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短歌から谷川俊太郎の現代詩まで

『岡井隆の現代詩入門―短歌の読み方、詩の読み方 』(詩の森文庫)

飽くなき探究心で、すべての形式を試みつくした歌人による現代詩入門。朔太郎、中也から谷川俊太郎、大岡信、そして最新現代詩まで。日本語の生理を厳しく問いつめた勁健な論理、犀利な観察が新たな鑑賞の地平を拓く。

目次
私の現代詩入門
短歌の読み方、詩の読み方
立原道造の一四行詩から谷川俊太郎のソネットまで
萩原朔太郎―『青猫』論
中原中也―「一つのメルヘン」注
三好達治―樞
瀧口修造―両棲類私注
吉岡実―意味と韻律の魅力
吉本隆明―「最後の場所」は何処か
大岡信―“霧のなかから出現する”大岡詩のためのメモランダム
谷川俊太郎―「詩人」と歌人

紀伊国屋書店紹介文

歌人でもある岡井隆が現代詩を読んでいく。現代詩の韻律は短歌や俳句のような七五調のものが多いという。詠みやすさとわかり易さなのかな。中也や宮沢賢治から谷川俊太郎の詩のイメージ。勿論そうじゃない現代詩も多いのだがそれらは視覚的効果を狙ったもの。声を出して読むような詩は日本人には七五調に懐かしさを感じるような。それとは別にラップ調は七五調でもないと思うのだが、韻律はけっこう大事だと思うこの頃。

蜂飼耳(はちかいみみ)すでに名前からして現代詩っぽいですね。彼女の難解の詩も短歌の七五調によって、音韻を辿ることが出来る。それは短歌の文語体である韻律を意識したものだと。詩は文語詩よりも口語詩が全盛だが、萩原朔太郎が文語詩の回帰を行った。

短歌の読み方、では斎藤茂吉の「万葉調」ついて。茂吉は古語風な造形語を短歌の中に入れるのだがそれは、故郷山形の方言的な私的言語なのである。それを万葉調の韻律に乗せて、共通言語と詩的(私的)言語の間を行ったり来たりする。その温もりみたいなもの。また一首だけではなく連歌によって物語的にテーマ性を開示するので、一首だけでは汲み取れないことでも朧気ながら読めてくる。短歌には連歌させることで一首で読み込めないテーマ性を読み取れるのだ。また五七五七七の本体以外に題や断り書きでその時の内容を示している場合もある。一首をで分からない言葉もゆっくり読ませる効用があるのだ。

立原道造は萩原朔太郎の弟子という位置だったけど後年の朔太郎には批判的だった。彼の四行詩にスポットを当てている。

そして萩原朔太郎『青猫』論。興味深い内容です。

近代詩で文語の韻律でこれを上手く使ったのが中原中也だった。彼は短歌からダダ、そして近代詩的な短歌的な韻律の調べを取り入れながら文語で表現する。それは萩原朔太郎や宮沢賢治からの流れで中也によって、メルヘン的な近代詩のスタイルが確立したと見る。そして、それは谷川俊太郎に綱投げていく。

三好達治、瀧口修造、吉岡実、吉本隆明、大岡信は難解でした。実験的な詩の変遷という感じでしょうか?実験的でも大岡信になると日本回帰していくのが興味深い。

その反対にいるのが、谷川俊太郎なのかな。彼の詩は境界線を無くす。他ジャンルとのコラボということもあるが、あらゆる世代に読まれている現代詩だと思う。口語の魅力がある。


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