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まったくの素人が彫塑(ちょうそ)で藤井風フィギュアに挑戦する<第22回・完結編>

ついに完成

2021年の初めに、ふと思いつきで作りはじめた藤井風フィギュア。ついに完成しました。ずっと見守り続けてくださった方、長い間、応援ありがとうございました。

ここまで完遂できたのも、記事を読んでくださった皆さんの励まし合ってこそ。藤井風さんファンの方も、そうでない方も、初めてご覧になった方も、こんなマニアックな記事にお目通しくださり、ありがとうございます。

写真はこの記事に掲載した他にも、たくさん撮影しました。後日改めてupする予定です。またご覧いただければ幸いです。

わたしの作った藤井風フィギュアは、いわゆる一般的なフィギュアと異なります。まず第一には、彫塑用粘土をベースに、石膏取りをしています。

石膏型に和紙を敷き詰めて張り子を作ったのち、表面には布を貼り、頭髪も一本ずつ植毛しました。衣装を着せた人形として仕上げています。

藤井風さんご愛用のキーボード KORG  Grandstageマイクスタンド、ダンパーペダルも作っています。配信ライブや、ステージでもおなじみのこの機種。できるだけ忠実に再現してみました。(制作過程は記事下部に書いています)

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風さんの誕生した6月は、アジサイと夏椿(沙羅)が美しい季節。 せっかくなので自然光の当たる屋外で撮影してみました。


なぜ三次元の立体、しかも彫塑?


テクノロジーの発展とアートの普及は、互いに切っても切れない関係にあります。

最近は楽器が弾けなくても、楽譜が読めずとも音楽が楽しめるようになりました。デジタル機器を使うことで、誰でも手軽にバンド演奏を再現したり、ボカロなどで曲を作ることができるのです


フィジカルの技術と魅力


音楽に関しては、打ち込み(プログラミング)により、アーティストの演奏をデータ化し、自動演奏で再現することも可能になりました。

でも、どんなに忠実に再現しても息づかいや、ホールの鳴り(振動)、空気感、生演奏でのちょっとしたハプニングなどを共有することはできません。

そして生演奏をするミュージシャンには、やはり研ぎ澄まされた“フィジカル的な技術゛が必要です。

ピアノ1台あれば完結する藤井風さんの世界。弾き語り映像を見るたびに、やはり彼の演奏能力の高さにうならされるのです。


デジタルアートとは正反対の彫塑


絵画に関しても同じことがいえます。デジタルアートのフォーマットを使えば、誰でも手軽にイラストを描くことができるようになりました。

デッサンの練習を繰り返した経験がなく、画材を持っていなくてもフィルターひとつ、指先一本で世界が変わります。アプリを使えば、取り込んだ画像を数秒で前衛アートに仕上げることも可能で、一時はわたしもすっかりハマってしまいました。

しかし、色々楽しく遊んでいるうちに、デジタル機器で描ける二次元アートよりも、三次元の立体造形物には、よりフィジカルの魅力が感じられるのでは?そう考え始めたのです。



テクノロジーの恩恵にあずからない手はないけれど

三次元の立体造形物に関しては、デジタル機器においても、まだ完全には対応できません。(3Dプリンターにも、まだまだ限界があります)

彫塑は、とにかく自分の目で見て、手を動かして作るもの。地味で時間のかかる作業です。これは、なんだか楽器や歌唱法を習得するプロセスと似ているかも知れない…と感じました。


身体を使って覚えていく

とにかく手を動かす楽器の練習は、筋肉の使い方を習得するスポーツとも似ています。日々、繰り返すことで、必要なフォームを身体に覚え込ませていくのです。演奏できるよう肉体改造していくともいえます。(ヴァイオリンなどの弦楽器や声楽などは、特にそういう傾向が強い)

もちろん、それだけでは音楽的な表現にはなりませんが、そうやって身体で覚えたフォームやテクニックは、おそらく一生忘れないでしょう。


「作りたい、という気持ちがいちばん」

これは学生時代、美術を学んだ義母の言葉です。

藤井風フィギュアを習いに行っている間、義母とはたくさん話をしました。その中でも浪人時代を含め、画学生時代の想い出を色々聞かせてもらったのが印象的でした。

どれもわたしが生まれる前の話ですが、さすが元アート界の住人です。当時のカオスのような東京で、個性あふれる友人たちと巻き起こす破天荒なエピソードは、映画になりそうなくらい面白かったです。


わたしにとって、美術はいつでも近いところにありましたが、専門的に学んだ経験がありません。ですが、売っていない、誰も作っていないのなら、自分で作ってみたい…

何より義母の言う「作りたい、という気持ち」です。本格的な彫塑で立体造形に取り組みたい。デジタルでは難しいフィジカルの魅力を、自分の手で体現したい。わたしが美しいと感じる藤井風さんの姿は、わたしにしか作れない。

いちばん大切なモチベーションは、全力でスタンバイしていました。

(何事も「動機は愛がいい」ですね)


藤井風フィギュアに至るきっかけを書いた第1回の記事はこちら


前置きが長くなりましたが、ここでフィギュア制作の話に戻ります。まずは指の仕上げと、手を置く位置を調整するために、キーボードの制作から。

キーボードがないと、はじまらない

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藤井風フィギュアが立っている時の身長は50センチほど。風さんの全身写真から頭身を測り、7.5頭身で作りました。イメージは渋公ライブの時の風さんです。

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衣装はこの雰囲気で

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作っている間に風さんの髪形もどんどんアップデート。最終的には「きらり」MVで見られるヘアスタイルに近付きました。


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我が家の庭で単独フェスです。梅雨の中休みにワンマンライブ中(笑)


風フィギュアの最終工程、指の仕上げ

さて、風フィギュアの手をアップで見ると、何だか違和感がありました。爪がないのです。どうしたものかと考えていましたが、クリアファイルを爪の形に切って貼ってみることにしました。

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クリアファイルをつまようじの先端部分と、ほぼ同じ大きさにカット

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指先に木工用接着剤で貼り付けました

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結局、指の形に添った丸みが出ず思った通りになりません。いったん剝がすことになりました。でも、やはり爪がないと人の指先感が感じられず。いちかばちかで、ベージュ色のマニキュアを塗ってみることに。

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近くで見ないとわかりませんが、ベージュ色の爪にしたことで、なんとなく血色の良い指になりました。


キーボードを風さんご愛用のKORG Grandstageに


次はキーボード。KORG Grandstageのパネルと周辺小道具の制作です。

実はこのGrandstageには、並々ならぬ思い入れがあるわたし。昨年末も、公式グッズ販売に沸き立つファンの方々の間で、こんなtweetをしていました。


あのアナログシンセを彷彿とさせるツマミと、赤く点灯するライトは欠かせないアイテムです。

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子どもたちが遊んでいるアイロンビーズに絶縁用テープ(黒)を貼り付けてツマミに。赤いライトはグラスビーズを使いました。

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木工用接着剤を塗り、ひとつずつピンセットで配置

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KORG Grandstageのロゴを切り抜いて貼るのには苦労しました。上面と背面の2か所にあります。

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フォント1つが3ミリほどの大きさです。

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ロゴ以外の部分は、白の色鉛筆で手描きしています

マイクは百円ショップで購入した黒い樹脂粘土とストロー、つまようじに絶縁用テープ(黒)を巻き付けました。画像14


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マイクケーブルには極細のヘアゴムを使いました。適度な伸縮性とツヤのある絶縁用テープ(黒)が大活躍です。


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マイクスタンドは、家にあった黒いワイヤーハンガーを切断。ペンチで成形したのち、絶縁用テープでキーボードスタンドに固定しています。

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「足がつる~」で注目を集めたダンパーペダルもご用意。地べたに座ろうが、寝そべろうが、どんな姿勢でも華麗なペダリングを見せてくれる風さんのマストアイテムです。


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渋公ライブでの KORG Grandstage に見えるでしょうか


すっかり忘れそうになりましたが、キーボードスタンドは百円ショップのアイアン壁受けを2本、L字型金具にナットで取り付けました。キーボードを乗せる上部には、背面パネルと同じボードをテープで固定。

さらに、L字型金具をナットでボードに固定しました。土台には、なんと2穴パンチ(重みがあって頑丈、高さがちょうど合った)をテープでぐるぐる巻きにして安定させています。

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「もうええわ~♪」熱唱中

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リスおった!

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「旅路」報ステ出演時のアングル

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斜め後ろから見るとこんな感じ

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生え際、どうでしょう

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マイクがちょっと遠いんじゃ

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2階席まで、ちゃんと見えとるで

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階段室の踊り場ステージじゃけどな

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踊り場、案外リバーブ効いてるな(笑)

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トイピアノでも、ええ音するやん

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ちゃんと風呂栓ネックレスもしとるで

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このアングル、肩の感じが結構、似てる?

作っているうちに気付いたこと

菩薩のような横顔

目を閉じた藤井風さんの横顔はとても美しいです。

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慈愛に満ちていて

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まるで菩薩のよう。

そう思っていました。

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ふと思い出したのが

国宝『弥勒菩薩』の右手の指を折る 京都広隆寺 学生いたずら


です。京大生が弥勒菩薩の美しさに見惚れるあまり、仏像に頬を寄せようとして指を折ってしまったという事件。

スクリーンショット (500)


この事件は仏像の美しさに魅惑されたあまり、恋慕が募った結果の行為だとか、単なる出来心からのいたずらだとか諸説ある。ただ、いずれにしても弥勒菩薩の魅惑的な表情と姿に、惹き付けられ虜(とりこ)になったものは少なくないだろう。突き詰められた美と徳を体現するこの仏像は、時に飲み込まれそうな怪しいまでの光を放っている。


藤井風さんも時折、この弥勒菩薩のようなあたたかい光を放っています。かと思えば、時として怪しい光を放つ瞬間もある。不思議な人です。

そして

鍵盤を自由自在に操るしなやかな手指の美しいこと

弥勒菩薩の指を折ってしまった学生の気持ちが、わかるような、わからないような…

そんな美しい指の動きにも魅了されました。


誕生日を1つの節目として

仕事と家事の合間をぬって、半年間作り続けてきた藤井風フィギュア。明日、6/14の風さんのお誕生日に間に合いました。3年前の20歳最後の日、21歳の誕生日の前日に、風さんはこんな歌をYouTube動画にupしていました。

20歳の最後の日にアップされたエイミー・ワインハウスの「Rehab」

天使のように歌いかけるわけでも、悟りを促すわけでもない。挑戦的な表情で「見てらっしゃい」と毒づく「藤井風」だ。

こちらの記事より抜粋

3年前、エイミー・ワインハウスの「Rehab」をupした風さん。

感染症の影響で、世界情勢も刻々と変化します。音楽業界も本当に厳しい状況ですが、風さんは今年のバースデー前日を、どのような気持ちで過ごしていたのでしょうね。

実はこの動画がupされた6/13は、わたしの誕生日です。「自分がひとつ年を取る前に、藤井風フィギュアを完成させる」という目標は達成できました。


一日早いですが、藤井風さん、お誕生日おめでとうございます。これからも全世界の人の心をとらえて離さない素敵な音楽を聴かせてください。24歳も、ますますのご活躍を願っています。

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♪ Happy birthday to you ♪


2021年1月~6月まで、定期的に”藤井風フィギュア”が完成するまで、全22回の記録を綴ったマガジンはこちら。

藤井風さんのこと、いろいろ書いてます。

画像引用:藤井風公式YouTube


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