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#家族
【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】砂の城 第5話 忍sideー 事故
俺には、記憶が無い。
自分という存在を確認するものは普通運転免許証と、俺が目を覚ました時に綺麗な顔をぐしゃぐしゃに泣いて病院まで飛んできたガリ勉野郎の雨宮弘樹って野郎だけだ。
どうせなら、目覚めた時に綺麗な女の子に会いたかったけど、そんな夢みたいな事は言っていられない。
そう、俺は一度死んだようなモンだ。
医者の話によると、どうやら俺は家族に勘当されているらしく、この携帯にあった雨
【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】砂の城 第17話 忍sideー 子供
N大附属病院は意外と働きやすい場所で、俺みたいに資格を持たない奴にもみんな優しく接してくれた。
特に看護師さん達は動けない患者さんの世話をするのが大変みたいで、俺でもそこそこ役に立っているらしい。
何ヶ月働けるかな、なんてぼんやりと考えていたものが、気がついたらもう一年が経過していた。俺の後輩に当たる男性の介護助手も一人入ってくれたので、益々話しやすい環境になって万々歳だった。
丁度その
【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】砂の城 第32話 ケジメ
「……田畑さん、本当にいいんですね?」
看護師長さんにもう一度念押しされた。この病棟に入る事の意味、決して遊びでは済まされない事。
忍以外にも人を刺した彼女の母親は、ここに面会に来る事は出来ない。そして彼女は大好きな母親に会えなくなった事でさらに心を病んだ。
市役所で会った時は、はつらつとした笑顔で自分の母親が煌びやかである事を語っていたが、2回目に雪ちゃんと彼女を見かけた時は別人だった
【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】砂の城 第33話 砂の城
翌日、弘樹さんと佳奈ちゃんの薬について相談した。
佳奈ちゃんを更生させる話はトントン拍子で進み、目が届くなら私と一緒でも構わないとの連絡を受けた。
勿論私の決断に大反対したのは忍だ。元々私を殺そうとした女の子供なんて無視して放っておけばいいと電話越しでも分かるくらい怒っていた。
彼女がおかしくなってしまったのは、私が中途半端な気持ちで働いていたからで、佳奈ちゃんの母親だって最初から狂って
【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】砂の城 第35話 忍sideー 和解
『もしもししのぶ〜、まいたん泣かせてないよね?』
「……俺の方が泣かされてんだよ」
開口一番、蒼空からの少し不機嫌そうな言葉に俺は苦笑しかなかった。
弘樹の連絡は無視していたが、流石に雪ちゃんの電話は断れない。
蒼空は愛くるしい声でいつも通り麻衣を一番に心配してくる。おいおい、ずっと逢えなくて泣きたいのはこっちだっつの。
『なんでしのぶ、まいたんに逢えないの?』
「さあな。俺の方が聞
【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】砂の城 第36話 変わらない気持ち
病気でも無いのに医者と弘樹さんのお陰で長々精神科病棟に置いて貰った私は忍と一緒にお菓子を買いにとある大手デパートへ行った。
「あれ──麻衣ちゃん?」
ふと幾つか高級お菓子コーナーを覗いていると相変わらずビシッとスーツを着こなした霧雨さんがニコニコ微笑んで立っていた。
「まさかこんな場所で会うなんて。これも神様のお導きだろうか」
「え、えっと……霧雨さんお久しぶりですね、どうして、こちら