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サニー  シロップ付けの こももをあげるよ "詩とか散文"

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詩や歩き方・過ごし方 出来事を綴ります
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記事一覧

金網の向こう側

金網の向こう側

キラキラと光るもの
緑色の苔が高架下でこんもり育っている
アスファルトの黒い海で浮かぶ島のよう
青々としげり
朝日を浴びて光っている

高架下の箱庭
金網で囲まれた敷地の片隅にある世界

金網の向こう側は
フードコートでカレーライスを食べながら
同期と話す
わたしが発見する真実

金網の向こう側に広がる世界には
ベッドがきしむ様な激しさはなく
頭が痛くなるほどの甘さもない
風はそよそよ

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おはよう

おはよう
真夜中に淡い光が点滅する
おはよう
パリの夜明け
コップを置く乾いた音がする

サングラスをかけて大股で歩く
大きな声で笑う
犬が吠える

マイクを握るきみが
吐き出す言葉は
私を震わせ世界を響かせる

すみれ色の地下
手を広げ
腰をかがめ
低い姿勢から声を出す

町の喧騒
木々のざわめき
雨上がりの靴の音

タンバリンを振る
シャララ
シャリリン
タンバリンを振る

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秋吉くん

秋吉くん

透き通った白いもの

りんごを剥く

ティーポットへお湯を注ぐ

蛇口から水滴が落ちる

りんごを剥く

手をとめて 窓の外をみつめる

プラタナスの葉が

空気中の水分を包み

澄み切った大気を満たす

遠くには沈む夕日と

白煙をあげる3本の煙突

もくもくと白い煙は空にまっすぐ吸い込まれて行く

りんごを剥く音は

シンクへ落ちる水滴の音と重なる

晩秋という名のりんご

暗闇の赤りんご

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4000年後という時間



23時を過ぎたころでした。息子とだらだら話をしているうちに、自殺をしたら輪廻転生出来ないという話になったのは。私は息子に「自殺をした人は現世には戻れないらしいよ?」って言ったら、彼は「それじゃ人が足りないでしょう」と返して来た。
「自殺率は高いし、少子高齢化は進んでいるし、あながち戒めとかで言われているとは思えないんじゃない?」って言ったら息子は「でも、世界の人口は増えているんだよ?」って。

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あじさいとそぼろとハツカネズミ

頭の中では、雪平鍋の中で
お醤油お砂糖みりんが煮立っており
その中へ鶏ひき肉を入れ
ゆっくりほぐす映像が流れている

踏み切りの遮断機があがり
一歩ずつ歩きだすと
火が通ったひき肉が少しずつ
ほろほろと解れだす

歩いているうちに不安な気持ちも
ほろほろ崩れゆく

無意識に駅の改札を通り
階段を降りる

ホーム中程で電車が入って来るのを
待っていると
カーブした線路で風を巻き上げながら
電車が

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カレールーのその後

道端に落ちていたカレールーを拾って、踏み切り脇に置いて来た翌日、出勤しながらその場所を確認すると、甘口のカレールーはまだ存在していました。
黄色と黒の遮断機を囲むガードの上でカレールーは黄色いパッケージで「ここにいますよ」と主張。
やんわりとですよ、ちょっと平坦な囲いにわずかな凸面があるくらいの異物感。

踏み切りを渡る車がどのくらい気にかけるかというと、2割くらい。自転車なら、もう少し気がつくか

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ビスケットとトンボ

ビスケットとトンボ

ノートには、白線しか
ありません

影が見えるくらいです

ビスケットには、小さな穴が
あいています

甘い香りがします

ビスケットをかじると、
落ちた欠片がノートに散らばり
スカートに落ちて
床を汚します

窓辺から
風が吹いて来て、
髪をゆらします

ノートには
散文が散らばり
スカートに落ちて
床を汚します

メガネを外し
目をこすり
頬杖をつきます

髪をゆらす風が
トンボマークの鉛筆を

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喉を潤す水

喉を潤す水

お会いして
今度また
そう伝えたのは、
確か
300000000個の卵を

産みつけた後でした
葉の葉脈を頼りに
歩いて来たのは

全ての器官から集められた
エネルギーを
消費しての事

おいそれと
手鏡を渡しては
ならないと

隣の人が
言うのです

葉の葉脈を頼りに
歩いて来たのは

朝もやが濃かったから
しぶしぶ歩いて来たのです

前がよく見えないから
葉の葉脈を頼りに
歩いて来た

窓辺に

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些細なこと

些細なこと

さき程まで空にはたくさん
色とりどりの風船が舞っていたのに

夕暮れになり
北よりの冷たい風が
強まり出した頃

不気味な雲は音も無く近づき
突風をかます

バランスを崩せ
逃げ出そうとする背中にも
容赦なく

強い風とコールタールのあめ

おぼつかない足取りで
構築した危うい理論は
破綻しながらたどる
プロセス

あのプロセス
朽ち果てたプロセスとともに
現れたすべてのプロセス チーズ

小さな

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それから

それから

白いエプロンがキッチンの床にずり落ち
お化けを呼びに行く

草原にも夜が訪ねてきたので
月明かりを灯して出迎える

食べ残したかまぼこは
お供えに
油揚げは、しまい込む

石段を駆け上がり行き着いた先は

きみの家

広い玄関には青い花瓶とハイビスカス

部屋の隅から闇は広がり足首をさわる

夜明け前 鳥たちが支度を始めたので
向こう岸へ
お別れの挨拶をする

さよなら 夜

あたりがすみれ色に染

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カイト

カイト

冬の海風にのって

凧は突き進む



よく澄んだ青空を

凧は海を見下ろし

冬の柔らかい光で照らさ

静かにないだ海

淡い世界をみつめる

子どもたち 大人たち 犬たちを

たこはさがす

森の向こう側に広がる町並み

大きな公園

岸向こうに広がる工場地帯

連なるサイロ

船が港を出て自動車が橋を渡る

釣竿をさげた子どもが桟橋を駈けるころ



たかい

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きみへ

きみへ

どうして?空を仰ぎ見ると
なみだがポツリポツリと
落ちて来る

どうしてなの?
羊雲のお母さんが
赤ちゃんを無くしたからさ

昨日の強風で吹き飛ばされて
無くしてしまったんだ

空からは水滴が後から後から
落ちて来る
溢れ出る涙は
押さえきれず

ただ
ただ乾いた地面を埋めて行く

みんな待ちに待った子羊雲だったからさ

草原の丘を登れば
ぐるっと一周する
そのうちにここへ戻るだろ?

それと一緒

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東の窓

東の窓

小さな手がえんぴつを握りしめ絵を描くころ

兄が音読する新美南吉の話が終わる

冷蔵庫の隙間からサウザンアイランドの物語がすべりだし

騒々しい世界を飲み込んでゆく

食器を洗う音が消えるころ

物語は思いがけない方向へ

潜り込んだベッドの中から外を見れば

月が昇り東の空を魔女が横切る

物語が終わりを告げるころ

静まり返った家の中へ波の音が届く

規則正しい呼吸音

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