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こころの自立とサードプレイス 〜かがみの狐城を読んで〜

普段は参考書なりビジネス本の紹介をしている(そればかり読んでいるだけの話である)。今回はジャンルを変えて小説の紹介をしたい。

2018年に本屋大賞に選ばれた、辻村深月先生の渾身の小説「かがみの狐城」である。

そして、読書感想文を書くにあたり、テーマとして考えついたのが、タイトルに書いた通りのことである。ここを書きたくて、3年ぶりに読むことにした。

内容というよりは、作品を通してサードプレイスの意義について感覚させられた。そんな話である。

※ネタバレはそんなにありません(多分)。

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サードプレイスとは

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この記事の前提になる言葉なので、説明だけしておきたい。直訳の通り「第三の場所」を意味する「サードプレイス」とは、自宅や学校、職場とは別の役割を果たす場所。簡単に言えば、居心地のいい場所のことである。

第三の場所(サードプレイス):
サードプレイスは、義務感や必要性に縛られるのではなく、自らの心に従い、進んで向かう場所だ。趣味をしたり、息抜きをしたりできる、心安らぐところで、その場所は人により千差万別である。たとえば、一人で通うお気に入りの静かなカフェ、音楽の趣味を共有できる仲間たち、一緒に体を動かすグループなどもそうだ。

本来であれば、自宅や学校、職場で生活は完結するはずである。一方で、精神的・環境的な問題により「行きたくない」という状態に陥るとき、サードプレイスはシェルター的な役割を果たす。自分では何ともならないときの避難場所である。

そういう意味で、サードプレイスを居心地のいい場所として説明した。

生活のために行かなくてはいけない場所でなく、自らの第三の場所であるサードプレイスは、現代の市民社会において無くてはならない存在と言われる。

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サードプレイスが果たした役割

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物語の冒頭の話だが、中学1年生の主人公(こころ)は中学校でいじめに遭い、それが原因で不登校になる。そんな彼女にとって、鏡の奥に広がる城は自身の問題から避難する場所として機能することになる。

それは、自宅(ファーストプレイス)でも学校(セカンドプレイス)でも果たせなかった、自身の閉ざされた心を開ける貴重な環境であった。

この物語は、中学生のこころがサードプレイスでの経験を通して、次第に現実で居場所を獲得していくまでを描いている。少なくとも、私はそう考えている。

学校に行かないことで、育まれなかった人間関係が、似た境遇の城の仲間たちを通して得られた。仲間内でぶつかる時もあるけれど、自分を受け入れてくれる城という場所はこころにとって大切な存在だった。

そして、現実でも次第に自分の居場所を広げていき、自信もついていく。その様子が微笑ましい。

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現代のサードプレイスのススメ

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不登校の学生が近年増えてきている、そんな話を聞いたことがある。まさに、かがみの狐城で出てくるキャラクターたちのように。

そんな彼らは、まさにサードプレイスという居場所を必要としていると思う。それは物語でも登場する「フリースクール」だったり、学校以外の社会的なコミュニティーだったり。

また、学校は人間関係を築く練習をする場所と捉える人がいる。確かにその通りかもしれないが、円滑なコミュニケーションをとるのが苦手な人にとっては、なかなかキツい場所でもあるように思う。こころのようにいじめを受けているのなら、なおさらである。

コミュニケーションが苦手というのも、その人のいちパラメータ(特性)に過ぎない。だからこそ、ケアできるように教員が促すのが筋であると思う。

それができないなら、サードプレイスという選択肢を許すべきである。誰しもがファーストプレイス(自宅)やセカンドプレイス(学校や職場)から、心の平安までを得られる訳ではないのだから。

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おわりに

今回は「かがみの狐城」という小説を通して、サードプレイスという存在の重要性を考えてみた。

小説の中身もとても面白く、中学生ならではの様々なアイテムが登場したり、自分もそうだったと共感できるところもあった。読んでいて、詰まることなく読み進めることができた。

物語の中で途中の疑問もきちんと回収している。こういうことができるのは、やはり高い文章力が成せるものだと実感する。他の作品も読んでみたい。

サードプレイスに例えるというのは、自分の独断の見方ではあるが、こういう見方もあるということが伝えられたら、嬉しい限りである。

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最後まで読んでいただき、ありがとうございました。実際は非定期ですが、毎日更新する気持ちで取り組んでいます。あなたの人生の新たな1ページに添えるように頑張ります。何卒よろしくお願いいたします。

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