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【アートプロジェクトの中の人】グラフィックデザイナー 三上悠里@東京で(国)境をこえる

私は、自分が関係しているアートプロジェクトのことを人に説明するときに、そのプロジェクトの概要と合わせて、どんな人たちがやっているのかを紹介していることに気づきました。
どんな人たち=事務局の人たちとのやりとりについて、ここでは書いていこうと思います。

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ロゴデザイン:三上悠里

アートプロジェクト「東京で(国)境をこえる」(以下(国)境)は、東京アートポイント計画事業の一環で2019年10月から始まりました。劇団としても活動している一般社団法人shelfとともに世田谷区経堂で展開するアートプロジェクトで、演劇や異なる文化・言語を持つ人とのコミュニケーションに興味のある人などが参加しています。

プロジェクトを運営する事務局には、shelfの矢野靖人さん(演出家、(国)境ディレクター)・川渕優子さん(俳優、(国)境経理担当)の他に、もとは劇団関係者ではなかった小林真行さん(写真家、(国)境事務局長)、三上悠里さん(グラフィックデザイナー、(国)境広報担当)がいます。

今肩書きを並べただけでも、ものをつくってる人たちばっかり!

自身が表現者でありながら、プロジェクトの事務局も担う人は珍しくありません。ただし(国)境の場合は、長期間(1年~3年単位)のアートプロジェクトを複数人で協働して運営していくことが、初めての人たちばかりでした。

いかにチームでプロジェクトを運営していくかを、一から考えることから始まりました。そして1年目のアートプロジェクトとしていろいろな人を巻き込み、問いを広げ、歩みを進めてきました。

今回はそんな(国)境事務局の1人、デザイナーの三上さんとのやりとりを書いていこうと思います。

グラフィックデザイナー三上さん

広報担当でありながら、(国)境のさまざまなグラフィックデザインも1人で手掛けているのが、個人的に興味深いのです。
イベントチラシやドキュメント冊子など広報物制作の際には、デザイナーなどに外注するプロジェクトが多いなか(国)境の場合は三上さんがいることによって事務局で内製できています。

(国)境内での三上さんの具体的なワークとしては、

広報メイディア運営:SNS(Facebook)記事の執筆、投稿管理
グラフィックデザイン:ロゴデザイン、公式 WEBサイトの設計・デザイン、リーフレットなど紙媒体デザインなど
事務局資料作成:ロードマップ(行程表)のブラッシュアップ、プレゼン資料のレイアウト、プロジェクトの相関図の作成など

まさに三刀流!幅広いですね。
事務局にいるからこその精度と速度で、事業の発信には欠かせない存在となっています。


コロナ禍での仕込み

自粛期間中は、(国)境のプログラムも一旦ストップしました。
私もプロジェクトに伴走するプログラムオフィサーとして今だからそこできる仕込みが何か考え、(国)境事務局に投げかけてみました。
今までの「問い」を蓄積させる場所をつくるのはどうでしょう?と。

(国)境では多くの在留外国人が生活する東京において「見えない国境(壁)」は存在するのか、という問いを出発点に異文化間の距離や接点を探ってきました。
「準備会」と称して、月2〜3度定例会を開き「見えない国境(壁)」にまつわるディスカッションやワークショップを展開していきました。そして回を増していくごとに、キーワードが広がっていきました。
今までもホワイトボードやポストイットなどで書き出す機会はあったものの、それを集約(データ化)する機会がなかったのです。
(国)境事務局としても、その問いやキーワードのどれもが「見えない国境(壁)」に向き合う本プロジェクトの財産になっていくと考え、集約の方法を探ることになりました。

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例:ホワイトボード・ポストイットに書かれた問い/キーワード
・海外から来た人が、日本で何をよりどころにしているか知りたい
・オリンピックやパラリンピックをこえた先に何があるのか考えたい
・アイデンティティーのお葬式がしたい(自己と向き合った先にあるものを考えてみたい)
・新しいこどもの日について考えてみたい(男の子の日でも、女の子の日でもない日について考えたい)
などなど


問いのプラットフォームをつくる

そんなやりとりがあってから、2週間が経った頃。
過去のアーカイブを遡る+どういうフォーマットで落とし込むか熟考した結果「いい意味で深みにハマったので1度見て欲しいです!」と三上さんから返信がありました。

そしてそのマップには、想像を超えたいろいろな要素が同居していました。

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このなかでは「見えない国境(壁)」にまつわるキーワードが概念的・物理的・集団的・個人的と分類されています。
問いそのものを分類するという工夫が、これまでのディスカッションやワークショップをわかりやすく図式化することに繋がっています。そして類似するキーワードが線で繋がり合うことで、新しい問題や発見へと繋がっていくマップが誕生していました。

三上さん曰く「今はまだ1stデザインとして、1人で制作したため恣意性の高いものになっているのが気になる。これから準備会でみんなに見てもらい、キーワードの精査、分類などをやっていきたい」とのこと。
さらにプログラミングができる準備会メンバーと共に情報をサイト化、キーワードをクリックするとエピソードが開き、写真や動画を見られるようにするなど新しい展開も構想中です。
こうして生まれたものが、今後プロジェクトのプロセスを記録する一つの記録媒体になるかもしれない予感がします・・・!

アートプロジェクトは結果が形として残りにくいジャンルです。
しかし(国)境では「問い」という財産を可視化して、残す手法が生まれはじめました。
そして「問い」は次のプロフェッショナル(準備会メンバー)の手に渡り、新しい議題や作品の礎となっていくのです。
事務局メンバーが土を慣らし整備すること、まさしく縁の下の力持ちの存在こそアートプロジェクトには必要なのです。


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