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メディア・企業・広報 サステナブル狂想曲 VOL.4 広報・PR編

立場は違えど、課題は同じということは世の中によくあること。これまでのメディア編と企業編で表裏一体という言葉が思い浮かんだのですが、もう一つ私が見てきた風景があります。それが同業、広報、PR担当者です。


1. 人手不足

メディア側にも企業側にも、専門的にESG、SDGsを担当する人は少ない傾向がありますが、それと同様に広報、PRでも不足している分野でもあります。

そもそもの人材難に加え、「企業が発信したい内容を発信する」=広告向きの内容が多く、

広告のような内容を無料で掲載してもらいたい企業 vs 広告費をもらいたいメディア

広告のような内容を無料で掲載してもらいたいゆえにPR専門家を使う企業 vs 広告費をもらいたいメディアに押し返されるPR専門家

このような競り合いが見受けられます。その結果、広告を売り込むのが理に適っていないと思う人や、記事化が難しくて向いていないと思う人が生じ、この分野を専門的に取り組みたいPRも減っていく流れとなっているような気がします。

もちろんそれだけではありません。
メディアの人と話をするには、それ相応の知識を要しますが、金融や環境など複合的な構造から成り立つESGは、勉強する側にもハードルがあることは否めません。

また、そもそも興味がないという人も一定数存在します。これはメディア側、企業側で記述したことと全く同じことが、立場違えど状況は同じなのです。

2.行間を読む

パンデミックを機に、一気にメディアで加熱し始めたこのサステナビリティ、ESG、SDGs問題。多くの人が在宅ワークを取り入れるようになったこの時期、それまで会社が購読していた新聞や雑誌などに触れる機会が減りました。

ただ広報やPRにとって、情報インプットの機会を失うことは問題でもあります。全て自分で購読しようとすると、それなりのコストがかかり、ネットの無料記事を中心にすると偏りがあります。

複数の新聞を読んでいると、例えば「女性活躍」をよく取り上げる経済新聞の記者と「女性の貧困」をよく取り上げる一般誌の記者がいるのですが、大枠では「女性」についてサステナビリティ観点で記事を書いているということになります。

ただ、会社に行かないから一般誌を目にしない生活をしていると、「女性の貧困」というアングルがあることに気がつきません。

上記は単なる一例に過ぎません。ただESGのSocialの部分はスポットライトを浴びるようなポジティブなニュースと、ネガティブなニュースという異なるレイヤーのニュースが存在します。記者の専門分野や興味がある分野を把握することは重要なことで、大分類だけでは活かしきれないリレーションになってしまうのです。

広報、PRというポジションにいるものの、全員がその職種に対して素質があるとは限らず、興味があるとも限らないので、興味がある記事にしか目を通さない人物がいるのは他の職種同様に仕方ないことでもあります。しかし、「文字検索」で検索し、「女性系の記事を書いている」などと記者を大分類のみで分別してしまうような状況を生み出すとき、たいていの場合は広報やPR側に記事をしっかりと読む力が備わっていないと思えるのです。そのような観点では、ESG、SDGsなどのサステナビリティ関連のPRは、難しいカテゴリーなのかもしれません。

3.トレンドを先読みが難しい

最近この言葉が溢れている言葉がある。

人的資本

PR会社も、ESG専門メディア以外もこの言葉を使い、

人的資本経営コンソーシアム
人的資本可視化指針

などとイベントを開催したり、特集記事を出したりしています。

今ここで人的資本とは何かとか、どれだけ重要なのか、を説きたいのではありません。まず、企業として考えるべき項目と、メディアに出やすい項目は別の議論なのです。そして後者のみを考えると、メディアに既に多く取り上げられている話題や情報(上記で考える場合の「人的資本」)から作った自社のストーリーは、もはや大方が新しい情報、切り口ではないので、ニュースバリューが下がってしまうケースが多いということです。よほど、他の企業から参考にされるようなインパクトをもった御社の人的資本論はありますか?ということです。

今日メディアで多く見る言葉は「今のトレンド」であって、トレンドを先読みしなければ、世の中にインパクトや影響を与えるニュースというストーリーを作れないのですが、その先読みが難しいのです。日本経済新聞はもちろん、海外からの情報をチェックしたり。これはESG、SDGsに限ったことではないのですが、アンテナを高く張ることは広報やPRにとって非常に重要です。

4.ESG系プロジェクトの奪い合い

ESG経営に関するアドバイスや評価機関対策などを行う会社が現在入り乱れています。
経営コンサルティングを提供する会社はもちろん、世の中に声を届けていく(コミュニケーション)ことや投資家などのステークスホルダーへのリレーションなどが元来の事業範囲であることから、PR会社でもワンストップでESGコンサルティングができるような形を用意しているケースもあり、広告代理店でもESGアドバイザリーを展開している企業もあります。

お金が動くところに企業が群がるのは、自然なことではあるのですが、戦いは激化しているように見受けられます。

5.広報・PR編まとめ

それではまとめていきます。

  1. 欧米が牽引する分野であることから、事業会社(企業)の場合もコンサルティング会社やPR会社のようなエージェンシーの場合も、この分野では外資系企業の方が進んでいることが多い。これは本国で作られたスキームを日本でローカライズするビシネスのメリットだと考えます。

  2. 広報・PRでもやはりこの分野のプレイヤーは少ない。

  3. ビジネスコンサルティング会社、環境コンサルティング会社、広告代理店、PR会社など、ありとあらゆるエージェンシーにて、似たようなサービスが提供されている。

  4. 普段入ってくる情報に頼ることより、普段の守備範囲ではない情報網を持つことが重要。

  5. 企業が取り組む活動を出したいという企業側からの声と、広告出稿を希望するメディアに挟まれがちになる。

そんなところですね。
個人的には勉強しなければならないことが多くありますが、私はもう少しESG、サステナビリティ分野を深掘りしていく方向です。

お読みいただき、ありがとうございました。

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