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11月の読書


最後に長編小説読んだけど、『失われた時を求めて』は未だに読みきれない。たぶん今年中にはなんとか。相変わらず短歌本ばかりだが。

『シャギー・ベイン』 ダグラス・スチュアート

『釋迢空ノート』富岡多恵子

『新編 石川啄木』金田一京助(講談社文芸文庫)

『歌ことば事情』安田純生

『岡井隆の現代詩入門―短歌の読み方、詩の読み方 』(詩の森文庫)

『短歌ムック ねむらない樹vol.2』

『チャンドス卿の手紙/アンドレアス』フーゴー・フォン ホーフマンスタール

『短歌ムック ねむらない樹 vol.1』

『寺山修司全歌集 』(講談社学術文庫)

『短歌パラダイス―歌合二十四番勝負』小林恭二 (岩波新書)

『中也を読む 詩と鑑賞』中村稔

『誰にも聞けない短歌の技法 Q&A』日本短歌総研

『シンジケート』穂村弘


2022年11月の読書メーター

2022年11月の読書メーター
読んだ本の数:25冊
読んだページ数:6484ページ
ナイス数:549ナイス

https://bookmeter.com/users/56191/summary/monthly/2022/11
■シャギー・ベイン
デビュー作でブッカー賞受賞は伊達ではなかった。見事なストーリーテラーぶりを発揮するのは、著者が服飾デザイナーであったからだと思う。創作はドレス作りにも譬えられるのは、プルーストや金井美恵子の本にある通りだ。そしてその語り方に『蜘蛛女のキス』のプイグの影響もあると思う。『蜘蛛女のキス』は牢獄での苦痛を和らげる為に映画スターの話をするゲイの話だった。アルコール依存症という牢獄に繋がれた母親と息子の物語。その社会背景にサッチャー政権下の格差社会と右傾化する民族争い(ナショナリズム)もある。
読了日:11月30日 著者:ダグラス・スチュアート
https://bookmeter.com/books/19451081

■20週俳句入門 (角川ソフィア文庫)
短歌ばかりうつつを抜かしていたので俳句が下手になったと思って藤田湘子『新版20週俳句入門』を再び読んだ。一応「新版」を読んだのだが変わったところがあったのか?この本を読むと確かに俳句は作れるのだが、最初に二物衝動を勧めるのでいきなりわかりにくい俳句になって一般受けはしない。シュールレアリズムの世界だから、わかる人にはわかるだろうという感じなのだ。抽象画のように。
いきなり抽象画を見せられてもそこから作者の意図を感じるのは難しいだろう。
読了日:11月28日 著者:藤田 湘子
https://bookmeter.com/books/19514564

■短歌の世界 (岩波新書)
岡井隆の短歌入門書。以前読んだ『短歌入門』に比べて読みやすいエッセイなのかと思ったら最後に「基本十箇条を考える」が岡井隆が言いたいことのすべてだった。それまでは短歌で言うところの助(序)言葉みたいなもので、エッセイ的に過去の短歌から最近の短歌まで述べている。それをまとめるとうたは過去のうたの集積として現在の自分が置かれている最先端の歌があるということ。それが岡井隆の前衛(性)短歌なのだ。ラジカルというのは「根源」のことであると間章も言っていた。もう一つは短歌における「私性」の問題。共同体の問題でもある
読了日:11月27日 著者:岡井 隆
https://bookmeter.com/books/31860

■短歌ムック ねむらない樹 vol.3
特集「映画と短歌」は歌人が映画を観に行って感想を言ってもそれほど面白いとは思わない。むしろそれを短歌にして並べるとか。感想のあとに短歌というのはあったのだが。そういう歌をもっと紹介して欲しかった。特集「短歌の言葉と出会ったとき」
むしろこっちの特集の方が初心者には面白い。歌人(歌人でない人もいるが)どのへんから短歌にのめり込んだのかという話は興味深いのだ。それぞれの歌人の出自が伺える。特集とは関係ないが、土岐友浩「学生短歌からはじまった③」は大学の歌会で出会った友人のエピソード。幻の歌人みたいだな。
読了日:11月26日 著者:
https://bookmeter.com/books/14126347

■短歌 2022年3月号
『短歌 2022年7月号』の読書欄を読んで、啄木の記事(『啄木ごっこ』松村正直)が金田一京助の記事だと知って読みたくなった。記事は金田一京助『石川啄木』を踏まえたようで新しいことは書いてないような。それ以外にも、「詠嘆の可能性」や「落合直文」という知らない歌人の興味もあった。短歌が万葉の和歌の時代から歌い手の感情をものに寄せ、それに人々が共感してゆくという詠嘆のうたとして存在し続けたのは事実であろう。
読了日:11月24日 著者:
https://bookmeter.com/books/19418701

■釈迢空歌集 (岩波文庫)
短歌をやろうとして、どうしてもネックになるのが五七調の韻律なのだ。そのところを勉強しようと思って『釈迢空歌集』を読み始めたのは、歌意よりもただその韻律が気持ちよかったからかもしれない。釈迢空短歌の特徴として、句読点がある。それは『口訳万葉集』でも折口信夫が付けていた読みの方法。つまり文語であるものを口訳するための記号なのだ。それは漢詩を和訳するために付けられた方法とかに近いのかもしれない。つまり客観的に読みを指示しているのだ。それはすでに五七調が滅びつつあり、その形骸の中に釈迢空の韻律を忍ばせているのだ
読了日:11月22日 著者:折口 信夫
https://bookmeter.com/books/629849

■釋迢空ノート (岩波現代文庫)
大阪出身の詩人であった富岡多恵子が釈迢空の短歌から読み取ろとしたのは、釈迢空の「批評」性であり、それは短歌の韻律七五調が生み出す日本の叙情ということである。同じ万葉調の短歌を目指しながら斎藤茂吉との分岐点は、それを当たり前のように受け入れるのか、そこに批評性を持って立ち向かのかという短歌の姿勢にあった。すでに釈迢空は五七調の韻律である短歌は滅びつつある定形だと見ていた。それを「ごーすと」性と呼ぶのだが、短歌は前近代の幽霊を呼び覚ます呪術という思考があったものと思われる。それは「明かしえぬ共同体」なのだ。
読了日:11月22日 著者:富岡 多惠子
https://bookmeter.com/books/275730

■新編 石川啄木 (講談社文芸文庫)
渋民村の神童として注目された石川啄木とは同じ郷川の川上の人が啄木であり、川下の出身が金田一京助であった。同郷というのは盛岡の小学校へ啄木が転入してきたときだが、金田一の方が4歳年上啄木の十歳の時だった。金田一京助が石川啄木と知り合うのは、そういした神童時代を過ぎて、啄木が極貧生活の中で東京でやっていこうとする芽が出ない作家時代であり、東京の生活の中では同郷である後輩の啄木の才能を信じて援助することになった。
読了日:11月20日 著者:金田一 京助
https://bookmeter.com/books/649241

■歌ことば事情
短歌に用いられる文語表現文法的な正しさよりも過去の使用例によって用いられることが多く、文法的には正しくない歌でも短歌界では平然と用いられている場合がある。筆写自身は文語体の歌人であるから、そういうことに注意深くなるが、とりわけそれを否定するものでもない。なぜならそれは啄木の歌や茂吉の歌にも用いられているからだ。著者が主張するのは、現代の文語短歌を正確に出来る人はまれにしかいないという。何を持って文語とするのかが問題で著者は平安時代に歌われた短歌をその基に置いているが、それも時代と共に用法は変化していく。
読了日:11月19日 著者:安田 純生
https://bookmeter.com/books/3907448

■近代詩から現代詩へ―明治、大正、昭和の詩人 (詩の森文庫 4)
こういう入門書はテーマが見えてこないとただ詩人の羅列になってしまって、気になる詩人のページを読むと物足りないし、知らない詩人にはそれほど興味がわかない。先に読んだ『岡井隆の現代詩入門』の方が面白かった。また『東京詩集』のようなテーマ性のある詩史の本の方が面白い。
そんな中で三好達治『駱駝の瘤にまたがって』は長詩がそのまま収めれていて好感が持てた。三好達治は要チェック。
読了日:11月18日 著者:鮎川 信夫
https://bookmeter.com/books/368340

■短歌 2022年6月号
短歌雑誌も読み慣れてくると批評の言葉なんか理解できるようになる。この号では特集「人称フロンティア」が面白かった。まだ短歌界は閉鎖的なんだというか、この雑誌が伝統短歌寄りだからなのか?
いろいろ変化はあるようだが。
https://note.com/aoyadokari/n/n240c68c89414
読了日:11月17日 著者:
https://bookmeter.com/books/19782407

■茂吉秀歌『赤光』百首 (講談社文芸文庫)
万葉の「寄物陳思(きぶつちんし)」は物に寄せて自分の心情を発露するという方法を取りながらもその物は幻視的であり写生というよりは象徴なのだという論理が塚本邦雄の斎藤茂吉解釈であるようだ。古典から題材を汲み取っていきながら象徴的に物語を語るのが、塚本のいう前衛短歌と合致するという。その写生という無味乾燥的なものだけではなく、象徴という浪漫主義(古典の世界)的なものがあると読む。その読みに過剰な印象主義的な思い込みが有りすぎる感じが批評としてはここまでぶっ飛んでくれると面白い。
読了日:11月16日 著者:塚本 邦雄
https://bookmeter.com/books/14653317

■岡井隆の現代詩入門―短歌の読み方、詩の読み方 (詩の森文庫)
歌人でもある岡井隆が現代詩を読んでいく。現代詩の韻律は短歌や俳句のような七五調のものが多いという。詠みやすさとわかり易さなのかな。中也や宮沢賢治から谷川俊太郎の詩のイメージ。勿論そうじゃない現代詩も多いのだがそれらは視覚的効果を狙ったもの。声を出して読むような詩は日本人には七五調に懐かしさを感じるような。それとは別にラップ調は七五調でもないと思うのだが、韻律はけっこう大事だと思うこの頃。https://note.com/aoyadokari/n/ne1db8b11b236
読了日:11月16日 著者:岡井 隆
https://bookmeter.com/books/31857

■短歌ムック ねむらない樹vol.2
創刊号が面白く刺激も受けたので第2号も図書館で借りた。現代短歌とのギャップを感じてしまうので、それを埋めるためでもあったのだが、参考になる。ただ作品よりも対談とかを中心に読む感じである。作品の良さはあまりわからないです。一番良かったのは「第1回 笹井宏之賞」の大賞 柴田葵「母の愛、僕のラブ」。連作短歌でストーリー性がある。一首でわかるより、こういうテーマ性がある連作短歌の方がよく読めるのかもしれない。https://note.com/aoyadokari/n/n64f79d79af25
読了日:11月13日 著者:
https://bookmeter.com/books/13431816

■中也を読む 詩と鑑賞 新版
大岡昇平『中原中也』では息子の死が転機となって、贖罪の詩を書いたということだが、関係がなかった。それは小林秀雄に手渡したときにそういう表記がなされなかったこと(日付を入れなかった。息子に捧げられたとする『含恥』は息子の生まれる前に書かれていた)。つまり小林秀雄がそういう読みに誘導したのではないかと思われる。中也の中にあるのは懺悔の詩というより郷愁を求める詩なのだ。それは、異教徒の歌であった。
読了日:11月13日 著者:中村稔
https://bookmeter.com/books/7992767

■てんとろり 笹井宏之第二歌集
笹井裕之の短歌を知ったのは、穂村弘『短歌ノート』に取り上げられていたからだ。穂村弘の名批評もあったので、笹井裕之の短歌以上に気に入ってしまった。そのぐらいの傑作を最初の歌集で作ってしまったのだ。そして夭折。彼の短歌に対するひたむきさと大胆さ。それは二冊目の歌集でも感じられただろうか?

残念ながら大胆さは消えてしまったように思える。作家にとって二作目は鬼門である。一作目を越えようとするし、批評の言葉も入ってくるだろう。だから先人の歌に対峙するようになる。
読了日:11月11日 著者:笹井 宏之
https://bookmeter.com/books/2028671

■チャンドス卿の手紙/アンドレアス (光文社古典新訳文庫)
ウィーン世紀末の作家ホフマンスタールを決定付けた『チャンドス卿の手紙』は、芸術を志す詩人のような表現者である主人公(貴族的)の足元が崩壊して、精神の彷徨う姿を描いている。それは今の電脳空間の社会とも関係があるよに思える。つまり精神と肉体が分離されて、身体が彷徨うしかない状態なのだ。そこに主人公は言葉の限界(電脳社会に通じる)を感じ神の姿を見てしまうのだ。それは世界の現れとしての神で、ベーコンへの手紙という作品スタイルも、そういう精神世界のことに言及しているのだ。
読了日:11月10日 著者:フーゴー・フォン ホーフマンスタール
https://bookmeter.com/books/13266944

■短歌パラダイス―歌合二十四番勝負 (岩波新書)
図書館本。小林恭二は俳句の句会の本を読んだことがありました。そっちも面白く句会したいなあと思ったけどオンライン句会に参加したぐらいで、そのときはなんか内輪で馴染めなかった。いつもそうなんですが。この歌合は、句会のような個人戦ではなく団体戦です。句会は俳句を詠む楽しさにあるとすれば、歌合は相手の歌を批評して自分たちのチームの歌をよく見せるというゲーム。素人は批評がそこまで厳しく言えないので(俳句甲子園は別ですけど)このような歌合はなかなか出来ないと思いますが大学対抗とか結社対抗だったらできるのかもしれない。
読了日:11月09日 著者:小林 恭二
https://bookmeter.com/books/476831

■短歌ムック ねむらない樹 vol.1
「眠らない樹」というのは、笹井宏之の短歌から来ているようだ。「ねむらないただ一本の樹となってあなたのワンピースに実を落とす  笹井宏之」
イメージしては孤独な歌人の歌の夢が見知らぬ読者(あなた)に手渡す歌の種という相聞歌だろうか。その関係性があわい恋のようで、夭折した歌人の言霊を後世に伝えたいという気持ちが籠もっているネーミングだと思う。
創刊号は、それぞれの人の思いがこもっているから読み応えはある。一番面白かったのは、特集「ニューウェーブ30年」の対談かな。現代短歌の流れを理解できた。

読了日:11月06日 著者:
https://bookmeter.com/books/13009313

■寺山修司全歌集 (講談社学術文庫)
https://note.com/aoyadokari/n/n0f763aeaad0f
読了日:11月05日 著者:寺山 修司
https://bookmeter.com/books/4059957

■短歌 2022年5月号
先月から短歌雑誌を読んで現代短歌の動向などを知りたくページを捲ってます。わかりやすい短歌もあればさっぱりわからない短歌もあり、まだまだ全てを理解するのは先になりそうです。でも読み慣れてくると面白いのかもしれないです。短歌と言ってもいろんなスタイルがあるのだなと。それだけでも勉強になります。
それでも一番面白かったのが読書欄って、どういう読み方をしているんだ。https://note.com/aoyadokari/n/n35812510024b
読了日:11月04日 著者:
https://bookmeter.com/books/19669282

■誤読された万葉集 (新潮新書)
図書館本。『芭蕉・蕪村 春夏秋冬を詠む 秋冬編』の推薦図書だったのか?気になったので読んでみた。和歌の成り立ちが呪術にあるということ。それが色濃く現れているのが『万葉集』で徐々に呪術性が消えて行くのが『古今和歌集』であるのだ。それは突然変わったというより、徐々に、例えば呪術が恋占となり、相聞歌が恋の歌となっていくように。旅の歌がその土地を称えること(天皇の国見もその一部かもしれない)と残してきた妻を想う気持ちだったのだが、最初は旅の安全を祈る父母の祈り的なものが、防人のうたにあるという。
読了日:11月03日 著者:古橋 信孝
https://bookmeter.com/books/181618

■ぼくの鎌倉散歩
作家の地元案内的な文学に最近惹かれている。わかりやすいのは永井荷風の江戸情緒残る下町散策の文学だが、田村隆一も鎌倉に中世の面影と近代化されていく成金(バブル時代)の観光地・造成地としての二面を見ている。消えゆく鎌倉の街は、その名前に中世の面影を残す。大通りの渋滞を避けて細い路地に入るとまだまだそうした鎌倉を感じさせる場所があるという。鎌倉には様々な山があり(丘という感じなのだが)、そこをてくてくとどこまでも上がっていく田村隆一を想像すると、やっぱこの人はダンディーなのかもしれないと思ってしまう。
読了日:11月03日 著者:田村 隆一
https://bookmeter.com/books/17165582

■誰にも聞けない短歌の技法 Q&A
短歌について何か学べる本はないかと物色していたときに図書館で手に取った本である。何がいいのかというと古すぎない現代短歌の指向性がはっきり述べられていたからである。それはあえて文語や旧送り仮名でつくる必要はないという。しかし例題はそういう短歌が多いのだ。現代口語で短歌を作れる人は、まだまだそれほどいないのかな。伝統短歌と新しい表現の矛盾を解決するには遠いけどヒントになる部分はあるかもしれない。
https://note.com/aoyadokari/n/n30c3ee0c59b1
読了日:11月01日 著者:日本短歌総研
https://bookmeter.com/books/12756406

■シンジケート
図書館本なので旧装版。高橋源一郎の解説が付くか付かないかの違いだけなのか?よくわからないですが『シンジケート』は最初に12ヶ月の短歌の連作。こういう感じの短歌集のオープニングは新鮮だし、何より真似して短歌を作ってみたくなる。まだ初心者の私が短歌づくりの指標にしていた歌集です。その成果はなかなかでないけど。特徴としては、カタカナの積極的使用。モダンな気分の中に退廃の匂い(バブルが弾けた感の)短歌。虚構世界。1990年という雰囲気があります。
読了日:11月01日 著者:穂村 弘
https://bookmeter.com/books/512515


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