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アフターコロナで何が変わるのか?~考える視点とひとつの仮説~

戦略コンサルタントのアップルです。

コロナの感染拡大以降、ニュースもワイドショーも日々の会話もこの話題で持ちっきりです。筆者は飲み会が好きなので、早く収束して自由に飲みに行ける日が来ないかと待ち望んでいます(もちろん、今は原則在宅勤務、かつ飲み会もやっていません)。

時期は依然不透明ですが、いつかコロナは収束します。きたるべき収束の日に向け、頭を働かせていくことも重要です。ビジネスの世界にいる人にとっては特に重要でしょう。

そこで今回は、コロナ収束後の「アフターコロナ」で何が変わるのか、逆に何は変わらないのかについての私見をお話したいと思います。

世の中の関心は徐々に「アフターコロナ」へ

コロナのピークアウトの兆しが出てきている中、世の中の関心は「アフターコロナ」に向きつつあります。弊社のクライアント企業もアフターコロナで何が変わるのか、その自社にとっての意味合いは何か、という検討を内々に始めています。また、コンサルティングファームも、各社調査チームを立上げ、アフターコロナで生まれるビジネスチャンスの考察などを進めています。ウェブ上にもこの手のレポートや記事がたくさん出てきています。

果たしてアフターコロナはどうなるのか?不確実性の高い話であり、今時点では誰も確たることは言えないと思います。みなさんも、気にはなりつつも、いろんな情報が錯そうする中もやもやして、答えが見いだせていない状況かと思います。

そういう意味では、私自身も、今時点で「こうなる」と確たることは言えません。ですが、「おそらくこうなるんじゃないか」という仮説や、「こういう視点を持ちながら情勢を見ていく必要があるんじゃないか」という視点や考え方の話はできます。

今回は、これを読んでいらっしゃる方の「考えるヒント」として、いくつかの切り口や仮説をお話したいと思います。

アフターコロナを予想する上で大事な視点

まず、どういう視点でみていくとよいか、という私見ですが、
「何が変わって、何が変わらないのか。その理由は何か?」
という視点で見ていくのが大事だと考えます。これは実際に我々が長い時間軸でクライアントを取り巻く外部環境分析をするときに使う視点でもあります。

コロナを発端として、今様々なことが起きています。これらの中には、
・①コロナが収束すれば概ねもとに戻るもの
・②コロナをきっかけに、何かしら構造が変化し、コロナが収束してももとには戻らないもの

の双方があります。日々報道されるニュースは①と②が混在していますし、メディアは①と②を分類したような伝え方は基本的にしないので、ここを自身でどう見極めるかが大きなポイントです。

例えば、以下のようなニュースが連日報道されています。

・飲食店の客足が大きく減り、廃業するところも出てきている
・人の外出や移動が減ることで、新幹線の売り上げが大きく落ち込んでいる
・zoom飲みがはやっている。リモートキャバクラも出てきた

こういうニュースが、次から次へと、毎日のように出てきます。これらの情報の中で、何が本質的な変化の兆しなのか、逆に一過性のものなのか、という考察をすることが、アフターコロナを見立てる上ではとても大事です。

それでは、今時点で私自身がどのような見立てをもっているのか、以下で紹介をしていきます。個別的な話というよりは、俯瞰的なやや抽象度が高い話になりますが、お付き合いください。

変わること、一部変わること、変わらないこと、の3つについて見立てをお話していきます。

変わること①:集中から分散への流れが加速する

今回コロナの感染拡大は、「集中モデル」に対するアンチテーゼになりました。人口が集中する東京で、感染が拡大する。人が集中するオフィスや病院で、感染が拡大する。集中モデルは効率がいい反面、リスクに弱いということが身に染みて分かったのが、コロナからの大きな学びと言えるでしょう。

つまり、ヘルスケアにおける「レジリエンス(強靭性)」が弱いということが分かったということだと思います。一般的にレジリエンスという言葉は防災の文脈で使われます。安倍政権も「国土強靭化」という政策を推進していますが、これは地震や台風などの災害に強い国づくり・街づくりをすることを意味しています。

今回のコロナもある意味災害ですが、国も感染症に対するレジリエンスという視点はあまりもってなかったのではないかと思います(諸外国も同様でしょう)。今後、いつかはわかりませんが、第2、第3のコロナが発生するかもしれません。そのときに今回のような事態に陥らないようにどうしていけばよいのか?「感染症に対するレジリエンス」を高める動きは、国を挙げて進んでいくでしょう。

その文脈で、アフターコロナに表出するトレンドが「集中から分散へ」です。

最もわかりやすいのはテレワークです。オフィスという場所に社員を集中させて仕事をするという「集中モデル」は大きなリスクをはらんでいることが分かりました。テレワークの環境を整え、必要に応じて在宅勤務(=分散した働き方)できるような体制を整える動きは、今回のコロナをきっかけにぐっと広がるでしょう。

また、医療の分野においても、遠隔医療など、在宅で医療サービスを受けられるような制度整備やビジネスは進むはずです。これも、通院という「集中モデル」から在宅医療という「分散モデル」への移行ととらえられます。

変わること②:ビジネス関係の移動、特に出張が激減する

緊急事態宣言以降、人々の外出が強く制限された結果、鉄道や飛行機などの交通機関の業績は目下非常に厳しい状況にあります。東海道新幹線の輸送量は平常時の1割程度まで落ち込んでいるようです。

今需要が落ち込んでいるのは当たり前ですが、アフターコロナではどうでしょうか?私の見立ては、
・ビジネス関係の需要は、コロナ前に戻らず大きく落ち込む
・一方、その他の需要(観光や行楽、日常生活での移動)は、概ねコロナ前に戻る

というものです。

ビジネス関係の移動は「日常の通勤」と「出張」に大別されますが。通勤はテレワークの定着である程度減ると見込まれます。出張はさらに深刻です。当然、現地で視察するような出張は残るでしょうが、「会議のための出張」は、激減する可能性があるとみています。

これまでは、特に中高年世代の「face to face」志向が強いこともあり、たかが1~2時間の会議のためにも遠くまで出張することは一般的でした。私自身も一時期クライアントとの会議のために毎週のように関西へ出張していました。

ところが、今回のコロナで、face to faceでの会議ができなくなり、会議の重要度によらずzoomなどを使ったテレビ会議で実施することになりました。弊社でもここ1ヶ月は会議の相手が社長だろうが役員だろうがリモートで会議をしています。結果、「あ、テレビ会議でも、ほとんど問題ないじゃん」ということに、おじさん世代も含め気づいてしまったわけです。

アフターコロナでも、近場であればface to faceで会議をするでしょうが、遠距離の場合はおそらく相当の必要性がない限りはリモート会議でよいということになり、結果、出張に伴う移動需要は激減すると思われます。ビジネス需要に大きく依存する新幹線や飛行機は今後相当厳しくなるでしょう。

変わること③:マスを対象としたイベントは、リモート化・バーチャル化が進む

上記2つに比べるとやや個別的な変化ですが、知人などから聞く情報からおそらく本流になるだろうとみている変化です。知人でセミナーや勉強会を主催している人が何人かおり、コロナ以降はzoomで開催をしています。これまでは場所を借りて、リアルな場で行うのが普通だったわけですが、リモートでもさして支障なくできる、むしろ、「会場までの移動」という手間がなくなった結果、集客も多くできるようになったという話を聞きます。

この手のイベントは、会場が近ければさほど苦痛を感じませんが、遠距離となると大きなハードルになります。東京で開催されるセミナーや勉強会に(いくらそのイベントが魅力的でも)わざわざ地方から参加する人はまずいないでしょう。

これが、リモート開催になることで、こうした距離の制約が取っ払われ、参加のハードルは大きく下がります。予定さえ空いていれば家から気軽に参加できるようになるわけです。イベントの主催者のKPIは「集客数」なので、集客が見込めるリモートという手段の方にシフトしていくでしょう。

一部変わること:企業行動は、一部の意思ある会社は変わるが、他は変わらない

企業行動は変わる会社と変わらない会社の濃淡がくっきり出るように思います。

「ピンチをチャンスに」という捉え方をし、今だからこそ事業構造の改革や新規ビジネスの検討・推進にアクセルを踏める会社は、コロナを契機にいい方向へと変化していくでしょう。アフターコロナの事業機会をとらえて急成長するベンチャーも出てくると思います。

弊社のクライアントでも、この情勢下においても攻めの姿勢を崩さず、弊社を起用してくれているところがあります。例えば新規事業の検討などの「攻め」は、緊急度は低いが重要度が高い取組です。こういう情勢になったときに、「緊急度が低いから、しばらく攻めの検討はペンディングしよう。コロナ対策最優先だ」と守りに舵を切る会社もあれば、「わが社にとって中長期的な成長のための検討はやり続けないといけない。ぶれずにやり続けよう」と攻めの姿勢を維持する会社もあります。

コロナが事業にどれだけのインパクトをもたらすかも濃淡があるので、一概にどちらがいい、悪いとは言えませんが、外部環境が大きく変化したときでも軸をぶらさずやるべきことはやり続けられる会社は、強いと思います。

一方、多くの会社は、変化はできないでしょう。過去を振り返れば、リーマンショックや東日本大震災など今回と同レベルの環境変化はありましたが、それをばねにして大きく変わった会社はごくわずかです。その歴史も踏まえると、アフターコロナでも変わらない会社が大半ではないかとみています。

変わらないこと:友達・知人との活動やコミュニティの活動、観光はもとに戻る

気心の知れた知人・友人との飲み会や遊び、彼氏彼女とのデート、マスではなくコミュニティを対象としたイベントなどは、コロナ前に戻っていくと思います。なぜなら、これらの活動こそ、家の外に出て、集い、face to faceでやる価値が大きいからです。

このことは、現在公園に人が殺到していることからも示唆されます。外出自粛の中、旅行や遠くの遊園地などにはいけません。一方、家の中にずっといると、運動不足にもなりますし、気分も滅入ってきます。本来人間は外に出たい生き物なのです。そうした中、「近場の公園で遊んだり走ったりする」くらいしか解がないので、公園に人が集まっているわけです。

そのため、今需要が落ち込んでいる飲食店、カラオケ、アミューズメント施設、ホテル・旅館などは、コロナ収束後に需要が回復するでしょう。供給サイドの事業者が収束まで持ちこたえらえるかどうかがポイントになります。行きつけだったお店がコロナに耐え切れず廃業になってしまった、という悲しいことは起きる可能性がありますが、日常生活や娯楽はおおむねコロナ前の平和な状態に戻るのではないかと思います。

まとめ

以上、アフターコロナで変わることと変わらないことの、私の現時点での見立てをご紹介しました。繰り返しになりますが、現時点で誰も正しくは見通せないので、これが正解かどうかはわかりません。みなさん自身が、みなさん自身の情報と思考で、独自の見立てを作るのが大事だと思います。自分なりの仮説を持ちながら情報をみるのと、そうでないのとでは、大きな違いがあります。そういう思考を働かせる上でのヒントになれば幸いです。

アフターコロナの話は、今後議論が活発化していき、私自身もいろんなインプットのもとで見立てが進化していくと思いますので、また折をみてこのテーマで記事を書きたいと思います。


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