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コンサルティングファーム各社のコロナレポートの紹介と考察②

戦略コンサルタントのアップルです。

コンサル会社のコロナレポートをコンサル業界の人間が紹介する第二弾。今回はBCG、デロイト、経営共創基盤をご紹介します。

一昨日、コンサルティングファーム3社(マッキンゼー、ローランドベルガー、ドリームインキュベータ)のコロナレポートの概要と特徴をご紹介しました(以下の記事)。

Twitterでややバズったこともあり、多くの方に読んでいただきました。

マッキンゼーはマクロ、ローランドベルガーはミクロ(=生活者目線)、ドリームインキュベータはセミマクロ(産業/業界)でアフターコロナの変化を捉えており、各ファームの色が出ていて面白いというお話もしました。

今回はその第二弾です。和文でまとまったレポートを出しているボストンコンサルティング(BCG)、デロイトトーマツ(DTC)、経営共創基盤(の代表の冨山氏が書いた本)(IGPI)の3社についてご紹介します。

なお、前回の記事の3社とあわせて6社のレポートをみましたが、各社のレポートのポジショニングは次のとおりです(アップルの所感に基づく分析)。

ポジショニング

※このポジショニングマップの見方

縦軸はレポートで打ち出しているメッセージの強弱です。
メッセージが強いほど、単なる調査分析にとどまらず、「コロナでこう変わるんだ!」「こう変わるべきだ!」とスタンスをとっています。

横軸はレポートの分析の切り口です。
ミクロ、セミマクロ、マクロの3レイヤーで切ってみました。

このポジショニングマップも頭に入れながら以降のレポート紹介を読んでいただけると理解しやすいと思います!

では、3社のレポートの紹介に入っていきましょう。

ボストンコンサルティンググループ(BCG)

言わずと知れたトップ戦略コンサルティングファームです。
コロナ関係でも様々レポートを英文/和文双方で発表しています。

全てを紹介するのは大変なので、比較的最近にまとまった分量で発表されている「POST COVID-19の消費者心理を読み解く」と題されたレポートの内容をご紹介します。

※以下のサイトにレポートのPDFがあります

BCGでは4月下旬、5月上旬、5月中旬の3回にわたって18歳以上の男女約8,000名に対してオンライン調査を行っています。それにより得られた定量的な消費者行動、消費者心理のデータをもとに、今後の消費行動がどう変わっていくかということを多面的に考察しています。

消費者や生活者にフォーカスしているという意味では、ローランドベルガーと同じ切り口ですが、ローランドベルガーのレポートが定性的にまとめられているのに対し、BCGのレポートはアンケートという定量データに基づいてまとめられているのが特徴です。レポートの中には多くのグラフが出てきますが、こうしたグラフから消費行動の変化をリアルに感じ取ることができます。

例えば、消費品目別に今後支出を増やす予定か減らす予定かを質問しています。多くの品目が減らす方向にある中、フードデリバリー、加工食品、動画サービス、電気ガスなどの公共料金は支出を増やす傾向にあることが示されています。

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また、対面ではなく在宅でオンラインでサービスを受ける流れ(行政手続き、教育サービス、資産運用などの各種相談など)が強まってきていることも言及しています。以前の記事でアップルもオンラインセミナーやオンライン勉強会が増えるのではないかとの見立てを示しましたが、こういうトレンドは実際に既に出始めているようです。

また、面白い結果として、コロナ収束後に在宅勤務を続けたいと思っている人は限られているという結果も言及されています(一方で、自宅に働く場所や書斎が必要だ、という声も高まっていますが)。アフターコロナでテレワークがどの程度定着は、こうしたデータを見るとかなり不透明という感じがしますね、、案外概ねビフォーコロナに戻ってしまうのかもしれません。

【アップルの感想】
いち早く各国で消費者調査に着手し、その定点観測の傾向からいくつかの面白い示唆を出しているところはさすがというところです。

・消費変化の実態はどうなっているのか
・オンライン化がどの分野でどの程度進むのか
・テレワークは本当に浸透するのか

ということを考えたい人にはヒントがあふれているので、ご覧いただくとよいと思います。

デロイトトーマツ

デロイトトーマツグループのデロイトトーマツベンチャーサポートが5月に「Withコロナ時代のイノベーション戦略」と題したレポートを発表しています。

タイトルにある通り、イノベーション活動にフォーカスしている点が特徴です。大企業やベンチャーキャピタルの関係者300名超にアンケートした結果をもとに、イノベーション活動はどれくらい停滞してしまうのか、コロナの変化によりどのようなビジネスチャンスが出てくるのかをまとめています。

ローランドベルガーやBCGの洗練されたレポートに比べると、スライドの見栄えは手作り感がありますが(笑)、内容は結構面白いです。

まず、イノベーション活動は総じて停滞するという結果が出ています。コロナは多くの企業にとっては逆風なので、イノベーションへの投資やリソース投下が減少するのはまあ理解できます。

ただ、そうした中でも、ベンチャーキャピタルの中には投資を加速するところが25%もあるという結果も出ています。コロナは大きな社会構造、産業構造の変化なので、間違いなく新しいビジネスチャンスが出てきます。そこをうまく捉えて成長するベンチャーも出てくるでしょうから、「大きな変化のときにはベンチャーが台頭する」という経験則のもと投資を積極化するVCがいるということだと思います。

これと対照的に、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)はほとんどが投資を減らすという結果になっています。大企業の保守性(守り優先)をあらわしている結果として面白いです。

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また、後半では、どういう領域で新規事業のチャンスが出てくるとみるかのアンケート結果として、リモートワーク、遠隔医療、オペレーション自動化が上位にあがっており、アフターコロナのビジネスチャンスを狙う企業にとっては注目に値します。

<アップルの感想>
大企業やVCへのアンケートやインタビューに基づいたレポートであり、リアリティがあります。アンケートの集計結果に加え、インタビューの生の声が随所にちりばめられている点も面白いです。アフターコロナで”攻め”に行きたい方には、色々とヒントがあるレポートだと感じます。

経営共創基盤(コロナサバイバル・ショック)

経営共創基盤は、産業再生機構などで活躍された冨山和彦さんが立ち上げた日系のコンサルティングファームです。ドリームインキュベータと同様、コンサルティングのみならず、投資や事業も手掛けています。

その経営共創基盤の冨山さんが、5月にコロナショック・サバイバルと題した本をいち早く出版しました。アップルも早速購入して読ませていただきました。冨山さんの考え≒経営共創基盤のスタンスだと思いますので、その本の概要をここでは紹介します。

冨山さんは定期的に示唆深い本を出版されています。それらに通底するのが日本経済をグローバル経済(G)とローカル経済(L)に分けて論じている点です。前者はトヨタのような大企業が世界を舞台に戦っていくような経済、後者は大半を占める中堅・中小企業が地域密着型でビジネスを営んでいく経済です。

数年前に出版された以下の本はアップルも読みましたが、非常に示唆深い内容でした。

「コロナショック・サバイバル」でも、このGとLの経済構造の中でコロナショックがどう波及していくかを整理しています。具体的には、

・まず外出制限や出入国制限のもとローカルクライシス(L)が起き、
・次にそれが耐久消費財の買い控えなどを通じてグローバルクライシス(G)に波及し、
・最後に資金繰りの悪化を通じたフィナンシャルクライシス(F)に波及

というメカニズムを予測しています。

また、アフターコロナはローカル経済/グローバル経済の双方にとって構造改革のチャンスでもあり、

・DXの加速
・モノからコトへの加速
・GからLへと流れが変わる。ローカル経済(地方創生)にはチャンス
・DXからさらに踏み込み、CX(コーポレートトランスフォーメーション)が必要

といったいくつかの示唆深い提言をされています。

【アップルの感想】
緊急出版なのでページ数は少なめです。「もうちょっと詳しく知りたい!」という寸止め感はややありますが、冨山さんなりのLG構造でのコロナショックの捉え方、マクロ視点でのアフターコロナの変化はいずれも示唆深く、ぜひ多くの人に読んでほしい内容だと感じました。

特に、CX(コーポレートトランスフォーメーション)という言葉は本書で初めて耳にしましたがまさに今回のコロナで問われるイシューだと思います。

・コロナを逆風と捉え、既存事業の守りに徹するのか
・それとも、チャンスと捉え、攻めへのアクセルを踏むのか

企業の真価が問われているように感じます。

最後に

2本の記事にわたって、計6社のコンサルティングファームのコロナレポートをご紹介してきました。いかがでしたでしょうか?

今後も、各ファームともアップデートレポートを出すと思います。現時点ではまとまったレポートを出していないファームも今後出すかもしれません。

しばらく経ってから続編を書くかもしれませんので、その際はぜひまたご覧ください!

また、アップルもすべてのレポートを把握できているわけではないので、「ここにこんなレポートがあるよ!」との情報をお持ちの方がいらっしゃれば、ぜひコメント欄かTwitterでご共有ください。


今回はここまでです。
最後までご覧いただきありがとうございました!

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