アフターコロナで鉄道会社に求められる3つの変革

みなさん、こんにちは。
戦略コンサルタントのアップルです。

アフターコロナで社会やビジネスはどうなるのかという私なりの見立てや考え方をいくつかの記事でお話してきました。今回は、具体的な業種として鉄道業界について書いてみようと思います。アフターコロナで移動需要が減ることが見込まれる中、どう生き残っていけばよいのか。おそらくこういう変革が求められるだろうということをお話させていただきます。

ご参考:過去のアフターコロナに関する記事
アフターコロナで何が変わるのか?~考える視点とひとつの仮説~
アフターコロナで変わる働き方

移動という無駄がそぎ落とされる時代へ

コロナで移動の需要は激減しています。朝電車に乗っても、いわゆる満員電車という状態は解消されています。またより深刻なのは長距離移動です。飛行機や新幹線などはほぼ需要がすべて蒸発してしまっている状況です。

ここまでの大幅な移動の需要減は、緊急事態宣言が解除されてコロナが収束していけば、ある程度は回復するでしょう。ただ、ビフォーコロナに戻るかといえば、まったくそんなことはないでしょう。テレワークや在宅勤務がある程度定着する結果、通勤の移動需要は一定のインパクトで減少します。また、プライベートでの移動も、バーチャル空間での娯楽が増えることによって一定程度減ることが見込まれます。

よくよく考えてみれば、移動というのはある意味「無駄」です。お金も時間もかかりますが、それ自体の付加価値はあまりありません。通勤ラッシュの満員電車については、付加価値はマイナスですらあります。お金も時間もかかるし、かつ、苦痛である。このようなものがビジネスとして成り立っていること自体がかなり特殊です。

このように移動は無駄なものですが、それでも必要だからということでこれまで需要は維持されていました。しかし、今回のコロナで変わった前提は「必要だから」の部分です。オンラインでコトが済ませられれば、移動は必要ではない。必要性が薄れた移動は、無駄なものでしかなくなります。このままでは中長期的に需要はじわじわと減少していってしまうはずです。

鉄道会社に求められる3つの変革

この前提の変化は、鉄道会社に大きな変革を求めることになります。

立ち返って、ビフォーコロナの鉄道会社の経営課題とは何だったでしょうか?

例えば、東京メトロのような都心の輸送を担う鉄道会社にとっては、「混雑緩和」が大きなイシューでした。つまり、朝の通勤ラッシュによる混雑をどう緩和するかが大きな経営課題でした。混雑緩和を少しでもするために、ダイヤを極限まで過密にしてきました。さらに、最近では「メトポ」というポイント施策によって、時間帯別にポイントインセンティブを変えることでピークシフトを促そうとしてきました。

ところが、アフターコロナでは、多少の混雑は残るものの、混雑の問題は自然と解消に向かっていきます。つまり混雑緩和というイシューの重要度は大きく低下します。

一方で、新たに大きな経営課題となるのは、移動の需要減に伴う売上・収益の落ち込みを何で埋めていくかという点です。

ブレイクダウンすると3つの変革が必要になるでしょう。

 ①鉄道以外の事業の強化

鉄道会社は鉄道事業だけをやっているわけではなく、不動産、商業なども展開するコングロマリットです。

鉄道事業の落ち込みを他の事業でどうカバーするのか、更には新規事業をどう生み出していくのかということが大きなイシューになるでしょう。特に、鉄道というインフラ事業者ならではの個性的な新規事業をどう生み出せるかがポイントになってくると思います。

 ②移動に付加価値を乗せる

鉄道事業については、移動の価値をどう高めて単価を上げるかという視点も大事になります。「移動の価値=移動そのもの+それに要する時間」という機能価値だけでは、移動の需要はどんどん減っていってしまいます。

移動に「意味の価値」を加える、つまり移動の快適化や移動のエンタメ化を強化していくことが、これまで以上に圧倒的に重要になるでしょう。

例えば新幹線。大昔の話なので、20代の方は知らないと思いますが、かつては新幹線に食堂車両というものがありました。新幹線の中にレストランがあったのです。

(新幹線の食堂車両の様子)

画像1

今よりも新幹線の速度が遅く、ずっと座席に座っているのは退屈だからというのもあってこういうサービスがあったのだと思いますが、移動に付加価値を付けるという意味では面白い取組だったと思います。

温故知新ではありませんが、こういうものを現代版に仕立てて復活させるような取り組みが必要なんじゃないかと思います。

余談ですが、古畑任三郎というドラマがありました。90年代に人気を博した、田村正和が主演を演じる刑事ドラマですが、その中で新幹線内での犯罪を描いた作品があります(「殺人特急」という作品です)。この中で新幹線の食堂車両の様子が出てきます。興味ある方はTSUTAYAで借りるなりしてみてください!

 ③マスから個へ

鉄道=大量輸送ですが、個に最適化したサービスという方向性も求められてくるでしょう。

顧客をセグメンテーションして、セグメント別のニーズにあわせこんでサービスを設計するというのは、ほとんどの業界でビジネスの基本です。ただ、この鉄道業界は、いまだマスのビジネスから脱却できていない印象です。

例えば、高齢者に快適な車両、外国人観光客に快適な車両など、あるセグメントに絞って快適な移動を提供したり、その周辺サービスを提供したりする視点がとても大事になってくるのではないかと考えています。

今後の鉄道業界のニュースに要着目

以上、アップルなりの視点で鉄道会社に求められる戦略転換や変革についてお話をさせていただきました。

アフターコロナで、鉄道会社も色々な施策を打ちだすはずです。重要な社会インフラなので、色々とニュースにもなるでしょう。

そうしたニュースから、鉄道会社がどう業態転換を図ろうかをしているのかという「意図」を推察してみるのは面白いかもしれません。興味深いニュースがあれば、またnoteでもご紹介していきたいと思います!


今回は以上です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!

◆◆◆
感想、質問、意見などのコメント絶賛募集中です!
コメント欄まで、気軽にお寄せください。

また、twitterもやっておりますので、よろしければフォローお願いします!


この記事が参加している募集

スキしてみて

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?