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官僚とコンサル、就職人気の明暗の背景

戦略コンサルタントのアップルです。

ここ数年、コンサル業界の人気がうなぎのぼりです。就活生に人気企業の上位をコンサルティングファームが占めるという状況にまでなってきました。

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一方で、一昔前までは東大生を中心に人気のあったキャリア官僚(かつての国家公務員1種、現在は国家公務員総合職)は、人気に陰りが出てきています。

今回の記事では、なぜこうした明暗が出たのか、その背景や原因は何かといった点につき、アップルの私見も交えながら書いてみようと思います。

官僚人気の著しい低下

アップルが社会人になった2000年代半ば頃は、東大、京大、早慶などの学生において中央官庁の人気は非常に高いものがありました。アップルの知人にも中央官庁に就職した人間がちらほらいますが、優秀な人材が多かった印象があります。

ところが近年、その人気にはかなり陰りが出てきています。全般的な志望倍率が低下傾向にあると同時に、東大生の志望者数が激減しています。2006年度は合格者のうち東大生が457名(全体に占める割合28.7%)だったのに対し、2020年度は249名(同14.5%)と半数程度に減少しています。

一昔前はキャリア官僚と言えば東大出身者が大半を占めているというイメージでしたが、そのような構図はもう完全に崩れています。エリート学生は官僚という仕事にさほど魅力を感じなくなってきているのです。

また、官僚の知人に聞くところによると、若手官僚の退職者数も非常に増えているようです。かつては絶対やめなかったような同期のエースが辞める例も出てきていることに対する危機感の声も聞こえてきます。

つい最近も、経産省の若手官僚が1年間に23名も退職していたということが明らかとなり、話題となりました。

つまり、新卒マーケットでの人気が低下すると同時に、「中の人」も中央官庁という組織や仕事に見切りをつけ始めているということです。

官僚離れの背景には何が?

なぜ官僚離れが進んでいるのか?いくつかの理由があると思います。

1.入省して数年は雑用が多い

これは中央官庁に限らず大企業もそうかもしれませんが、終身雇用と年功序列をベースにキャリアが組み立てられているため、新卒は最初雑用係的な扱いをされがちです。無論、最初の2~3年だけで、その後は中央官庁ならではの大きな仕事に携わっていくのでしょうが、この2~3年の雑用期間を耐えられない(と考える)学生が増えてきているのではないかと思います。

2.待遇が悪い。その割に忙しい

これも色々なところでニュースになっていますが、キャリア官僚の待遇は決して良くありません。一般的な大企業と比べてもベースは低いようですし、尚更コンサルティングファームと比べるとかなりの給与格差があるようです。その割にはとても仕事が忙しい。

無論、国家に携わる仕事という意味でのやりがいは昔も今もあるのでしょうが、コスパの観点では決して良くないため、エリート学生から敬遠されつつあるのではないかと思います。

3.つぶしがきかない

国家公務員に限らず公務員の仕事は「つぶし」がききにくい傾向にあります。行政組織で仕事をすれば、行政の専門知識や行政ならではの業務プロセスには精通しますが、それらのノウハウやスキルの汎用性は低く、いざ転職するとなったときには「つぶし」がききません。

終身雇用&年功序列がスタンダートなモデルだった時代は、ファーストキャリアで選んだ職種のつぶしがきくかどうかなんてことを気にする必要はありませんでした。しかし時代は大きく変わり、もはや終身雇用・年功序列は半分くらい崩れています(コロナ以降よく耳にするようになった「ジョブ型雇用」も、この崩壊に拍車をかけていくでしょう)。

終身雇用・年功序列が崩れた今、つぶしがきかない仕事をファーストキャリアで選ぶことはリスクでしかありません。

キャリア官僚の仕事は、法令の策定、国会の対応、予算や税の立案と調整などと多岐に亘りますが、いずれも行政組織の外ではほとんどつぶしがききません。つぶしがきかないというリスクが官僚離れの一因と考えられます。

コンサルティング業界の人気とは表裏一体

このようにコンサルと官僚の人気はここ数年でくっきりと明暗が付きました。

アップルはこれは「表裏一体の現象」だと思っています。

つまり、上述した官僚人気の低下の3つの原因の”裏返し”が、コンサルティングファームの人気の理由でもあるということです。

対比してみましょう。

<官僚> ⇔ <コンサル>

1.最初は雑用係 ⇔ 最初からプロとして前線に入る
2.待遇が悪い。その割に忙しい ⇔ 忙しいが待遇もかなりいい
3.つぶしがきかない ⇔ つぶしがきく(転職に有利)

今の優秀な学生たちは、

・丁稚奉公はすっ飛ばして、最初からリスクと責任をもって最前線で仕事をしたい。それに見合う待遇もほしい
・そうした環境下で、いち早く実のある経験やスキルを獲得したい
・それらの経験やスキルを武器にしつつ、柔軟に転職やキャリアチェンジをしていきたい

という志向性をおそらくもっています。

この志向性が、コンサルという仕事にとてもフィットする一方、キャリア官僚という仕事とは全く相いれないということです。

そして、このように優秀な学生層の志向性を変えたのは、
・経済社会環境の複雑化・不確実化
・ビジネスにおける安定性の崩壊
・日本型雇用モデルの崩壊

といった経済、社会、ビジネスの構造変化ということに他なりません。

じゃあ中央官庁はどうすればよいのか?

このように時代の流れの中で若者の志向性が変わった結果、官僚組織の人気が下がってきているのが現状です。官僚の人気が下がることによって、当然、人材の質が下がる方向に向かいます。

キャリア官僚は政治を支える行政の要です。行政の中枢を担う人材の質が低下することは、国の屋台骨を揺るがすことにもなりかねません。「あー、官僚人気が下がってるのね」と指をくわえてみていればいいものではなく、どうしたら優秀な人材を再度集めていく仕組みを再構築するかを考えるべきでしょう。

おそらく必要なのは、抜本的な処遇体系の見直し(しかるべき人材にはもっとたくさん給料を払う)とキャリア採用の抜本的強化でしょう。しかるべき待遇で、民間の優秀な人材を即戦力として採用する。民間の血を入れることで業務プロセスや組織風土も抜本的に変革していく。こうした大胆な打ち手が今の流れを変えるためには必要なんじゃないかと思います。


今回はここまでです。
最後までご覧いただきありがとうございました!

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