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香りの工房。n.8 *薬局と、薬草店と。*
前回までルネッサンス時代へとタイムスリップしていましたが、今回からは現代に戻り、イタリアの薬草の世界についてご案内します。
前回までのシリーズは、本投稿の一番最後に案内していますので、ぜひお立ち寄りください。
薬局と薬草店の共存
マリア・レティツイアさんにお話を伺っている時、『エルボリステリア(薬草専門店) 』という言葉が発せられました。
イタリアには、製薬会社の薬を販売する薬局のほかに、薬草を専門とするエルボリステリアというお店も存在します。
薬局はファルマチア(Farmacia)、薬草専門店はエルボリステリア(Erboristeria)と、名前も異なり、前者はpharmacy ファーマシー、後者はHerbハーブを扱うところです。
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コンビニのように
街中至るところにあります。
さらに、エルボリステリアには市販されているものや、そのお店オリジナルの精油、ハーブティ、シャンプー類を販売するお店と、訪れる人の体調を聞いて、その人に応じたハーブティをその場で処方してくれるところがあります。
お店の一角に、こんな感じに、たくさんの種類のハーブがあり、その人に合ったハーブをミックスして、ハーブティを作ってくれます。
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海沿いで見つけたエルボレステリアで、足のむくみを軽減するハーブティを作ってもらった時のこと。少し苦味はあるけど、ミントが入っているので飲み味スッキリ。15分ほどお湯に浸してから濾過して飲みます。
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フィレンツェにはカレッジという大きな総合病院がありますが、そちらでも、植物療法科というものがあり、ハーブを使い治療を行います。
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カレッジ総合病院の植物療法の説明。
中国に漢方があるように、イタリアではハーブを使った治療がいまでも薬局とパラレルワールドで存在しているのが興味深いです。
欧州のほかの国はわからないけど、イタリアのようなハーブ医学があるはず。
日本にも古来からの和ハーブがあるし、その国で育つ草木から薬を調合したり、煎じて飲用し体調を整える歴史や文化が、それぞれの国であることでしょう。
製薬されたお薬と、ハーブを調合したお薬と、症状に応じて使い分けができれば、お薬を選ぶ範囲も広がります。
修道院と薬草
紀元前から受け継がれてきた香りやハーブの治療。昔は修道院の庭で栽培し、修道僧が調合していたので、いまでも、教会の裏手に薬草店を併設しているところもあります。
フィレンツェで有名なのは、内装も美しいサンタ・マリア・ノヴェッラ薬局。
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本店
もともとは、サンタ・マリア・ノヴェッラ教会の薬草店だったところです。最近では、フィレンツェのブランド通りと呼ばれる、トルナボーニ通りに出店したりと、大きく手を広げています。
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トルナボーニ通り店
田舎にある大きめの修道院では、薬草室を見学できるところもあります。
Abbazia di Monte Oliveto Maggiore
モンテオリベートマッジョーレ修道院
13世紀に山里離れた森のなかに建てられた修道院。佇むというよりは、堂々とした建物です。
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この修道院は、回廊の壁面にぐるりとフレスコ画が描かれているのが有名で、絵を鑑賞するために訪れるところでもあります。
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いまも修道僧が生活をしており、お昼時間に訪れたときには、食堂室にランチの準備が整えられていました。
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光りを受けた、美しい階段を上がると、図書室と薬草室があります。
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長テーブルに展示されている、かつて使われていた、精油を抽出するガラスの容器。
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細くクネクネしてたり、口の部分がキュッと折れて先細りだったり、当時のガラス工房の技術もすごいです。
忘れてならぬのが、薬草を入れる容器。マヨリカ焼きが定番。フィレンツェ周辺で作られています。
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Comunita' Monastica di Camaldoli
カマルドリ修道院
昔の修道院は、山奥ふかーいところに建てられています。それでも、上述のモンテオリベートマッジョーレ修道院までは、遠いとはいえ、修道院の駐車場に車を入れて、徒歩7分くらいで到着。
カマルドリは遠いのです。山道をひたすら歩きます。登山の域。車でも行けますが、駐車場が少ないので徒歩を勧められます。
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修道院を訪れたあとに山道を、ふんふんふーん。と下っていると、ときには旦那さんを励まし、ときには奥さんの手を取り、ときには子供を抱っこして、ぜーぜーと息を切らした5組中4組に聞かれます。
ねえ、あとどれくらいで到着する?
気持ち分かります。わたしも聞いたもの。森林浴が気持ち良いけど、あと何キロという表示がないので、あとどのくらいで到着なのか、分からないのです。1時間くらい歩いたかな。
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静粛にお願いします。』
森のプレート。
カマルドリは、社会と完全に関係を閉ざした隠修士のための場。奥に見える家には、ひとりひとりが暮らし、対話は神のみ。いまは俗世の人とも対話をしますが、1012年から現役です。
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門には、『Vietato Entrare』立ち入禁止の標識。お昼頃には、野菜スープのような、温かい優しい香りが漂ってきて、お腹が空きました。
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修道院は、案内人が誘導してくれて見学ができるようになっています。
山を登る手前には、博物館も兼ねる薬草店があります。
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立派なお店です。クルミ材の棚は1543年に造られたもの。
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種類、咲く季節、収穫する時期、効用などが記載されている植物書。
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カマルドリの修道僧により、1046年に病院が建てられ、近郊に住む人たちをケアしていました。人を助ける医者や薬剤師の仕事も、修道僧の役割。
ぎゅーっと圧搾して、ろ過しながら、液体を集めていた道具。
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釜戸に火をくべ容器を温め、植物のエッセンスを抽出していた道具がそのまま残されています。
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あまり見かけない道具。1858年と記載されています。釜戸を温めて、外傷用の薬を作る道具。
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湾曲になっている台座にハーブと香油を混ぜて、石材のめん棒で、挽きます。大きい道具だから、かなりの巨人じゃないと一人では無理だと思う。二人組みで挽いたのかも。
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両方の修道院の薬草店では、オリジナル商品を販売しています。カマルドリ修道院に関しては、フィレンツェの薬局やバデイア・フィオレンティーナ教会の付属店でも購入できます。お昼休みがあるので注意です。
今回は2箇所だけを紹介しましたが、昔は、修道院:病院:薬草が繋がっていたので、トスカーナ州はもちろん、イタリア全土に、このような修道院付属の薬草店があります。
奥の深い、植物の世界。
次回が本当の最終回です。
最後まで読んで頂きまして
ありがとうございます!
前回までのシリーズは、
こちらからご覧ください。
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