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新macOSの「変なアイコン」は今後のAppleにとって重要な取り組みとなる

macOS Big Surで大きく話題になったのは、アイコンです。デフォルトアイコンがiOSやiPadOSのアイコンに似たものになったりしたのですが、なぜか影が強調されています。iOSでも連絡先Appでは影のようなものが残っているので、初めて影がついたわけではないのですが、iOSでは影がついてないアイコンにも目立つ形で影がついたので、話題になりました。

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Apple

否定的な見方もあるのですが、このデザインは今後のAppleにとって重要になるかもしれないと思っています。この記事ではその話をしたいと思います。


そもそも何のために?

これについては、クレイグ・フェデリギが説明しています。

それによると、歴代Macアイコンに用いられた職人的な技術や細部まで注意をはらったデザインに対するオマージュの意図があるようです(私の英語力が拙いので間違っていたらすみません)。

アプリケーションのアイコンだけだと、ただ影をつけただけに見えないこともないのですが、設定画面に使われているアイコンはたしかに以前のMac OSのような雰囲気があります。

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https://youtu.be/tRlV5YOunGA


オマージュと合理性

バッテリー残量のアイコンに至っては、全部緑で、私でもちょっとどうかなと思ったりします。スキューモーフィズム的ですが、現実世界にそんなものはないので、別物ですね。


Big Surのアイコンに関してAppleがやっていることは、合理的な行為ではありません。
妙な立体感がなくてもユーザーの理解には影響しないので、もっとミニマルなアイコンにできます。例えばiOS 7以降のアイコンはそういう方向性でした。Mac OSもそれなりにフラットで、Big Surほど誇張されたものではありませんでした。

Apple製品というと合理性を追求したデザインが多いですが、もともとソフトウェアに関しては長らくジョナサン・アイブが関与していなかったこともあって、必ずしも合理性だけでデザインしていなかったのです。

例えばMac OS Xのイントロムービ画面では多言語で「Welcome」を表示します。しかも文字を表示するだけではないんですね。文字自体にエフェクトがかかっていて、金属素材のような雰囲気になっています。
そして何よりも目立つのは、宇宙空間を背景に銀河が映っていて、文字がカッコよく動き回りまわる演出です。


これは合理性だけでいえば、文字だけ表示すればいいわけです。そういう方向性で作られているのがiPhoneの「Hello」画面です。

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Apple

別に「Welcome」と伝えたいだけなら、銀河なんていらないし、かっこいいエフェクトもいらない。でもMac OS Xのイントロムービーはそのエフェクトのおかげで当時好評だったわけです。

不合理だけど楽しめる要素が取り入れられていたわけです。「遊び」の要素ですね。


「遊び」の価値

ミニマリズム的にはなくてもいい要素だとしても「遊び」は大事です。それは製品を使う楽しみを生み出すものです。余計な要素ばかりだと邪魔ですが、適度に存在すると程よい刺激になるわけです。

でも、「遊び」の取り入れ方には注意しなくてはなりません。「遊び」は装飾と同じですから、安易に取り入れると、対象からシンプルさを奪いかねない。

その観点から考えると、Big Surはシステム全体はあくまでシンプルさを追求していますし、アプリケーションのアイコンもiOSなどに揃えていて実用的です。そのうえで、アプリケーションのアイコンには他のプラットフォームのアプリとの同一性を失わせない程度に影をつけるにとどめたりしています。設定画面のアイコンのように、自由にやってもそれほど問題にならないところだけで遊んでいるわけです。

iOS 7でスキューモーフィズムが排除されてからは、デザインにシンプルさをもたらすために遊びの要素が排除されてきました。ユーザーがコンテンツに向き合ううえでは非常に重要なことですが、ユーザーはデバイスとも向き合っているわけですから、ちょっとは遊びがあっていいだろうと。

Big Surのアイコンは、スキューモーフィズムの時代とミニマリズムの時代を乗り越えて、シンプルさの中にほんの少しの「遊び」を入れたベストなデザインを目指すものだと思います。場合によってはAppleのスタンスに反しかねないものですが、重要な取り組みだと思っています。
みなさんは新しいアイコン好きですか?


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