さはどのくらいで、長さはどのくらいにしたらいいのか。試行錯誤が繰り返されて、この形になったのでしょう。

当時使われていたガラスの容器いろいろ。

これはなんだと思います?

分銅を入れる容器なんです。
1600年から1700年にかけて作られたもので、ドイツ製。
機能性さえあれば事足りるはずなのに、敢えて手の込んだ装飾をしているところに、心を打たれてます。無名の職人によるもの。

付属図書館には、1700年代に執筆された植物書のコレクションもあります。

とうがらし!
参照:aboca museum

Plantae selectae と呼ばれる、全巻10冊のこの植物図鑑は、ドイツ人の、医師、画家、版画家の3人が協力して制作されたもの。

医師&植物学者
クリストフ・ヤーコブ・トロゥー(Christoph Jacob Trew)

植物画家&植物学者
ゲオルク・エーレット(Georg Dionysius Ehret)

彫刻師&版画家
ヨハン・ヤーコプ・ハイド(Johann Jacob Haid)

マグノリア(モクレン)
参照:aboca museum
ハシラサボテン
参照:aboca museum
パパイヤ
参照:aboca museum

すぐにマリア・レティツイアさんのアトリエに戻ってもよかったのですが、アボカ美術館に展示されている、ひとつひとつが、美しいものばかりなので、ご案内してみました。

機能性があればそれで充分じゃなく、装飾を施すことで、ひとつの道具が完成する。当時の人は、使えればそれでいい。という考え方すら、なかったのかもしれません。

マリア・レティツイアさんのアトリエ

アトリエを訪れ、ルネッサンス時代、修道院の薬草店、薬草美術館と、長い旅をして、再びマリア・レティツイアさんのアトリエへ戻ってきました。

幼い頃の記憶。楽しかったときの記憶。幸せな時間を過ごした記憶。体に記憶されている良い思い出は、香りとも繋がっています。幸せの香りとも言い換えることができるでしょう。

世界は、たくさんの香りに満ちています。現代の生活で自然に身を置くことは難しいですが、身近にある香りの意味を知ることで、そのメッセージを受け止めることができます。

香りの意味

ラベンダー

Lavanda = Lavando = Lavare 洗う。という動詞。古代ローマ時代のテルメ(温泉)では、衛生を保つ効用もあり、ラベンダーは欠かせないハーブ。ラベンダーの花を水に浸して香りを移し、体を洗っていました。

いまでも洗濯洗剤、シャンプー、石鹸など「洗う」用途の芳香剤とし使われているラベンダー。昔も今も「洗う」に関連づけられているのが面白いです。

意外と思われますが、ラベンダーの言葉の鍵は「助ける」。感情が揺さぶれてパニックに陥ったり、不安に苛まされたりするときに、心を落ち着けて、気を取り戻す働きがあります。

フィレンツェで「スピーゴ Spigo」はラベンダーのこと。スピーゴ・トスカーノは濃い香りが特徴で、トスカーナ州にあるラベンダー畑の周辺は、遠くを歩いていても、風に乗って香ってきます。

セージ

Salvia = Salvus = Salvare , Sano。言葉の鍵は「体を回復させる、治る、再生、助ける」。言葉通り、セージは、長い歴史のなかで、常に薬用植物として利用されていました。

幼児キリストを抱きかかえエジプトへ逃亡するマリア様とヨセフ。道中に幼児キリストを、ベルベットのような柔らい葉で隠し寝かせたのがセージと言われています。このことからも、セージには、「助ける」と「再生」の両方の意味があるとされています。

ローズマリー

Rosmarino = ros marinum = mare。海岸沿いに雑草のように生い茂ることから、「海 mare」という言葉を持ちます。

ときは1700年代。70歳を越えたハンガリー国のイザベッラ(イザベル)王妃が、若い王子と結婚したときに、秘薬として使われていたのが、ローズマリー。

グワン!と力が出て、気がついた時には疲れがどこかに飛び去り、新しいことに挑戦するときはやる気に満ち、記憶力もよくなる、超パワーエナジーハーブです。

自分自身に対して、世界に対しての、知識や理解を深めるための扉を開ける香りでもあります。言葉の鍵は「信頼する、信じる」。

ネロリ

ネロリは、ビターオレンジの花から抽出される精油です。

春になると、マリア・レティツイアさんのお庭にはビターオレンジの花が咲き、甘い香りに満たされるそうです。

明るい気分になり、いままで気にも留めなかったものに、美を見いだすことができるようになるの。

言葉の鍵は「美」。小さなことに調和と美しさを見つけることができるならば、わたしたちの世界は平和であることでしょう。

ネオリの香りを吸い込み、しばし嫌なことは忘れてしまいましょう。急がず、怖がらず、 不安がらず。あるべきところに、ちゃんとあり、そうなるところに、ちゃんとおさまっている、完全なる小さな楽園へと、ネロリの香りは、わたしたちを導いてくれます。

ネロラ公国オルシーニ王のもとへ、フランスから嫁いできたアンナ・マリア・ド・ラ・トレモイユ令嬢。なんとも芳しいオレンジの花の香りを纏っています。ドレス、手袋、靴、家具、専属召使い、彼女の身の回りのあらゆるところに、この香りを用いました。ネロラ公妃の香りから、ネロリと呼ばれています。

タイム、月桂樹、バラの香りの意味は、こちら↓をご覧ください。

精油が伝える、調和と幸福のありか。

精油のところで案内した、頭、心、ベース。これは、あたなの、身体、心、魂と連動しています。

あなたの好きな香りを発見することで、あなた自身が自分を癒します。すると、調和と幸せが、世界のどこにでもない、あなたのなかにすでに存在しているのがわかるでしょう。

アトリエの詳細はこちらです。

Aromantique アロマティック
Via dei Macci, 41 - 50122 Firenze

もし精油をお持ちの方がいらっしゃれば、朝にお気に入りの精油を手首の内側に数滴垂らして、お互いをすり寄せたら、顔に近づけ、その香りを感じてみてください。精油が、あなたに今日のメッセージを伝えています。

夜は寝る前に、精油で軽く足をマッサージすると、よく寝れますよ。

マリア・レティツイアさんの言葉より

精油と出会い、インタビューを通して、ほかでは聞くことのできない興味深い話しを伺うことができて、とても刺激的でした。

マリア・レティツイアさんと出会えたことで、世界の見方や繋がりなど、自分の中でなにかが変化したように感じます。

精油とか香りとか、普段の生活ではあまり関わらない世界。アロマを焚いたとしても、香りの意味なんて考えたこともありません。

今回の香りの投稿を通して、読んで頂いた皆様と、精油の力、精油の奥深さ、マリア・レティツイアさんの言葉から、何かしらの気づきを共有できたら、とても嬉しいです。

「香りの工房」シリーズ。
長い間お付き合いくださいまして、
ありがとうございます!

前回までのシリーズは、
こちらからご覧ください。
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