香りの工房。n.3*香りの治療師*
香りの工房のつづきです。マリア・レティツイアさんが、どのように香りに近づくようになったのか、過去から現在、そして未来へと続くお話を伺います。今回は前半です。
前回までは、こちらからご覧ください。
もとから、香りの世界に携わっていたのでしょうか。
いいえ。わたしは30年間、フィレンツェで建築家をしていました。
まったく違う世界で活躍されていたんですね。
どうして転身されたのでしょう。
ストレス等の要因があってお辞めになったのでしょうか?
いいえ。
建築の仕事が大好きで、収入もとてもよかったわ。
きっかけをお伺いしてもいいですか?
わたしは20代の頃から関節炎を患わっているのですが、痛みから、工事現場に行くことができなくなり、安全靴を履くこともできなくなってしまったの。
仕事を少しづつ減らしていき、外出することができなくなったときは、事務所の仕事をしていました。
最後は、ベッドから起き上がることもできず、なにをすることもできず、ただ時間だけが過ぎていったわ。
あるとき、自然療法士がわたしに聞くの。
そこで、オリーブオイルの入った小さな瓶に、わたしが選んだ精油を3滴加えて、手首や足首につけて軽くマッサージをしました。
特別に良い精油ではなかったので、あまり好きじゃなかったけど、とりあえず試してみたかったの。
治療を続けて3日後あたりから、鼻歌を歌っている自分に気づき、それまでは、腕も足も、背中も、全身が痛くて、動けずにずっと横になっていたのに、ベッドから起きだすことができるようになったのです。
そして、また普通の生活を送れるようになりました。
この経験から精油に興味を持ち始めたのです。
いまも痛みはあるんですか?
いまもあります。
でも、自分でコントロールできるようになりました。
ベッドに横になるばかりで「なにも、言葉通り、本当になにもできなかった」。なのに、ベッドから起き上がり、自分のしたいことができるようになったんです。
昨日までは痛みがひどくて、なにもできなかったのに、今日はなんでもできる。まるで奇跡です。
それから、猛烈に勉強を始めました。
どうして、精油がわたしにこんな作用をしたのか。その理由が見つかるまで、徹底的に勉強したの。
そして、答えにたどり着いたんですね。
そう。ようやく、答えが見つかりました。
それは、わたしが無意識に選んだ精油に隠されていました。
わたしが選んだ精油はタイム。
タイムは「勇気」を表します。
1000年以上ずっと使われている植物には、それぞれに意味があるんです。無意識下で、わたしたちは、植物の作用を知っています。
昔、戦争に向かう戦士は、両手でタイムをこすり、腰に括り付ける風習がありました。「勇気をもって戦う」という意味があったんです。
あなたには、どういう意味があったのでしょう。
わたしの場合は、人生を進むための「勇気」をもらったんです。そして、生き方を変えました。
いまは、心も落ち着いていて、幸せです。あのときのような、出口がみえない不安はありません。
香りひとつで、自分を取り巻くいろいろなことが変わるんですね。
調和や幸福という感情は、どこを探しても見つからないのよ。自分のなかにあるものなので、目を覚まさせなければなりません。植物の力を借りて、それが可能になるの。
香りは鼻から脳へと渡り、脳を刺激して、子供の頃の記憶を呼び起こし、なにが自分を元気にしてくれるかを知らせてくれることもあります。
自分の好きな香りを見つけるということは、自分自身を発見するということ。無意識下で、植物の意味を知っているんです。
助けが必要なときは精油を使いますか?
あまりにも手に負えないような出来事が起きた場合は、精油のパワーを知っているからこそ、敢えて使わないようにしています。
そうじゃないと、わたしの意識とは別に、無意識下でがんばってしまうかもしれません。そんなときは、精油を使わず、なにもせず、流れに任せます。
精油と出会い、世界がガラリと変わったんですね。
はい。
運命といえるのでしょうか?
好きに呼んでいいですよ(笑)
もちろん、わたしの人生で起きたことは偶然ではないでしょう。設計した通りに完成する建築の仕事が好きだったし、収入もいまよりずっとよかったのに。
いまの仕事は、建築の仕事とまったく違います。わたしのアトリエは見つけづらいし、訪れる人は多くないけど、でも、一度訪れたら、戻ってきてくれるのは嬉しいことです。
コロナ禍で特別に行ったことはありますか?
すべての精油に抗菌性があることは科学的に証明されています。ウイルス、真菌、そして粉塵に対しても効果があります。
コロナが蔓延したとき、すぐに空気を清浄する精油作りに取り組みました。いまは4種類の抗菌性の精油を販売しています。
いまのところ、家族は誰もコロナに罹っていません。
そういえば、ロックダウンの規制が少し緩くなった頃に、中小企業促進協会の職人工房見学に参加して、ここを訪れたときは、3月の寒い季節でした。あのときは10人ほどいましたが、このアトリエでは、マスクなしでお話しを伺ったのを覚えています。
後半は、いつものわたしの質問集より、嬉しいと感じる瞬間はどんなときか、タイムスリップするとしたらどこへ行きたいか、好きな場所はどこか、など、マリア・レティツイアさんにお聞きしていきます。
最後まで読んでいただき、
ありがとうございます!
次回につづきます。
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