青乃

暮らしの中での「私」と「物」との関係をテーマに、普段思ったことなど書いています。時々読…

青乃

暮らしの中での「私」と「物」との関係をテーマに、普段思ったことなど書いています。時々読書会に参加して感想文を書きます。 https://twitter.com/aonokenk

マガジン

  • 日常雑感

    文章に慣れるために普段思ったことなどを書いたもの

  • 「コラムの手前のざっとした文」或いは「小説未満」

    「私」を題材とした創作です。

  • 読書感想文

    信州読書会さんに参加させて頂いた時の読書感想文を中心に。個人的に書いた読書感想文も載せています。

  • 世界名作劇場『小公女セーラ』について

    子供の頃見て衝撃的だったアニメ、世界名作劇場『小公女セーラ』を大人になってから改めて全編見なおした感想を書きました

  • 読書以外の感想文

最近の記事

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わたし的そうじぜん

庭掃除をする。  何も考えず、行えば行った様になる。 あらゆる出来事が遠ざかって、正確に一人きりになっていく。 手入れの行き届かない庭なので、その度に大層になる。硬い竹箒で外側から履くと、驚く程の量の枯葉が集まる。夢中で葉を集めていると真っ赤な南天の実が突然目の前で揺れる。どうしても引き抜けない草の根を掘り起こすと、まるで水に映った世界がそのまま奥にあるように、地上と変わらず根が伸び続けている。土を掘り起こしてフカフカにすれば、ツグミかヒタキかが飛んできて、柵の上に器用に

    • ウブとすれ

      平日休みに銭湯に行ったら、帰りにたまたま友人と会った。 せっかくだからと、一緒に銭湯の近くにあるファミレスに久しぶり行ったのだが、例の料理を運んで来るロボット給仕が気になって仕方ない。 あいつが噂の…と思いながら、様子を見ながら食事をする。 奴がやり甲斐を感じているのかどうかは知らないが、ホールでは満遍なく良い動きをしていた。 あいつも、店が終わったら、おつかれ様ですと店長に挨拶し、店を出て鞄をぶらぶらさせながら、明日は休みだからたまには外でひとっ風呂浴びるかとか言ってや

      • 全自動一石投じ機

        ここ数ヶ月、仕事をしたり出かけたり寝たり、風呂に入ったり映画を見たり寝たり、食べたり歯磨きしたり寝たりしながら、時々文章も書いてますが、いつも以上にまとまらず、noteを更新できません。 更新したいと思いながら更新できず二ヶ月近く経ってしまいました。 更新したいのにできないのは、実は初めてのことで、一体何事なのかと先程15分ほど考えてみました。 結論として、これは思春期のようなものだと思います。 子供の頃は平気で異性と会話できていたのに、第二次性徴期を迎え、これまでなかっ

        • 一人の怠慢な中年の「萌え」の始まりと葛藤と「猿の根付」

          家に帰る途中で、くたびれた。 乗り換えの電車に乗るのさえも、億劫になってしまった。 寄り道をして喫茶店で一服していたらば、隣席で熱烈に、「推し」とその「萌え」のポイントについて語る妙齢のご婦人方の声が聞こえてくる。 ご婦人の推しはどうやら、とある漫画の登場人物だ。 妙齢で二次元萌えとは業の深いことよ、と物知らずに思うが、結局愛のあるファンほどプレゼンに最適な人物はいない。 私は自然に耳をそば立てていた。 盗み聞きは、はしたない事だ。 それだけはしてはいけない、という

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        記事

          怪しい人が通る!

          引用は昨年のTwitterから。 歴史は繰り返す。 暖かくなってくると、今年ももれなく怪しい人が外に出てくる。 その怪しい人とは私の事だ。 なぜ春になると外に出てしまうのだろう。 花が咲いているからだろうか。 暖かいからだろうか。 決して、浮かれているばかりでもない。 春の私は、いつもそこはかとない焦燥感を抱えている。 そして、気がつけば寝巻きと兼用しているもれなく毛玉付きの室内着という状態のまま、玄関から外へ、はみ出ている。 冬のピンと張り詰めた空気が好きである。 寒い

          怪しい人が通る!

          暮らしの中で美味しかったもの(2022年度)

          ※RTで繋いでいる暮らしの中の美味しいもの記録を2022年度版でnoteにまとめました。 引用 青乃Twitter https://twitter.com/aonokenk

          暮らしの中で美味しかったもの(2022年度)

          春の夜と、異形の者たち

          春がくる。 乾いた冬の空気は、少しずつ湿気を帯びていく。 一雨ごとに春に近づくのが分かる。 雨は、土の匂いを、部屋にいる私まで運んでくれる。 今日は春の匂いがする、そう思うが、何も言わない。 忙しいと口に出す人は仕事ができないと思われるらしい。 2月の私は無言であった。 人生という限られた時間の中での仕事と余暇のバランスは難しい。 すぐに余暇に偏ってしまい仕事の時間が足りなくなる。 うっかり口をひらけば忙しいと言ってしまいそうだ。 黙っているに限る、そう思っていたけど、段

          春の夜と、異形の者たち

          締切のはなし

          守れなかった締切の向こうにあるのは、無の世界である。 無の世界は怖い。 だから何があってもその期日だけは守らなければならない。 しかし、あろうことか、時にその締日を伸ばしてしまうことがある。この時点で締切は守られていないが、日にちを伸ばした瞬間に開放感が生まれる。 まさに金を借りて喜んでいる博打野郎状態、もっと悪く言えば、馬鹿の無双状態である。 借りた時間なのに、もらった気になっている。 冒頭は私が10月に呟いたTwitterである。 自分が大人になったなと思う時は、近

          締切のはなし

          「千歳橋」の菓子について

          「老舗「千歳橋」の和菓子を持って初老コンシェルジュに御礼に伺うと、わたくしはお気持ちだけで結構なのです、と目を見てはっきりと言われ、お礼に物を持っていった自分をひどく恥ずかしく思う」 という夢を見た。 「千歳橋」などという菓子屋などこの世に無い。 初老も知らぬ人であるし、よくよく考えれば「コンシェルジュ」という職業自体に馴染みがなくよく分かっていない。当然ながらそのような職種の人にお世話になった事もない。 夢ながら、かなり背伸びしているなと思う。 私がこの件で一番悔やま

          「千歳橋」の菓子について

          梶井基次郎著「冬の日」読書感想文

          梶井基次郎の小説を数作しか読んでいませんが毎回良いなと思います。 作中の堯は病を持っていて、更にそれが人に伝染る病で、亡くなっていく過程も身近な人を通して知っています。 (引用) 俺が愛した部屋。 (中略) がしかしそれも、脱ぎ棄てた宿屋の褞袍がいつしか自分自身の身体をそのなかに髣髴させて来る作用とわずかもちがったことはないではないか。あの無感覚な屋根瓦や窓硝子をこうしてじっと見ていると、俺はだんだん通行人のような心になって来る。 (中略) 早く電燈でも来ればよい。あの窓

          梶井基次郎著「冬の日」読書感想文

          ひいちにちの終わり

          その手紙は、末文だけが太文字だった。 花柄の便箋に女性らしい柔らかな文字で綴られた後ろにやや不釣り合いなマジック(太)で書いたと思われるその言葉は見慣れないものであった。 あなたに全ての良きことが雪崩のごとくおきます 一瞬、雪崩というフレーズに引っ張られすぎて「良きこと」に埋もれながらも首だけ出している姿、お笑いマンガ道場の冨永一郎の描く土管のイラストのような己を想像した私は多分疲れているのだと思う。 さる著名人の言葉だそうで、大雑把に言うと、周りの幸せを祈ることで全

          ひいちにちの終わり

          ブーメランが突き刺さる

          大学時代、映画サークルに所属していたことがある。 そのサークルでは、「人より多くの本数を見ている」ということがステータスであり、それがマニアックであるほどに良いという謎の習わしがあった。 映画批評と称したミーティングのような集まりが妙に殺伐としており、一年の私は思ってたのと何か違う…の連続であった。 今思い出しても相当偏った変な集団だったと思う。 最終的には内輪での恋愛沙汰が次々に起こりどんどん閉塞感が増し、カースト下位の私のような者も、なぜか余り者同士でサークル内の誰かと

          ブーメランが突き刺さる

          日常雑感 「注射」

          先日入院した時の話である。 日々代わる代わるに看護師が来ては私の体の世話をしてくれた。 色々な看護師がいる。 大体は忙殺されているので、当たりが強いのだが、たまに本当に天使が舞い降りたのかと思うほど優しい看護婦もいる。 中堅どころはあらゆる仕事を任されているようで、忙しさのあまり疲れ果て恐らく本人にも気づかないうちに何処かに怒りを溜めている、ように見える。 新人と現場の超ベテランは割に当たりが柔らかい。   入院中は体力が落ちているのでそれに対して色々と思わない。何かを

          日常雑感 「注射」

          日常雑感 「季刊 中年生活」

          先日唐突にサントリーオールドのCMを思い出した。 「恋は遠い日の花火ではない」 田中裕子と長塚京三、2バージョンで何種類もある例のCM。 音楽は、あの有名なダンダンドゥーディダンのアレである。 後に歌詞がついていた気がする。あまりに有名すぎるその作曲家の名前は完全にど忘れしてしまった。 近頃覚えていることと覚えていないことのムラがひどい。 記憶力が低下しているくせに、やたらと昔のものを懐かしむことが増え、いよいよ脳が衰えていると危機感を感じる。 そしてちゃんと衰えたところ

          日常雑感 「季刊 中年生活」

          日常雑感 「毒入りスープのもと」

          知人に顔を見るのが上手い人がいる。 私は顔相占いなどは信用していない。 データーを系統だててしまう時点で、どこか大雑把な気がする。 その人は系統にせずに読んでいる。 子供の頃に両親から、他人の様子をじっと見るのは無礼なことだと言われ、成程そういうものかと馬鹿真面目に従順に教えを守っていた私は全く人の顔が読めない。 顔を見ていないからである。 名前は覚えられるのに顔は忘れてしまうので、昔あった人に偶然声をかけられるとなぜ私を覚えているのかとびっくりして名前を聞いてまたびっく

          日常雑感 「毒入りスープのもと」

          療養日和

          白粥ばかり食べていると顔立ちがぼんやりする。 鏡を見なくても分かる。 薄い粥の中の沈んだ米粒のように、私の顔も曖昧になっているはずだ。 そう思いながら、日向を背中に当てて横になっている。 入院生活は快適だった。 痛いことは多かったが、私は自分の身体が良くなることだけを目指せばよかったし、誰の目も気にせずに、身なりも構わず、まるで子供に戻ったように決められた時間に眠り、もしも少しでも食べて歩くことが出来たら、それは何より喜ばしいことでそれ以上他に望むことは何も無い。 ただ日

          療養日和