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戦略ファームの営業手法 ~形のない高額商品をどう売るか

戦略コンサルタントのアップルです。

今回は、戦略ファームがどのように営業し高額なプロジェクトを売っているのかご紹介したいと思います。法人営業、特にコンサルティング営業やソリューション営業に従事されている方にはヒントがあると思いますのでぜひご覧ください!

はじめに:コンサルティング営業の時代

近年、法人営業も複雑化し、様々な業界で「コンサルティング営業」の必要性が叫ばれています。

単に自社商品を「この商品どうですか?」と顧客にぶつけるのではなく、顧客の悩みや課題を聞き取った上で、その解決策としてしかるべき商品・サービスを提案するのがコンサルティング営業です。商品の提案から顧客の課題解決へと売り方が変わってきています。

このようにコンサルティング営業が一般化してきた中、戦略コンサルティングという商品をどのように営業し売っているかは、ほかの業界の方にとってもヒントがあるのではないかと思います。

そこで、今回は、私自身の戦略コンサルティングプロジェクトの営業経験ももとに、我々戦略コンサルタントがどのようにプロジェクトを売っているのかや売る際に訴求するいくつかの手法についてお話したいと思います。

商品としての戦略コンサルティングの特徴

戦略コンサルティングは、非常に高額な商品です。ファームによっても単価は異なりますが、平均すると以下のような料金設定かと思います。

4~5名のメンバー編成(パートナー、プロジェクトリーダー、コンサルタント2~3名)で、月額2000~3000万円

例えば、3ヶ月で事業戦略検討をするプロジェクトの場合、月単価が2500万円とすれば、2500万円×3ヶ月=7500万円でプロジェクトを売ることになります。より長期のプロジェクトになれば1億円の大台に乗ってきます。

数千万円~数億円という金額は、いかに大企業と言えども支払うのにかなり勇気がいります。決裁のレベルとしても、本部長・部長クラスの決裁金額を超え、社長や役員の決裁が必要になるレベルです。

戦略コンサルティングという商品を売るのが難しい理由はまずこの高額であるという点になります。

加えて、更に売るのを難しくしているのが、商品が目に見えないという点です。

我々戦略ファームが営業する際には、パワーポイントで提案書を作り、「〇ヶ月で、XXというスコープで、YYというお題に答えを出すことをご支援します」という形で提案をします。しかし、問題解決や戦略というのは形があるものではないので、プロジェクトの結果どういうアウトプットが出るのかというイメージを明確に伝えるのが難しいです。

このように、高額な上に、目に見えず成果物のイメージも明確ではないものを売るのが如何に難しいかは何となくご想像いただけるのではないかと思います。法人向けの商品やサービスはたくさんありますし、それに伴って法人営業の仕事をされている方もたくさんいらっしゃいますが、我々が売っている戦略コンサルティングというサービスは売るのが最も難しいサービスの一つではないかと思います。

売るための3つの営業手法

では、そのように売るのが難しい戦略コンサルティングを売るために、戦略コンサルタントはどういう工夫をしているのでしょうか?売り方としては大きく3つのパターンがあります。

 売り方①:答え仮説を提示して売る

仮説という言葉を戦略コンサルタントは非常によく使います。仮説とは「与えられたお題や論点に対する、現時点での答えの見立て」です。

この答え仮説が「確かにその答えはありそうだ!」とお客様に思っていただけるものであれば、プロジェクトのアウトプットイメージの醸成にもなって売れやすくなります。

ただし、答え仮説を考案するのは我々戦略コンサルタントにとってもそれほど容易ではありません。特に土地勘がない業界だと(よほどの天才でない限り)直ちに魅力的な仮説を立てるのは難しいです。そのため、仮説を作るための調査や分析を稼働が空いているコンサルタントも使いながら行い、相応の時間と労力をかけてもっともらしい初期仮説を作ることとなります。

つまり、このアプローチは、提案書を作り込むのに労力がかかります。そのためコスパはあまりよくないですし、個人的には別の手段でいけるなら選択したくないアプローチです。その別の手段が次にお話する「解法を設計して売る」というアプローチです。

 売り方②:解法を設計して売る

これが実は最も汎用性があり、かつ工数もかけなくて済む売り方です(とアップルは考えています)。

大企業においては、「こういう悩みや課題があるのだが、答えを出すために何から手を付けたらよいのか見当がつかない」というところで壁にぶち当たっているケースが意外と多くあります。

つまり「課題の解き方」が分からないのです。

こうしたケースでは、我々が「問題の解き方」を設計してあげることが最大の訴求ポイントになります。戦略ファームは数多くの問題解決を経験しています。いろんな問題解決をする中で、問題の解き方のパターンや、その具体的な設計手法については多分にノウハウがあります。そうした強みを生かして解法を設計し、提案するわけです。

解法をびしっと設計して見せることで、答え仮説を我々が持ち合わせていなくても「確かにこの手順で検討を進めていけば答えにたどり着きそうだ!」とお客様に思っていただき受注できます。私の経験上もこのパターンで売れたプロジェクトは半数以上ありました。

 売り方③:実績とブランドで売る

ある意味一番オーソドックスな売り方です。

・お客様の業界に対して深い情報や知見をもっている
・類似したプロジェクトの実績がある
・そもそもファームとしてのブランドが強い
 (ブランドによって信頼が裏付けされている)

上記のようなノウハウや実績をもとに「この会社なら信頼できそうだ、答えを出してくれそうだ」という期待感を醸成して売るという方法です。実績とブランドの訴求がポイントになるため、提案書の中に過去の類似プロジェクトの実績をふんだんに入れ込んだりします。規模が大きくブランドの強いファームほど、このアプローチはとりやすいと言えるでしょう。

今後ビジネスパーソンに必要となる「解法の設計力」

紹介した3つの売り方のアプローチの中で、広くビジネスパーソンに示唆があるのはアプローチ②だと感じています。

ビジネスがどんどん複雑で難しくなる中、解決すべき問題を定義しそれに答えを出していくための「解法」を設計する力は、これまで以上に重要になります。

ですがこの力をもった人は世の中全体でみればかなり限られている印象です。逆に言えば、この力を身に着けることができればどんな業界や仕事でも通用する明確に強みとなるでしょう。問題を設定したり、解法を設計するのは、AIが苦手な領域でもあると思います。

この力をつけるには、経験がものを言います。戦略コンサルタントができるのも、数多くの問題解決をしてきているからです。つまり、意識的に「場数」を踏んでいく必要があります。

担当する仕事や業務にもよると思いますが、

①自信の業務の課題や問題は何か?(問題の設定)
②それを「論点」に分解するとどうなるか?(問題の分解)
③論点に答えを出すための解法は?(解法の設計)

ということを考えながら直面する業務にあたると、大きく生産性が上がったり業務の質が上がる可能性もあると思いますので、ピンと来た方はぜひトライしてみてください!

今回はここまでです。
最後までご覧いただきありがとうございました!



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